地域にもよるだろうが、日本では制服は小学校から中学、高校と、学校生活とは切っても切り離せない存在だろう。中学入試や高校入試で学校を決める場合、特に女子にとっては「制服」が学校選びの決め手の一つになるとも言われている。

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 ここ韓国でも、10代の学生たちにとって制服は必需品だ。多彩なデザインに加えて若年層にウケそうなスタイルのものも多く、ファッションアイテムとしての注目度も高い。韓国の制服をファッションとして注目している韓国好き女子も少なくないと聞く。

 確かに近年の韓国の中高生の制服やコーディネートには関心させられる点もあるが、反面、制服をめぐる様々な事情や論争がある上に、親世代から見て疑問に思うことも多い。韓国の制服事情はどのようなものであろうか。

2000年代から変貌した韓国制服事情

 1990年代まで、韓国では女子、男子ともに紺や黒系統の色合いのブレザーに白ブラウス、スカートズボンといったシンプルで典型的な制服が一般的だった。それが、2000年代に入るとデザインスタイルの多様化が始まった。韓国で言う「制服革新の時代」である。

 現在では、観光客向けに制服を着て写真が撮れる写真館がある。日本でも東京・新大久保に韓国風の制服のレンタル店があったり、韓国の制服が買える通販サイトもあったりするというから驚きである。

 しかし、韓国で制服が大幅にイメージチェンジした背景には、1990年代後半から2000年代初めにかけて、日本のファッションなどが若年層の間で大きな関心を集めていたという側面があり、初期のデザインは日本の制服に似た感じのものが多かった。

 実際、1990年代当時、韓国の女子中高生が「non-no(ノンノ)」などの日本のファッション雑誌に憧れ、それをファッションやヘアメイクの手本にしていたという話を現在40代の人たちから聞いたことがある(90年代当時、大型書店などでは外国書籍として日本の雑誌や書籍を取り扱っていた)。

 それが、現在では学校制服が「韓国のファッション」として確立している。その火付け役であり、後押ししたのは韓流ドラマやKPOPである。

ファッションとして定着した背景に「制服のブランド化」

 日本の人気ドラマ花より男子」は韓国では2009年リメイクされ、視聴率35%というヒットとなった。この時に使われたのは、韓国の有名デザイナー、故アンドレ・キム氏のデザインによる制服だ。出演者たちは制服を見事に着こなしドラマに華を添えた。

 また、KPOPでは男女ともにアイドルグループが次々と台頭した。彼らのステージ衣装は制服をアレンジしたかのようなデザインのものが多く、「KPOPアイドル=制服」というイメージの結びつきも定着した。

 学生にとっては「ファッション性」が高い制服だけでなく、カバンや靴、冬のコートなども制服を引き立たせる必須アイテムである。カバンや靴は海外のスポーツブランドのものが多く、冬のコートは厳しい寒さをしっかりとしのげるようロング丈の「ペディンコート」と呼ばれるダウンコートが定番である。

 特に2018年平昌冬季オリンピックの際に、あるペディンコートのオリンピック限定モデルが発売されると、100万ウォン(日本円で約9万7000円)という値段ながら中高生に飛ぶように売れたという。

 また、2019年の「No Japan」による日本製品不買品運動で日本製の商品は逆風にさらされたが、その中でもユニクロは機能性や手頃な価格もあり、根強い人気を誇った。

 このように、ファッションの流行は若者たちが作るというのは世界共通だが、韓国の学生はとりわけファッションへの関心が高く、お金をかけているという印象が強い。

 ファッションとして制服が定着し、制服に対する注目度が高まった裏には、「制服のブランド化」が挙げられる。日本の学校制服の場合は指定業者が決まっていて、団体で採寸が行われ納品されるという形だが、韓国の学校制服の場合は学校指定の制服を販売している「制服ブランド」店で各自購入する形だ。

 現在、韓国の制服ブランドとしては「Smart(スマート)」や「IVYclub(アイビークラブ)」「SCOOLOOKS(スクールックス)」「eliteエリート)」が有名である。これらの制服ブランドは、多くが今をときめアイドルを専属モデルとして起用しており、価格や売上競争に拍車をかけている。

新入生に「制服支援金」を出す自治体も

 例えば、Smart2020年まで、2年連続で韓国アイドルグループBTSモデルを務めたことでも大きな話題を呼んだ。同様に、IVYclubWanna OneVIXX、eliteSEVENTEENなどのアイドルグループを採用した。

 こういったマーケティングに加え、各ブランドともに制服の形状や裏地のデザイン、生地の厚さといったところで差別化を図っている。

 そして、気になるお値段であるが、やはり高い。ブランドごとに若干の差はあるものの1着約30~40万ウォン(日本円で約2万9000~3万8000円)が相場となっている。追加でシャツやズボンスカートなどを購入すればさらに支出は増える。

 今でこそ服のリサイクルも広まりつつある韓国であるが、新しさにこだわる国民性もあり、制服は中古よりも新調するのが一般的だ。その時も、ブランドのものを選択する学生が多い。

 もちろん、経済的な事情がある家庭ある上に、決して安価とは言えない価格を点を考慮して、中学、高校の新入生に対して「入学支援金」や「制服支援金」といった名目で制服の購入を補助する自治体も多い。

 人気アイドルたちをモデルに起用する制服ブランドの戦略や競争激化には、韓国をむしばむ少子化の影響もあるものと見られる。

 もっとも、日本的な感覚や親世代の視点で見ると、韓国の制服はファッション性を前面に出し過ぎており、機能性や合理性があるとは言えない。

 全般的に制服のデザインおしゃれで目を引くものが多いことは確かである。それゆえにタイトな作りのものが多く、体のラインが強調されやすい。しかも、ブラウスの丈は短めであり、スカートについても同様である(学校によっては最近のジェンダー問題を考慮し、女子でもスカートズボンを選べる学校もある)。

 当然のことながら学生たちからは制服に関して不満の声が上がることも多く、特に女子からは「体型が強調されてしまうという」点や「フィット感が悪く動きにくい」「コルセットのようだ」といった不満が少なくない。大統領府のホームページに「制服を改善していくべきだ」という意見が投稿される一方、ソウル市や地方の教育庁が制服について是正しようとするなど、現状を変える動きも出ている。

 このような声を反映して学校によっては、最近では、制服は「正装」という位置づけで、普段は体操着であるジャージの着用や「生活着」と呼ばれるサブ的な制服を取り入れている場合もある。

おしゃれな制服を着たところでオンライン授業では

 いかにも「見た目重視」という点は韓国らしいが、特に10代の思春期、成長期は男女ともに、自分の容姿や体型、他人の視線などがあれこれ気になるもので、精神的にも一番ナイーブな時期だ。しかも、生活の多くの時間を制服を着用して過ごす彼らにとって、ファッション性こそ高いものの、着心地が悪い窮屈な制服を着用するというのは何とも本末転倒ではないか。

 制服の見た目やかわいらしさ、かっこうよさに囚われており制服の機能性や実用性が欠けている点、また昨年からのコロナ禍によるオンライン授業の進行や学校行事の縮小によって制服を着用する機会が大幅に減っていることを考えると、さしもの韓国でも約20年間続いてきた制服革新の時代も終焉を迎えるという見方もある。学生にとっても、機能性を重視した快適な制服が定着することを願うところだ。

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