ファミリーマートは、スマホアプリFamiPay」を活用し、2021年夏以降に消費者金融事業への参入を発表。

 電子マネーの残高不足時に後払いができる「FamiPay翌月払い」や、現金の借入ができる「FamiPayローン」を始める計画だという。

ファミマ
©︎Tupungato
 2021年2月初旬の報道直後、ネット上では「消費者金融」に対する嫌悪感が先に立つのか、「イメージが悪い」といった反応も多かったようだ。

 そこで今回は、30年以上にわたって自身で消費者金融を経営し、現在は自身の運営するサイト「借入のすべて」やSNSなどで幅広いマネー知識を発信するお金の専門家・小林修(@kobayashi30nen)に、ファミマが消費者金融業に参入する背景などを聞いた。

コンビニ大手の金融サービスを比較

 コンビニではセブンイレブン2001年ローソン2018年に銀行業に参入している。最大手のセブンイレブンセブン銀行と連携し、カードローンを発行。セブン銀行アプリなどから、最短2日でキャッシングが可能だ。

セブンイレブン金利は最大年15%と、銀行カードローンとしては比較的高い部類です。借りられる金額は10万、30万、50万円まで。金利が年14%と安くなる70万、100万円のコースもあります。なんといっても大きなメリットは、審査に通ればアプリでお金をすぐ借りられる点。月々の返済は毎月27日のセブン銀行口座払いのほか、お金に余裕がある時にいつでも返済できる随時返済も利用できます。手数料も『セブン銀行 ATM』ならゼロ円で経済的です」(小林修氏、以下同)

 一方、ローソンも「ローソンPontaプラス」の名称でキャッシングサービスを行っている。

「実質的に三菱UFJニコスが運営するキャッシングサービスですが、最大金利は年17.95%とほぼ大手消費者金融並みローソン Ponta プラスはキャッシングカードローンに区分けしており、キャッシングサービスクレカと同じように翌月一括払いが基本。カードローンとは返済方法が異なります」

新生銀行との協業サービスに

FamiPay
画像は公式サイトより
 そんななか、ファミマは、2019年に自社の決済アプリFamiPay」を導入。もともとファミマTカードでのキャッシング機能はあったが、今回のサービス子会社の「デジタルワン」が消費者金融業に打って出るかたちだ。消費者金融業への進出は、これがコンビニ業界初となる

「公式のアナウンスがなく、これも仮の名前だと思いますが(2021年5月6日現在)“FamiPayローン”は通常の消費者金融と同じように申し込みや審査を経て、限度額10万円の少額融資借入ができるサービスFamiPay翌月払いは、電子マネーFamiPayに紐付けされた口座残高が足りないときなどに自動で融資が行われ、翌月一括払いするサービスになるようです」

 もっとも、セブンイレブンなどのような自前の銀行機能を持たないファミリーマートは、独自で与信審査ができない。そこで「FamiPayローン」の後払いとローンに関する協業開始のリリースを出したのが、新生銀行グループセカンドサイトだ。

利用客として気がかりな点は…

「信用情報や個人のリスクの審査は、同じく新生銀行グループの『アプラス』や先述の『デジタルワン』あたりが既存のデータを基に、スコア化していくことになるのかなと思います。

 信用情報データがどちらから提供されるのか、まだはっきりしていませんが、審査は1社で行われるのが理想。なぜなら複数の会社間で個人情報をやり取りされるのは良いことではないですから

 もちろん、そんなことはないとは思いますが、審査に通った/落ちたといった個人情報ファミマの店舗などに流出するような可能性がないか、やはり利用客には気がかりな点だと思います」

 基本的に申し込み条件は普通の消費者金融と同様で、アルバイトも含む継続・安定した収入がある20歳以上69歳以下になると予想される。小売りサービスにとって消費者金融業は「景気に左右されない点でも魅力的なビジネスだ」と小林氏は語った。

