◆連休後に感染者増で再びロックダウン

 ワクチン接種によってイギリスなどは順調に感染者数が減っていると言われているが、ワクチン接種が始まったもののコロナショックが再び押し寄せている地域も欧州にはある。日本でも第4波が到来していると言われているが、ワクチン接種や各自治体の対応など、同じ轍を踏まないにはどうすればよいのだろうか。

 日本でも再び感染者が急増している新型コロナウイルス。変異株の出現や、東京五輪を見据えた政府の及び腰な対策、自粛疲れなど要因はさまざまだが、「いったい、いつ終わるのか」とウンザリしている読者の方も多いだろう。

 筆者が滞在しているポーランドでは、すでにワクチンの接種が開始されており、春の訪れとともに大型商業施設や映画館が再開するなど、事態はようやく好転するかと思われていた。ところが、そんな春の陽気は何処へやら。イースター(復活祭。キリスト教ではクリスマスに並ぶ祭)を挟んで、連日1万人近くの感染者が発生し続けている。

 この危機的状況を受け、一時再開していた施設は軒並み閉鎖になり、あっという間に本格的なロックダウンとなってしまった。

◆予約が殺到でサーバーダウン

 そんなポーランドでは日本同様、高齢者からワクチンの接種がスタートしており、筆者の周りでも「親が受けてきた」という声はよく聞く。これでようやく一安心……かと思われたが、接種開始後もトラブルは絶えない。

 まずは政府の杜撰な対応だ。ポーランドでは生まれ年の順に、段階的にワクチン接種の申し込みを受けつけていたが、4月1日、突然受け入れる年齢層を大幅に拡大。よりにもよってエイプリルフールの日であったことから、国民の間でも「悪い冗談か?」との声が挙がっていたが、案の定予約が殺到しサーバーダウンしてしまった。

 また、国民の対応が混乱を増大させるケースもあった。首都・ワルシャワの国立競技場では、指定された時間よりも早くワクチンを接種しにきた高齢者が、屋内駐車場などの待機列に殺到。ソーシャルディスタンスを取るどころか、すし詰めの状態で数時間待つケースもあったという。こうしたすし詰め状態がクラスターを生んだのでは……とも囁かれているのである。

ロシアワクチンに対する“国民的アレルギー

 そして、一番の問題と言えるのが、いまだに根強い「反ワクチン」論者だ。

ネットで詳しく調べましたが、ワクチンの中には人体に有毒な物質も含まれています。コロナが陰謀だとは思いませんが、本来、何年もかけて作られるワクチンが、これだけ駆け足で配布されるのは危険です!」(ポーランド人・30代・女性)

 こうした、いわゆる「ワクチンは危険」や「製薬会社が〜」といったアンチワクチンにありがちな言説だけでなく、複雑な国民感情がここに加わるため話がややこしくなる。

 ポーランドではファイザー製、モデルナ製のワクチンが主流だが、ロシアワクチンスプートニクⅤ」の導入も検討されていた。現在、ロシアワクチンは欧米で非常に注目を集めており、当初はその効果が疑問視されたが、WHOのお墨付きを得てからというもの、ドイツからロシアへ「ワクチンツアー」が組まれるなど期待と人気が跳ね上がったのである。

 だが、これにロシア製のワクチンに対して信用性や効果云々以上に強いのが、欧州に広がる反ロ感情である。

ロシア製のワクチンなんて、何が入っているかわかったもんじゃありません。都合の悪い情報は何でも隠蔽する国ですよ?絶対打ちたくないです。だいたい、高齢者以外はコロナなんて、かかっても軽症なんだから」(ポーランド人・10代・男性)

 グダグダな政府の接種策、我先にとワクチンを求める人々の狂騒、そして反ワクチン論者たち……。日本でも起こりうるケースなだけに、同じ轍は踏まないでいただきたいものだ。

◆日本で検討中のアストラゼネカは接種中止に

 いっぽう、同じ欧州でも北欧諸国では事情が異なる。当初、集団免疫の獲得を目指したものの死者が続出し、国王が「失敗だった」と認める事態にまで発展したスウェーデンを除いては、いずれもロックダウンが導入された。

アストラゼネカのワクチン接種が中止になってしまいましたが、高齢者を皮切りに接種は順調に進んでいます。私の両親も、ファイザーのワクチンを接種して、今は2回目の接種を待っているところです。他の国と同じように『反ワクチン』を掲げる人もいるようですが、ニュースではほとんど目にしませんし、私の周りでもそういう主張をする人には会ったことがありません」(ノルウェー人・30代・女性)

 アストラゼネカ製のワクチンは現在、厚労省で薬事承認の審査中だが、ノルウェーデンマークでは使用が取りやめられている。日本での承認がどうなるかは未定だが、ドイツではメルケル首相が同社のワクチンを接種するなど、欧州でも賛否が割れているようだ。

 また、同じく北欧のデンマークでも大きな混乱は起きていないという。

ロックダウンも他のヨーロッパの国に比べたら緩かったような気がします。公共交通機関マスク着用も遅かったですし。今のところワクチンも順調に接種が進んでいるので、9月には日本かメキシコに旅行に行こうかと計画してますよ!」(デンマーク人・30代・女性)

 ワクチン接種によってこれまでのように旅行ができる日が来るのは一体いつなのか。欧州ではある程度の目処はつき始めているが、日本の状況はまだまだ。一日も早く元の生活に戻ることができればと願うばかりだ。

イタリアでは不正接種が横行

 西側に目を向けると、大勢の死者が出たイタリアでは、ワクチン接種でも問題が起きているようだ。

イタリアでは若年層の『不正接種』が問題になって、首相が記者会見で『60代未満の接種をやめろ』と呼びかけるハメになりました。医療関係者が近親者に接種させていたことで、警察が捜査を開始したんです。なかには若年層を『医療ボランティア』だと偽っていた例もあるようです」(イタリア人・30代・男性)

 こうしたトラブルで接種が滞れば、せっかく確保できたワクチンも水の泡となってしまう。

フランスワクチン接種に否定的!?

 また、フランスでは日本と同じような配布の計画に問題があったという。

フランスは他の国に比べて接種に否定的な人も多かったようです。ただ、それを差し引いても、政府の配布計画に問題があったことは否めません。計画の準備も遅かったし、流通もうまくいっていません。いくらワクチンがあっても、届かないんじゃ意味ないでしょう」(フランス人・40代・男性)

 はたして、日本は欧州の失敗/成功例から学ぶことができるのか?「他山の石」とせずにいてほしいものだ。

<取材・文/林 泰人>

【林泰人】
ライター編集者日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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