「今回の延長により引き続きご負担をおかけします皆さまに、深くお詫びを申し上げます」
5月7日菅義偉首相は17日間限定で発出していた3度目の緊急事態宣言を5月末まで延長すると発表した。

◆冷めやらない飲食店関係者の怒り

 当初「短期集中で実施し、ウイルスの勢いを抑え込む」と意気込んでいただけにバツが悪かったのだろう。冒頭の「お詫びを申し上げます」のあとには、3秒間にわたって頭を下げた。だが、5月までの休業および酒類提供の自粛を求められる飲食店関係者の怒りは冷めやらない。

「休業しても家賃はかかるのに、2月分の協力金さえ、いまだに振り込まれない。規模の大小に関係なく一律給付される協力金がこれだけ遅延したら、4月以降の規模に準じた協力金はさらに遅れるでしょう。もはや、死ねと言われているようにしか思えない」(銀座の小料理店店主)

 休業せずとも、酒類の提供中止は繁華街の居酒屋などにとっては死活問題。そのため、都の要請を無視して営業する店が増えているという。

「深夜営業している某居酒屋チェーンは連日大行列。同様に朝まで営業している居酒屋は3、4月と過去最高益を叩き出したとか。そのためウチも今月から酒類提供を解禁して、夜12時まで営業するようにしました。常連さんは変な気を使って、『ノンアルコールレモンサワー』などと注文してくれています(苦笑)」(新橋の和食店オーナー

◆批判は与党内にも

 批判は与党内にも渦巻いている。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が話す。

「今回の宣言直前には官邸に加藤勝信官房長官と田村憲久厚労相、西村康稔経済再生相らコロナ対策に関わる大臣が一堂に会して協議したのですが、短期集中宣言にこだわったのは菅首相だけ。田村厚労相以下、全員が『期間が短すぎる』と反対したのです。

 それもそのはずで、1月の宣言発出時に菅首相は『対策の効果が感染者数として表れるのに2週間ほどかかる。それ以降に効果を見極める必要があるので、前回と同様1か月とする』と話していました。17日間では、効果を判断しきれないのは本人もわかっていたはず。

 にもかかわらず短期宣言を強行したから、菅首相と田村氏ら閣僚との関係は一気に悪化。今では首相と蜜に連絡を取り合っているのは河野太郎ワクチン担当相ぐらいです」

 背景には地方選での惨敗もある。

「1月末の北九州市議選では麻生太郎副総理ら大物議員系列の候補者を擁立しながら、自民党は6人も落選。2月の大分市議選でも3人落選し、3月の千葉県知事選に4月の東京・小平市長選、兵庫・宝塚市長選でも自民党推薦候補が敗れた。

 実は、これらの選挙ではコロナ下にもかかわらず、投票率が前回を上回ったので、自民党関係者はコロナ対策の失敗が敗因と分析しています。実際、4月25日の衆参3補選で唯一勝ち目のあった参院広島でも、投票理由で最多を占めたのは『コロナ対策』だったことが出口調査で判明しています。

 有権者にとっては、河井夫妻の公職選挙法違反事件よりもコロナのほうが重要なのです」(鈴木氏)

◆安倍前首相は菅首相支持だが…

 すぐにでも“菅おろし”が本格化しそうな勢いだが、その空気を一掃した人物がいる。政治ジャーナリストの藤本順一氏が話す。

「安倍前首相です。憲法記念日に退陣後初めてBSフジの報道番組に出演し、『昨年、総裁選をやったばかり。その1年後にまた総裁を代えるのか?』と明確に菅首相支持を打ち出しました。最大派閥・細田派の事実上の領袖とも言える安倍氏のこの発言はきわめて大きい。菅首相を支え続ける安倍―麻生―二階ラインが揺らいでいない証しとも言えます。

 ただ、それは条件付き。同じ番組で安倍氏が『オールジャパンで対抗すれば開催できる』と強調した東京五輪です。仮に中止ともなれば、安倍政権の晩年を否定することになりかねない。そうならないよう、釘を刺したともいえる」

◆小池都知事が「五輪返上と言い出す」説の根拠

 だが、すでに世論は五輪中止に傾いている。メディア各社の世論調査では中止ないしは延期を求める声が7割に上っている。元日弁連会長の宇都宮健児氏が呼びかけた五輪中止のネット署名運動ではわずか4日間で30万人近くが署名。海外メディアでも中止を訴える報道が目立ってきた。そうした中で注目を浴びる女性がいる。

「小池都知事はここ最近、五輪開催の可否については一切言及していません。GW直前にはブレーン都民ファースト幹部らを集めて五輪について2時間にわたって議論したのですが、その場で都知事はほとんど発言しなかったようです。

 市場機能を豊洲に移転しながら築地も守るとした方針をはじめ、重要政策を打ち出すときに都知事が誰にも相談せずに決断するのは知られた話。加えて、機を見るに敏。五輪返上を口にすれば世論の支持を得られるのは間違いないだけに、いつ言及するのかに注目が集まっている」(都政担当記者)

 都議選告示前に返上宣言をすれば、都民ファの追い風になるのは必至か。その後は、開催すれば菅政権に逆風が吹き、中止となれば五輪の余勢を駆っての解散総選挙の目も潰える。都知事の言動が、政局に火をつけることになりそうだ。

◆菅政権今後のスケジュール

6/16 通常国会会期末⇒不信任案提出なら解散も?
6/25 東京都議選告示(7/4投開票)
7/23 東京五輪開会(~8/8)⇒中止なら菅おろしが加速?
8/8 横浜市長選告示(8/22投開票)
8/24 パラリンピック開会(~9/5)
9/1 デジタル庁発足
   パラリンピック直後解散が最有力
9/30 自民党総裁任期満了
10/21 衆院議員任期満了

◆そもそも3度目の緊急事態宣言は不要だった?

 医療ガバナンス研究所の上昌広氏は100万人あたりの新規感染者数が世界と比較して少ないことを理由に「宣言は不要だった」と話す。

感染者数が少ないうちにPCR検査を集中的に行って感染者を隔離するのが最も有効な対策。大阪や東京の調査資料を見ても飲食店を感染経路とするのは数%なので休業要請も効果薄」

<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!5月11日発売号より

写真/時事通信社