30代・40代にファンが多いことで知られるTCG(トレーディング・カードゲーム)が、「マジック:ザ・ギャザリング」(以下「マジック」)である。1993年アメリカで発明され、1996年日本語版が登場すると、TRPGテーブルトークRPG)を遊んでいたゲーマーの間でブレイク。20世紀の終わり頃には、中高生の間でもブームになっていた。

 今はもう「マジック」から離れてしまい、ただ懐かしむだけの人にも朗報がある。実はいま、「マジック」の古いカードが注目を集めているのだ。中にはびっくりするほどの高値を付けて「骨董品」のようになっているカードもあるので、もしタンスから発掘できれば、コロナ禍で苦しい家計の足しになるかもしれない。

カードは“値落ち”するのが常識だったが……

マジック」のシングルカード価格といえば、印刷後1年~2年で値崩れするのが当たり前だった。「スタンダード」と呼ばれるフォーマットルール)では、古いカードから順番に使えなくなっていくからだ。この「スタン落ち」のため、「カードの価値には期限がある」というのが共通認識になっていた。

 しかし古いカードであっても、「エターナル」というフォーマットなら使うことができる。高年齢化にしたがってエターナルを遊ぶプレイヤーが増えたためか、最近では強力カードの値段がどんどん上がっている。もちろん「マジック」を遊んでいるのは日本人だけではない。世界的な「マジック」人気がシングルカードの相場を支えている。

 そこでここからは、「マジック日本語版で印刷された人気カードの現在の価値を確認していきたい。今回は1996年を起点として約10年間、2006年の「ディセンション」までに印刷されたカードを対象とする。

 価格の算定にあたっては、通販サイトの価格設定のほか、ヤフオク!での成約実績も参考にした。したがって、カードの買取を行っている各種店舗に持ち込んだ場合、これよりも低い買取価格を提示されるものと思われる。

 また、カードの言語や実物の状態によって価値が変わるほか、相場は常に変動しているので、ここで表示しているものはあくまで大まかな目安である。売買はくれぐれも自己責任でお願いしたい。

基本セット第4版~第8版(1996~2003年

 日本語版として最初に印刷されたのが「基本セット第4版」である。このセットが発売された当時は、ゲームの勝敗に応じてカードを奪い合う「アンティルールが残っていた。

 一番はじめに人気になったカードは《シヴ山のドラゴン》や《セラの天使》といった大物クリーチャーだが、やり取りはカード同士の交換がメインで、シングルカード(バラ売り)を取り扱う店舗はさほど多くなかった。

 基本セットに収録され続けた強力カードといえば《神の怒り》や《ハルマゲドン》が挙がる。タンスの奥に眠っている可能性が高い定番カードなのだが、実のところこの2枚はあまり高値では取引されていない。カードの効果が強力な点に変化はないが、活躍できる環境が限られているためだ。

 日本語版基本セットの収録カードのうち、特筆すべき高値が付いているのが「第6版」の《悟りの教示者》である。希少度がアンコモン(1パックに3枚封入)でありながら、2000円程度で取引されている。これらの「教示者」系カードは効果が強力で、1999年当時も盛んに使われていたものなので、「捨てるに忍びない」と取っておいた人が多いのではないだろうか。

ポータル」「ポータル三国志」(1997~1999年

 初めて触れる人にとって「マジック」のルールは難解である。「マジック」の総元締である米ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社もそういう認識を持っていたようで、「入門用」を謳ったセットが数度にわたり発売されている。

 1997年の「ポータル」、1998年の「ポータルセカンドエイジ」、1999年の「ポータル三国志」、同年の「スターター」がそれだが、メインストリームセットと比べると売上は伸びなかった。新しく「マジック」を始めるにあたっては、友だちから手ほどきを受け、手頃なカードを譲り受けて始めるプレイヤーが多かったからだろう。

 さらには、初心者向けセットカードは当初、公式の対戦に使うことができなかった。友だちと遊ぶためにこのセットを手にとって、歯がゆい思いをしたプレイヤーも少なくなかったことと思われる(筆者もそのひとりである)。

 しかし「ポータル」系のカードには、1万円以上の高値になっているものもある。特にすごいのが「ポータル三国志」のカードだ。レアカードの《伝国の玉璽》は一部のデッキに欠かせないものとなっており、「マジック日本語版に封入された歴代カードの中でもトップクラスの高額で取引されている。

ミラージュブロック(1996~1997年

 日本語版として初めて発売されたエキスパンション(基本セット以外の商品)が、1996年の「ミラージュ」である。それまでは前述の「第4版」しか日本語カードがなかったため、熱心な「マジックプレイヤーは、英語版の最新カードと交ぜて遊んでいたという。

ミラージュブロックカードでは、使いようによっては超強力な《ライオンの瞳のダイアモンド》が際立って高い。他にも《ファイレクシアン・ドレッドノート》など、ルール変更や新カードの収録によって強化されたカードの市場価値が上がる傾向にある。

