3度目の緊急事態宣言の延長と計6都府県への拡大が5月7日に決まり、外出自粛の呼び掛けが続く中、「コロナ太り」という言葉も定着しました。「太っている」とされる指標の一つに体脂肪率があり、脂肪は嫌われがちな存在ですが、減らし過ぎるのも問題があると思います。近年の「筋肉ブーム」で体脂肪率の低さを自慢する人もいますが、かえって、体に悪影響が出る恐れはないのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

免疫力低下や冷え性の原因に

Q.そもそも、脂肪はなぜ、体にとって必要なのでしょうか。

市原さん「脂肪は体温の保持やエネルギーの貯蔵という役割を持っています。また、ホルモンや(細胞間の情報伝達を担う)サイトカインなどの物質の分泌を担ったり、内臓を安全に保持したり、体への衝撃を緩和したりするなど、さまざまな役割があります」

Q.適正とされる脂肪の量(率)について教えてください。

市原さん「人間の体の脂肪には、おなかや腰などの皮膚の下についている『皮下脂肪』と、胃や腸など臓器の周りについている『内臓脂肪』とがあります。皮下脂肪と内臓脂肪を合わせた総称が『体脂肪』です。

体重に対する脂肪(体脂肪)の割合を『体脂肪率』といい、適正な体脂肪率は一般に、男性10~19%、女性20~29%とされています。体脂肪率は家庭用の体重体組成計でも知ることができます。体重体組成計は体脂肪率の測定など、さまざまな機能を持つ体重計です。

内臓脂肪の割合(内臓脂肪率)は体重体組成計で測れる場合もありますが、あくまで推計値であって、正確な数字ではありません。正確な内臓脂肪率や内臓脂肪のレベルは、腹部のCT(コンピューター断層撮影)検査によって計算されます。へそ周りのおなかの断面を撮影して、その画像から内臓脂肪の面積が100平方センチ以上と判断された場合、『内臓脂肪型肥満』と診断されます」

Q.体脂肪が最低限の量(率)を下回ると、体にどのような影響があり得るのでしょうか。

市原さん「先述した適正とされる体脂肪率の下限を下回った場合、つまり、男性で10%未満、女性で20%未満になると体温が下がって、免疫力が低下することが考えられます。特に女性で体脂肪が少ないと、生理不順や冷え症などが引き起こされる可能性があります」

Q.筋肉自慢の人で「体脂肪率が1桁」という人がいます。体に悪影響はないのでしょうか。

市原さん「筋肉質で体脂肪が少ない人の場合、仮に体脂肪率が1桁でも、筋肉の影響によって体温が維持されるので、先述したように体温が下がって免疫力が低下することは起きないと思います。

ただし、ボディービルダーのように厳しい筋トレを常にしていると心臓に負担がかかり、心肥大(心臓が大きくなって、心臓の筋肉が伸びている状態)を引き起こし、息切れや疲れやすさなどの症状が出て、さらに心不全を引き起こす可能性が出てきます。体脂肪率を維持するために、激しい筋トレと共にプロテインを摂取することが多いと思いますが、タンパク質を過剰に摂取すると腎臓に負担がかかります。

また、一時的な減量を繰り返すことで、脂肪肝になりやすくなってしまいます」

Q.適正な体脂肪率、内臓脂肪の量(率)を保ちつつ、ダイエットをする際に注意すべきことを教えてください。

市原さん「何事もやり過ぎは禁物です。ボディービルダーやアスリートでない限り、バランスのよい食事を適正な量、摂取することを心掛けましょう。そして、定期的に運動をしていれば、適正な体脂肪率や内臓脂肪率から大きく外れることは少ないと思います」

オトナンサー編集部

脂肪が少な過ぎると問題は?