新卒時はバブル崩壊、就職氷河期、そして今はコロナ禍リストラ、失業危機とシビアな社会人人生を歩む40代、50代の会社員。同世代の現役サラリーマンに実情をヒアリングしたところ、彼らが過酷な世代である理由が見えてきた――。

ジェネレーションギャップに嘆く中年

「自分たちの頃はパワハラまがいの説教を受けながら育ってきたのに、今は若手にちょっと小言を言ったら、すぐに人事部に駆け込まれる。昔は上司に気を使い、今は上司と若手に気を使わなくちゃいけない。正直、不公平じゃないですか?」(46歳・電機メーカー

 今の40代、50代の会社員を取り巻く環境はある意味“特殊”だ。20代の頃は「バブル崩壊」「就職氷河期の到来」と右肩上がりから右肩下がりの時代への転換点に置かれ、これまでの社会人人生をそっくり「失われた20年」のなかで過ごしてきた。

 そして今、再び「終身雇用からジョブ型雇用へ」「価値観の多様化」「コンプライアンスハラスメントへの意識の変化」など新たな時代の転換点に立たされている。ライフシフトジャパン取締役の豊田義博氏は、こう語る。

「もっとも大きな問題は、40代、50代は『保守的な生き方こそ正しい』と刷り込まれてきたということ。『リスクを取って挑戦するよりミスをしないこと。頭を低くして上司の言うことを聞き、ミスさえしなければある程度のポジションにつけて給料も上がる』。そんな“サラリーマン道”が普遍的な生き方として共有されていた最後の世代です。

 しかし今、その大前提となる『終身雇用』『年功序列』が崩壊し、梯子を外されて宙に浮いている状態。『変わらなきゃ』と内心感じていても、保守的な姿勢が染みついているので、なんとなくこれまでのやり方にすがってしまう。

 こうして時代から置き去りにされ、若者からは嫌われるという負のサイクルに陥る危機に直面しています」

◆40代を境に仕事のモチベーションが低下

 リクルートワークス研究所「シニアの就労実態調査」によれば、40~50代にかけて仕事のモチベーションが一気に下がっている。漫然と生きていれば構造的にどんどんダメ中年へと流されていく。つまり、ここが人生後半戦に向けた分水嶺でもある。

◆収入は上がらないのに大黒柱のプレッシャー

 さらに、こんな声もある。

「親の世代は普通の会社員でも戸建てが買えたし、自分もそこで育ってきました。でも、今は狭いマンションがやっと。子供の成長とともに自宅に居場所はなくなるし、かといって住宅ローンや教育費が安くなっているわけでもないから、会社に居場所がなくても、定年までしがみつかないといけない。こんな状態があと20年、30年続くなら、人生100年時代なんて地獄ですよ」(44歳・流通)

 こうした悩みの背景を、ビジネスコンサルタントの大塚寿氏は「社会的な問題」と指摘する。

諸悪の根源は収入が少ないこと。自分たちよりも上の世代は『働いていれば管理職になり、それなりの給料をもらって戸建てに住み、子供を育てながら飲み歩いたり、趣味に生きたり』という余裕がありました。

 しかし、40代、50代の半数以上が年収600万円未満となった今、そうしたライフモデルは実現不可能です。ところが、男女間の雇用格差が残っている世代でもあるので、家計における男性の責任は依然として重い。

 結果、給料は上がらないのに、住宅ローン、教育費、老後資金など『稼ぐこと』へのプレッシャーばかりがのしかかるという悲惨な状況です」

◆在宅時間が増え、仕事と家庭の板挟みに

 夫婦問題カウンセラーの高草木陽光氏は、こうつけ加える。

「一昔前の仕事中心の価値観とイクメン推進の社会的風潮の狭間で、板挟みになっているのが今の40代、50代。特に、コロナ禍で自宅にいる時間が増えたことで、これまで仕事を理由に先送りしてきた問題に直面せざるを得なくなっており、早急な意識改革が求められています。

 夫に早く死んでほしいと願う『デスノート』がネットで盛り上がるなど、放置すればするほど、家庭での居場所は失われていきます」

 構造的、社会的に生きづらさを抱える40代、50代。だが、「仕方ない」では“中年地獄”から抜け出せない。

ライフシフトジャパン取締役 豊田義博氏】
リクルートワークス研究所特任研究員。高知大学客員教授。共著に『実践!50歳からのライフシフト術―葛藤・挫折・不安を乗り越えた22人』(NHK出版)など

ビジネスコンサルタント 大塚 寿氏】
エマメイコーポレーション代表取締役。著書に『できる40代は、「これ」しかやらない 1万人の体験談から見えてきた「正しい頑張り方」』(PHP研究所)など

【夫婦問題カウンセラー 高草木陽光氏】
HaRuカウンセリングオフィス代表。カウンセリング数は8000人超。著書に『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』(左右社)など

<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/髙橋慶佑>

―[[イケてる中年]の肖像]―