低予算ながらひと捻りあるホラー映画でヒットを連発しているブラムハウス・プロダクションズ。女子高生と殺人犯が入れ替わるという設定がフレッシュな最新作『ザ・スイッチ』が公開中のいま、改めてユニークなアイデアが光る作品たちを紹介していきたい。

【写真を見る】“入れ替わり”を描く『ザ・スイッチ』など、ブラムハウスのアイデアが光る作品をピックアップ!

モキュメンタリー形式で身近な恐怖を描く『パラノーマル・アクティビティ』

ブラムハウス・プロダクションズは、プロデューサーのジェイソン・ブラムが2000年に立ち上げた映画やテレビドラマの制作会社。ホラーを中心にスリラーやSFなど、いわゆるジャンル映画を量産しつつ、同時に『セッション』(14)、『ブラック・クランズマン』(18)といったアカデミー賞に絡むような話題作も手がけてきた。

そんなこの会社の名を大きく知らしめることになったのが、2007年の『パラノーマル・アクティビティ』。タイトルは“超常現象”を意味しており、自宅で謎の現象に悩まされるカップルが、その正体を確かめるべく、自分たちでカメラを回してみたところ、そこに映っていたのは…という物語が展開していく。

本作は、フィクションをドキュメンタリー風に撮影するモキュメンタリーの一種で、撮影者が行方不明などになったため埋もれていた映像がのちに発見される、“ファウンド・フッテージ”ものとして作られている。このアイデア自体は、『食人族』(80)や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)などでたびたび使用されているが、本作は寝ている間の部屋にカメラを回すという、誰もが一度は考えたことがあるであろうことを映像化した点がユニーク。観客が自らにも置き換えられるような身近な状況での恐怖であるからこそ、シリーズ化するほどの人気を博したと言える。

■タイムループ×スラッシャー=『ハッピー・デス・デイ

前述の「パラノーマル・アクティビティ」シリーズに脚本や監督として携わり、公開中の『ザ・スイッチ』でも監督を務めているクリストファーランドンが、タイムループを題材に作り上げたのが『ハッピー・デス・デイ(17)だ。

主人公の女子大生ツリーは、誕生日に不気味な赤ん坊のお面を被った何者かに殺されてしまうが、なぜか再び誕生日の朝に目を覚まし、自分が殺される誕生日を繰り返すことになる、という地獄のループを描くホラー。何度も何度も殺されながら犯人を絞り込んでいくも、刺殺されたり、車にひかれたり、溺死させられたり…と様々な殺され方をしてしまうツリー。タイムループの設定を活かした見せ場が満載となっている。

そして一番の魅力は、自他ともに認める嫌な女だった主人公が、何度も同じ日をやり直していくうちに自らの在り方を省みて成長していくという、人間ドラマがしっかりと描かれている点。真犯人を見つけようと失敗を繰り返しながら真実に迫っていくスリリングな展開と、主人公の成長を組み合わせるというセンスの良さと確かな手腕が光る快作だ。

■タイムリループにパラレルワールドも上乗せ!『ハッピー・デス・デイ 2U』

続編の『ハッピー・デス・デイ 2U』(19)には、タイムループに加えてパラレルワールドという新たなアイデアが追加されている。タイムループから抜け出したツリーだったが、彼氏であるカータールームメイトライアンループに囚われ、謎の殺人鬼に命をねらわれていることが判明。解決策を探すなか、ひょんなことからツリー自らも再び誕生日のループへと飛ばされてしまうが、そこは以前とは少し異なる世界だった。

前作とはまた違う展開が生みだすフレッシュな恐怖に加え、今回も人間ドラマがしっかりと盛り込まれている。というのも、パラレルワールドでは死んだはずの母が生きている一方で、カーターはほかの女性と付き合っており、母がいない元の世界に戻るのか?カーターと結ばれていないいまの世界を生きるのか?ツリーは究極の選択を強いられることになるのだ。

続編を作る意味をしっかり付け加えている本シリーズ、3作目も製作の意向があることをジェイソン・ブラムは語っており、仮題は『Happy Death Day To Us』とのこと。どのような物語となるのか期待せざるを得ない。

女子高生殺人鬼が入れ替わる!『ザ・スイッチ』

そして公開中の『ザ・スイッチ』は、“入れ替わり”をホラーに持ち込んだ一作。入れ替わりといえば、『転校生』(82)や『君の名は。』(16)など数々の映画で扱われており、男女や親子、時には人間と猫など、ユニークな題材が描かれてきたが、本作では連続殺人鬼女子高生が入れ替わることになる。

内気な女子高生のミリーは、家では夫と死別した悲しみからアルコールに溺れる母と警察官の姉の板挟みに遭い、学校ではいじめのターゲットにされる憂鬱な日々を過ごしていた。そんなある日、アメフトの応援後に無人のグランドで連続殺人鬼ブッチャーと出くわし、短剣で刺されると、なぜか殺人鬼と体が入れ替わってしまう。ブッチャーの体となったミリーは、24時間というタイムリミットの中で、自らの体を取り戻そうと奮闘していく。

中身が女子高生になっているブッチャーのいちいちかわいらしい仕草が笑えたり、逆に中身が殺人鬼になっているミリーにいじめっ子が容赦なく殺されていったりと、設定を活かした描写が満載。また、さすがはブラムハウスといえる、入れ替わりのアイデアが活かした一歩踏み込んだ人間ドラマが今作でも描かれている。

たとえば、これまで家族とうまく向き合うことができなかったミリーが、見た目が入れ替わったからこそ中身をさらけ出せるようになったり、「見た目ではなく中身が重要」というメッセージが込められていたりするのだ。もちろんホラー/コメディとしても最高だが、その根底には真摯なテーマがしっかりとあり、バカなふりをした、めちゃめちゃちゃんとした映画なのだ。

アイデア先行の出オチ的な作品になりかねないところに、しっかりとしたドラマを込め、強度のある作品に仕上げているブラムハウス・プロダクションズ。低予算だからと言って決して侮れない良作の数々を、ぜひチェックしてみてほしい!

文/サンクレイオ翼

ユニークなアイデアを落とし込んだブラムハウスの良作ホラーをチェック!(『ザ・スイッチ』)/[c] 2020 UNIVERSAL STUDIOS