「好景気なら遊ぶお金、不景気なら生活のお金という感じで、消費者金融は景気がどっちにブレても比較的に安泰です。システムだけつくって年18%のリターン、分割払いなら固定客のお得意さんみたいな状態ですからね

「FamiPayローン」は“絶妙な設計”

金欠 若者
画像はイメージです
「今の市場規模は4兆円ほどで、絶頂期と比べると小さくなった。とはいえ、1980年くらいからバブルに乗っかり、2000年くらいまでの20年間は20兆円産業でした。本質的には消費者金融と同じですが、これからも各社は新しいお金の貸し方をいろいろ画策しているのでしょう」

 急にお金が必要な場合も、サラ金のイメージのある消費者金融を避けたい気持ちが、利用者にはあるだろう。他方で、クレジットカードの審査が通らない若者も近年は決して少なくない。

 過去の市場規模や潜在的なニーズを踏まえると、異分野の企業などが新たな貸付サービスを若者向けに展開する動きも当然なのかもしれない

「若年層では携帯端末代の返済が口座から引き落とせず、返済履歴に傷がついている人も多い。形式的な面もありますが、現行の法律では20歳未満の学生などがクレカを持つには親権者の同意が必要ですし、仕事をしていなければショッピング枠の限度額も5万円程度。

 その意味でも『FamiPayローン』の限度額10万円は非常にいいところをついてきた印象です。大手消費者金融の一般的な限度額が30万~50万円のなかで、限度額10万円は安心感ありますし、若者を意識した敷居の低い設計です

ファミマが大きく潤うことは考えにくいが…

 2018年サークルKサンクスとのブランド統合で、僅差でローソンを抜き、コンビニ業界第2位の地位についたファミマ。今回のファミマの消費者金融業への進出の狙いに関しては、ファミマの顧客の囲い込みや収益力の向上も指摘されている。

融資額10万円の利息だけでファミマが大きく潤うことは考えにくいですコンビニの買い物でそんな大金は使わないし、コンビニFamiPayの残高が足りなくなるとしても、せいぜい数千円程度ですから。仮に1万円を『FamiPayローン』で借りても、利息は30日間でたった147円くらいです

 ただ、FamiPayアプリでのポイント還元などと絡め、「FamiPay翌月払い」を促進できれば当然、商品の購入によって店舗の売り上げに直接貢献することになる。

「仮にポイント還元キャンペーンなどがあれば、『とりあえず申し込もう』という若者は少なくないはず。自動融資だとオートチャージみたいな感じで、ほぼ借りている感覚もないと思います」

自己破産ラッシュの危惧は?

 そんなハードルの低さへの懸念はあるものの、返済能力をチェックされることもあり、限度額10万円の「FamiPayローン」だけで自己破産ラッシュが起きることはない、というのが小林氏の見解だ

「例えば友達に1万円借りて、お礼に1000円くらいのご飯をプラスでおごるとすると、実は120%くらいの金利計算になる。それなら大手消費者金融で1万円借りて、147円の利息を払うほうが本当はずっと安上がりです。

 むしろ、私が気がかりなのはバンドルカードなどの無審査の後払いサービスや、信用情報の審査がゆるい『LINE Pay』の個人向けローンサービスなどが増えていること。こうしたサービスを併用した結果、自己破産とならないまでも、借金苦に陥る人は確かに増えるかもしれません

 ますます便利で、身近な存在になるカードローン。だが、くれぐれも“ご利用は計画的に”だと忘れてはいけない。

<取材・文/伊藤綾>

小林修
お金の専門家。30年以上にわたって消費者金融を営む。日本最大級の借入専門サイト「借入のすべて」の運営、SNSなどで幅広いマネー知識を発信。
Twitter:@kobayashi30nen

【伊藤綾】

1988年生まれ道東出身。いろんな識者にお話を伺ったり、イベントにお邪魔するのが好き。SPA!やサイゾー、マイナビニュース、キャリコネニュースなどで執筆中。毎月1日に映画館で映画を観る会“一日会”(@tsuitachiii)主催

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