求人案内や会社のホームページでどんな職場なのかイメージを膨らましても「思っていたのと違っていた」と感じることは多いはず。それでも許容できる範囲ならまだいいが、なかにはブラック企業並みの劣悪な職場環境なんてことも珍しくない。

 とはいえ、多くの方は入社したことを後悔してもすぐに辞める決断は下しにくい。でも、その一方でスパッと入社早々に退職することを選んだ者たちもいる。

◆入社初日から1人で飛び込み営業に行かされた

「次の転職活動が不利を被ることになってもズルズルと働き続けるよりはマシだと思ったんです」

 そう話すのは、2018年秋に中途採用で入社した小さな広告代理店をわずか2か月で退社した石田林太郎さん(仮名・26歳)。営業職としての採用だったので大変なのは覚悟していたが過酷さは想像以上。そのため、入社3日目にして辞めることを考えたとか。

◆3日目で「辞めたい」

「初日の午前中、社長から商品となるネット広告のプランやセールストークについての研修を受けましたが、わずか1時間ほどの簡単な説明といった内容のものでした。最後は『後は資料に書いてあるから』ってA4用紙数枚分の資料を渡されて終わり。そんな右も左もわからない状態でいきなり飛び込みの営業に行かされたんです」

 ちなみに前職は契約社員アパレル店員で、広告業界で働くのも営業の仕事もこれが初めて。いくら営業職採用とはいえ、通常は業界未経験の新人に初日から1人で飛び込み営業をさせたりはしない。

 だが、このときは内心「マジかよ……」と思いつつもそういう業界なんだと思い込んでしまったそうだ。

「ただ、訪問先の担当者に話を聞いてもらうところまでいっても当然いろんな質問を受けるじゃないですから。入ったばかりだと答えられない内容のものも多く、やっぱりそうなると契約はしてもらえませんよね。それでも小さな広告ですが最初の一週間で5本の契約を取って来たんです。自分ではまずまずの滑り出しかなと思いましたが、社長からは『少なすぎるだろ!』って痛烈なダメ出し。歓迎会などもなければ毎日2~3時間の残業はあるし、それもいったんタイムカードを差してからのサービス残業です。さすがにこの会社で自分がずっと働く姿を想像することはできませんでした」

◆入社2か月で退職

 この時点でブラック臭がプンプン漂い、石田さんもこの会社のヤバさに気づいていたがさすがに転職して一週間で辞めることは躊躇したという。一応、3か月働いてみて、そのうえでどうするか考えようと思ったそうだ。

「社長の行動を観察してみると、仕事ぶりではなく好き嫌いによって各社員に対する態度を変えていました。経営者としては最悪ですけど、もし自分が社長に気に入られたら居心地は案外悪くないんじゃないかなと思ったんです。かといっておべっかを使うのを苦手なので特にゴマすりなどもせず、常識的な範囲で社長に接していましたがどうやら社長好みの社員ではなかったようです(笑)

 先輩たちは「新人にしては契約を取ってきているほうだよ」と言ってくれたそうだが、社長からは相変わらず営業成績が悪いという説教ばかり。これではもうダメだと思い、1か月半が過ぎたころに辞意を伝え、2か月目が終わった時点で正式に退社した。

◆先輩社員からも「早く辞めたほうがいい」と言われた

「『こんな会社、早く辞めたほうがいい』って先輩からも言われ、自分もその通りだと思いました。当初の予定よりも早く決める形になってしまいましたが、毎日怒鳴られていたからこのままだと心を病んでしまいそうな気がして……。辞表を提出した後も社長は、『せっかく雇ってやったのに最近の若いヤツは根性がないな』って私に聞こえる声で独り言をつぶやくような人間でしたからね」

 会社を辞めるようにと勧めてきた先輩とは今も連絡を取り合っているとのことだが、彼も後を追うように退職。その後、会社はコロナの影響で業績が悪化したのか2020年に倒産してしまった。

「私は次の会社が決まるまで2か月近くかかり、やっぱり入社してすぐ辞めたのがネックになっていたのかもしれません。けど、現在勤めているプラスチック部品の製造メーカーはそれを承知のうえで採用してくれました。前の会社みたいなブラック職場ではないし、コロナ禍でも逆に業績を伸ばしているほど。あのとき辞めてつくづくよかったと思います」

 入社して短期間で辞めるのは気が引けるが、明らかに労働環境に問題のある職場なら話は別。我慢しないで彼のようにサッサと辞めてしまったほうがいいのかもしれない。

<取材・文/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

※写真はイメージです(以下同)