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メルセデス・ベンツのFRエントリーモデル

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

Cクラスの前身となる190シリーズが登場した当時はセカンドカーなどのパーソナルユース向けとも評されたが、ベンツ車のエントリーモデルとしてのポジションを確立し、Cクラスへバトンタッチした。

【画像】プレミアムセダンの本質【Cクラスと最上級Sクラスを比べる】 全122枚

初代Cクラスのモデルライフ途中からA/Bクラスが登場し、両モデルの拡充と車体サイズの拡大により現行Cクラスは全ベンツ車ラインナップの中堅モデルとなった。

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メルセデス・ベンツC 200ローレウスエディション    神村 聖

しかし、FRモデルに限定すれば相変わらずCクラスがエントリーモデルである。

車体寸法を現行モデルでAクラスセダンと比較すると全長が150mm以上、ホイールベースが110mmもCクラスが大きい。車格設定どおりの車体寸法だが、その差の多くはプロポーションが違いである。

フロントピラーと前車軸の位置関係を見れば一目瞭然だが、Aクラス比で長い全長もホイールベースもキャビン長の拡大には寄与していない。

キャビンスペースによる要不要論ならCクラスはなくていい、と言っては流石に暴論だが、広さを基準にした車格設定からはみ出た存在である。

無論、車格感を演出するためにロングノーズになっているわけでもない。

スペース効率でFFに劣るものの、FRの採用はプレミアムセダンとしてのCクラスの魅力に大きく影響。

わざわざFRベンツ車のエントリーと表する理由でもある。

穏やかで安定感あるドライブフィール

個人的には3代目のビッグマイナーチェンジがCクラスの大きな転換点と考えている。

E/Sクラスもカジュアル&スポーティ色を濃くした時期もあったが、3代目Cクラスが登場する以前にプレミアムセダンの王道へと舵を切り直していた。

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メルセデス・ベンツC 200ローレウスエディション    神村 聖

前記マイナーチェンジではE/Sと同じ根を持つコンパクトセダンという試乗印象を得た。乗り味が変わっていたのだ。

現行Cクラスの印象も同様。FRならではの重質な乗り味が車格感と寛ぎを高めていた。

例えば、サスのストローク感だ。

加速時に僅かに後輪が沈み込むが、伸び戻りはほとんど感じない。一般走行時のストローク量そのものは決して大きくない。加速時のスクォートも減速時のノーズダイブ、旋回時のロールも変位量は同クラス他車と比較しても少ないくらい。

姿勢をフラットに保つ能力の高いシャシーである。その中に往なしと据わりがしっかりと編み込まれている。心地よい沈み込みは往なしの妙味であり、伸び戻りの揺れ返しを意識しない据わりが下支えをする。

いずれのサスのストローク感覚も同様であり、荷重移動も穏やかかつ的確に伝わってくる。

操縦感覚も鷹揚でいて従順。ドライバーにあれこれ要求してこない。運転する手応えよりも落ち着きや安心感が持ち味であり、ドライバーにも寛ぎをもたらす要因の1つにもなっている。

熟成と洗練重ねた内燃機駆動の味わい

C200ローレウスエディションに搭載されるパワートレインは1.5Lターボと9速AT。

排気量はベーシック仕様のC 180系と同じだが、出力トルクともに向上し、ベルト駆動ISGを用いた48V型マイルドハイブリッドも採用。

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メルセデス・ベンツC 200ローレウスエディション    神村 聖

電動化技術を先進性の目安とするならC 200系はCクラスで最も進んだパワートレインといえる。

パワーフィールは出来のいい内燃機車の印象。グレード名から2L級の印象を受けるかもしれないが、3L級に匹敵する最大トルクもあって急加速でもさほど回転を上げずに済ませてしまう。高性能というほどでもないが悠々にして俊足なのだ。

電動パワーアシストの使い方も巧みだ。

踏み込み直後のトルク立ち上げを誇張したり、殊更に巡航ギア維持で電動を強調するでもなく、エンジンと渾然一体となった印象。

変速制御も含めてペダルコントロールに対する滑らかな追従と繋がりのいい加速感を示す。多少ラフなアクセルコントロールでもスナッチングに類するようなトルク変動もなく、いい意味での重みと精度感を意識させる。

熟成と洗練を重ねた内燃機駆動の味わいを電動駆動補助によりさらに磨き込んでいる。

電動感が希薄ともいえるのだが、内燃機車から乗り換えたユーザーが馴染みやすく、それでいてパワーの質感向上を実感できるドライブフィールだ。

ズバリ現行Cクラスは買いか?

現行Cクラスの日本導入は2014年。

モデルライフも末期となったが、安全&運転支援機能のバージョンアップなどの改良の積み重ねもあって、スペック面でも古臭さは皆無。

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メルセデス・ベンツC 200ローレウスエディション    神村 聖

強いて言うなら「ハイ・メルセデス」の対話式ボイスコマンドシステムで有名なMBUXが採用されていないのは気になるが、メルセデス・ミー・コネクトは標準装備。同クラス他車と比較して同等以上の先進装備も備わる。

乗ってみれば今でも同クラスあるいはプレミアム性の基準器として相応の良質な走りを示した。

スポーティとかスペシャリティといった嗜好領域でクルマ好きを刺激する要素は少ないが、それだけにプレミアムセダンの本質をしっかりと味わえる。

マイルドハイブリッドとはいえ電動化技術の導入も時代性では加点ポイントだ。

したがって実力の面では今でも第一線級なのだが、次期モデルのことを考えると手放しで勧めるのは抵抗がある。

メルセデス・ベンツ下克上なし」で、車格アップやグレードアップすれば価格相応に質や性能が上昇する。

宗旨替えでもない限り新旧についても同じ。次期モデルも確実に現行モデルを超えてくるだろう。

Cクラス狙いなら情報収集しながら次期モデル待ちが基本だが、購入条件がよければ現行モデルを狙うのも悪くない。

スペック

価格(税込):613万円
全長×全幅×全高:4705×1811430mm
ホイールベース:2840mm
車両重量:1600kg
エンジン:1496cc直4ターボ
最高出力(エンジン):184ps/5800-6100rpm
最大トルク(エンジン):28.6kg-m/3000-4000rpm
トランスミッション:9速オートマティック
燃費(WLTC):12.9km/L


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