緊急事態宣言を避けて奈良へ行く人々

 東京、大阪など4都府県で発令された緊急事態宣言下で2度目のゴールデンウィーク。酒類を提供する飲食店は休業が要請され、それ以外は午後8時までの時短営業となった。

 そんな中、「県外からの客が増加して困惑しています……」と語るのは大阪に隣接する奈良県の住民だ。

 奈良県では先月27日~5月11日の間、県独自の「緊急対処措置」として飲食店などに午後8時までの時短営業を要請した。関西では大阪、兵庫、京都が緊急事態宣言に入り奈良県への観光客の増加が不安視されていたがGW中はどうだったのだろうか。奈良市内で話を聞いてみた。

◆ゴミをポイ捨てする観光客。鹿が食べてしまうからやめてほしい……

「観光客の増加を不安視して飲食店などの時短営業を決めましたが、観光客はあまり見かけませんでした。私達としては連休中に奈良が盛り上がるかなと期待を抱いていた一方で、感染リスクが減るという安堵感もあったので何とも言えない気持ちです。GW中は周辺の土産屋も週末だけ営業にしていて平日は閉めていた店がほとんどです。

 飲食店が時短するのに土産屋が開けてたら意味がないとも思うのですが、少し寂しい印象ですね。でも、大阪や京都ではテレビカメラが入るからなのか奈良公園周辺や電車内でお酒を飲みながら歩く観光客を多く見かけました。ゴミをちゃんと捨ててくれるのなら問題ないのですが、その辺に放置している人もいて。鹿が落ちてあるゴミを食べてしまうのでやめてほしいと思いますね」

 そう語るのは奈良公園周辺の土産屋に勤める男性。観光客はあまり見かけないというが、県外からの客の増加で困惑しているとはどういうことなのだろうか。少し取材を続けてみると、奈良駅周辺の居酒屋の店員がその真意を教えてくれた。

◆観光スポットの人出は少ないが居酒屋には……

 話を聞いたのは奈良駅近くの居酒屋の店員。聞けばこの店員も大阪からの越境組だという。

奈良公園など観光地に来る客はほとんどいませんが、うちみたいな居酒屋に県外からのお客さんが多く来ていました。うちは今、正午から午後8時までの営業なのですが、みんな昼から飲みに来ているんですよね。私は奈良に住んでいて普段は大阪の居酒屋で働いているんですが、緊急事態宣言で休業になってしまったんです。

 ここのオーナーにGW中だけ奈良に手伝いに来ないかと誘われて働いている立場なので、お客さんが来てくれることに不満は言えないのですが……。でも、大阪や京都から観光もしないで飲みに来たというお客さんを見ると複雑な気持ちになりますね。奈良駅周辺では県外からの客が怖いからといってGWの間は休業しているという飲食店もありましたね」

◆閉める店が多いのは奈良の県民性?

 一方で、「閉める店が多いのは奈良の県民性かも」と語るのは、奈良駅周辺のバーに勤めるスタッフだ。

「大阪で飲食店を経営している知り合いに聞くと、『大阪では他の店が休業するのなら自分の店は開けたい』という人が多いと言うんですよ。でも、奈良は元々夜が早く、普段でも奈良駅周辺の飲食店は深夜0時には閉まるんですよね。

 奈良では深夜まで飲むのであれば家から徒歩圏内の近所で飲むっていう人が多いので駅前までわざわざ出てくる人がいないんです。それに、他の店が閉めている中、1軒だけ営業していたら近隣の目も気になってしまう。

 深夜まで営業して、酔っ払いが店前でたむろしたりしたら苦情が来ることにもなりかねないですからね。今回の時短はあくまでも『お願い』という形だし罰金もないので別に守らなくても良いのでは、と思われるかもしれません。保守的な奈良の県民性が出た結果なのかもしれませんね」

◆泊まりがけの客は増えたが……

 奈良県では元々、日帰りの観光客が多く、それが観光事業者にとって悩みだったという。だが、他の関西圏に緊急事態宣言が出された今では宿泊してでも飲みに来る客が増加しており、現地で働く飲食店店員からは複雑な声が上がっていた。

 また、奈良の荒井正吾知事はGW前に県外からの観光客に対して「来ないで」ではなく「むやみに大阪に行かないで」と呼びかけていた。観光客に戻ってきてほしいが感染者は増やしたくないという複雑な思いが交差した発言だったのだろう。

〈取材・文/日刊SPA!編集部〉

GW中の奈良公園。そこまで人出は多くなかったようだが……