2020年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。社会部門の第2位は、こちら!(初公開日 2020年12月18日)。

*  *  *

 女性が食事やデートに付き合う対価として、男性から金銭を受け取る「パパ活」。対面でないと成立しづらく、景気に左右されるこの活動に、新型コロナウイルスの影響が直撃している様子を今年5月、「アフターコロナのパパ活 #1」としてレポートした。

 コロナ禍が長期化する中、継続して取材してきたパパ活当事者の男女それぞれに話を聞くと、この半年間でパパ活だけでなく、生き方そのものが変容しつつあった。(全2回の1回目/#2に続く)

◆ ◆ ◆

オファーは5月以降持ち直し、現在は月1~2回

デートクラブでお会いした男性のお話では、登録している女性は二つに分かれるそうです。水を得た魚のように精力的に活動を楽しむ方と、悲壮感が漂う方だそうです」

 こう語る優子さん(33)は、その男性から「どうやって出会ったかを忘れてしまうような人ですね」と評されたという。容姿だけでなく所作や言葉遣いも柔和で美しい彼女は、たしかに二つのパターンのどちらにも当てはまらないように見える。

 契約社員として一般事務の仕事をしてきた優子さんは、2年半ほど前から「ダブルワーク」としてパパ活をしてきた。コロナ以前はデートクラブを介して月1~数回は新規のオファーを受け、多い月だと継続した関係のパパを含め、お手当の総額は30万円ほどになっていた。

 だが、今年2~4月に会った新規のパパは1人だけ。半年前のパパ側の取材では、仕事を失ってパパ活を始める女性が急増し、お手当の相場が崩れているという話があった。優子さんも男性たちから同様の話を聞いていた。だが優子さんに限って言うと、5月以降に持ち直し、現在は月1~2回のオファーが舞い込んでいる。女性に厳しい状況下で安定して声がかかるのは、もともとデートクラブで人気が高かった彼女だからだろう。

40代既婚男性は「誰かと仕事以外の話をしたかったんだ」

 男性たちとの関係は、それぞれにコロナの影響が滲んでいる。

 美容整形関係の仕事をする40代既婚男性とは、以前なら1回6万円のお手当で「大人の関係」ありのデートをしていた。ところが「ステイホーム」が奨励された緊急事態宣言中、術後に人目を気にせずにすむことで美容整形の需要が急増。男性が多忙になり、会えない時期が続いた。最近ようやく再会すると、すっかり雰囲気が変わっていた。

「美容整形は収束に向かっていて新規事業を立ち上げるそうで、これからは美容より健康だ、とおっしゃっていました。でも、すごく疲れ切っていました。前はエネルギーに溢れていたんですけれども……。ワインを飲んだらすぐお仕事に戻られました」

 男性はお酒に付き合った優子さんに1万円のお手当を渡し、別れ際に「誰かと仕事以外の話をしたかったんだ」とつぶやいたという。

 旅行するなど最も親しかった会社員の40代既婚男性は、コロナ禍リモートワークになって以降、会う機会がない。しかし最近、「ワーケーションでどこかへ行きたい」と連絡があった。ワーケーションとは、リゾート地などで働きながら休暇を取る過ごし方のことで、コロナ禍で推奨されるようになった。それなら名目が立つから、と優子さんにメッセージを送りつつも、家族の目を気にしてまだ実行に移せないようだ。

「都合のいい女」を求める男性はかえって好都合

 一方、新規のオファーは遠方からが続いている。共通項は「古風でおしとやかそうな女性」を探していること。なかでも急接近したのが、西日本の40代男性。妻子のいる中小企業社長だ。優子さんは言う。

コロナ禍で家にいる子どもたちが元気すぎて、仕事を終えて帰宅しても心が休まらないし、以前のように飲みにも行けない。そんな生活で寂しい気持ちがあって、デートクラブにたどり着いたとのことでした」

 男性はコロナが感染拡大する前、出張先のキャバクラで知り合った女性と深い仲になっていた。だがコロナ禍が長引くにつれ、女性が夜間に泣きながら電話してきたり、しきりに会おうとしたりしたため、家庭崩壊のリスクを考えて別れを切り出したらしい。

 つまり男性は「都合のいい女」を求めていた。しかし優子さんは、かえってその方が好都合だと話す。

優子さんが独身男性を警戒する理由

「ご家庭がある方が安心です。逆に独身の方だと、奥さんにバレたらどうしようという心配がないから度を超えてくるのではないかと警戒しています」

 優子さん自身は独身だ。1年前に取材した際には、パパ活だけでなく、婚活にも前向きに励んでいた。ではなぜ、自身と同じ独身男性を「警戒」するのか。

 優子さんは今年、3人の独身男性からオファーを受けて会った。結婚を視野に入れて本気になっていいかと尋ねてくる男性もいた。しかし、彼女の答えはNOだった。

「パパ活と婚活では完全に違います。私が名前を変えて活動しているのは、自分とは違う人間だと分けるためです。デートクラブで会う方の見ている私は自分自身ではないと割り切ってきたので、そのルールを外れるのは違うなと思ったんです」

「男性に依存せず一人でも生きていけるように」

 優子さんはこの半年ほど、本名での婚活も「お休み」していた。本業の正社員登用試験があったからだ。そして晴れて正社員になることが決まった。

 彼女がもともとパパ活に踏み出したのは、契約社員としての契約期間が2021年で切れるという不安からだった。司法書士を目指していた際の学生ローンが同年まで残っていることも影響していた。

 正社員になっても給料はあまり変わらずですが、と謙遜する優子さんの声は明るい。

コロナ禍で転職事情も厳しくなっていましたし、男性に依存せず一人でも生きていけるように、自分の土台をちゃんとしなければいけないと考えていたので嬉しいです」

 自立心の強い優子さんにとって、婚活や結婚は経済的安定を得るものではないという思いも、パパ活との違いなのだろう。

 もうパパ活を続ける動機はなくなったのではないですか。そう尋ねると、優子さんはフフと笑って言った。

「今は私もこの活動を楽しんでいるんです。先日お会いした方のお話も一冊の本になるのではないかと思うほどでした。やめ時は難しいですが、自分が結婚する時か、オファーが半年ほど来なかった時でしょうか」

(秋山 千佳/文藝春秋 digital

©iStock.com