 ただし、1996年当時はカードスリーブ(保護具)を付けずに遊んでいるプレイヤーが多かったため、状態の良いカードが少ないのが泣きどころだ。擦り切れや傷のあるカードはそれ相応に市場価値が下がり、参考価格の半額以下になることもある。

 なお、前述した「教示者」カードは「ミラージュ」にも収録されている(《吸血の教示者》のみ「ビジョンズ」)。初版ということもあり、「基本セット第6版」に収録のものよりやや高値で売買されている。

テンペストブロック(1997~1998年

テンペスト」が発売された1997年といえば、TRPGを遊ぶようなコアな卓上ゲーマー以外の層にも「マジック」の浸透が始まった頃である。筆者もそうだが、スーパーファミコンプレステで育った昭和末期生まれの男子にとって、同様に思い出深いゲームが「マジック」なのである。

 当時の人カードといえば《呪われた巻物》と《モックス・ダイアモンド》で、特に後者が著しく値を上げている。その他、コンボデッキに使われる《適者生存》や、デッキを高速化する《裏切り者の都》といったカードにも高い値が付く。

 人気カードの値段が軒並み高いのが、「テンペストブロックと、続く「ウルザズ・サーガブロックの特徴である。様々なデッキに入れることのできる便利なアーティファクトカードである《水蓮の花びら》は、コモン(パックに11枚封入)でありながら800円もする。売りには出さないとしても、持っているだけで嬉しくなる。

 また、意外なほど人気なのが《葉の王エラダムリー》と《スリヴァーの女王》で、当時の10倍以上の市場価格になっている。もしも20年前にタイムスリップできるのだとしたら、スタンダードを外れて安売りしていた「テンペスト」のカードを買い漁るのも悪くない。

ウルザズ・サーガブロック(1998~1999年

 マジック人気が高潮する1998年に発売された「ウルザズ・サーガ」は、「マジック」の黄金時代を象徴するエキスパンションである。しかし「サーガ」は同時に、数多くの禁止カードを生んだ“いわくつき”のセットでもあった。新しく印刷したカードが強すぎたのだ。

サーガブロックオーバーパワーぶりは、シングルカードの市場価格にも現れている。カードの再利用を可能にする《ヨーグモスの意志》や、無尽蔵のマナを生み出す《ガイアの揺籃の地》と《トレイリアのアカデミー》など、強力なレアカードが目白押しだ。

テンペスト」同様に、意外なカードが高騰している例もある。たとえば、当時“はずれ”として扱われていた《セラの聖域》の価値は100円程度だったが、現在ではそれが見直され、10000円を越える高値を付ける。「ウルザズ・デスティニー」の《金属細工師》は、同セットで一番人気の《マスティコア》と雰囲気が似ていることから、いつも引いた人にがっかりされていたのだが、今ではその《マスティコア》よりも人気のカードになった。

 極めつけと言えるのが「サーガ」にアンコモンとして収録された《花の絨毯》で、うな重の梅と同じくらいの値段をつけている。発売当時はまったく使われなかったが、現代のエターナル環境では活躍しているようだ。

「メルカディアン・マスクス」「インベイジョン」「オデッセイブロック(19992002年

サーガ」で勃発した“カード強すぎ問題”を受け、続く1999年の「メルカディアン・マスクス」ではゲームバランスが見直された。この時期には「テンペスト」や「サーガ」時代のような高額カードは登場していない。2000年の「インベイジョン」や2001年の「オデッセイ」でも、カードパワーは控えめだった。

 比較的値段の高いカードとして挙がるのは、コンボデッキに使われる《食物連鎖》や《ファイレクシアの供犠台》である。その他、《リスティックの研究》はコモンでありながら1000円程度、《陰謀団の貴重品室》はアンコモンでありながら2600円程度と、それぞれ高値を付けている。

 ところで、「マスクス」時代には《リシャーダの港》、「インベイジョン」時代には《ウルザの激怒》というトップレアがあり、どちらも大会で勝ち上がるには必須のカードだった。しかし今日では、《ウルザの激怒》が値を下げている(最盛期の1/5程度)。2000年当時の「マジック」では、赤の火力(直接ダメージ)呪文を弱く設定することでゲームバランスを取っていた。そんな環境下で、《ウルザの激怒》は相対的に強かったというだけなのだろう。

「オンスロート」「ミラディンブロック(2002~2004年

 2000年をすこし過ぎると、国産TCGの人気も高まってくる。平成初期生まれの間では「遊☆戯☆王」が子ども文化の主役になっていた。

 当時の「マジック日本語版を売る国内代理店はホビージャパン社だったが、並行輸入される英語版との競争もあり、主力商品「マジック」の売上は思うように伸びなかった。「マスクス」以来のカードパワー低下も理由だったろう。

 そんな2002年に発売された「オンスロート」には、「フェッチランド」と呼ばれる5種類の土地カードが収録されている。使い勝手の良いフェッチランドはさまざまなデッキで必要とされているため、初版である「オンスロート」版がいまだに人気だ。発売当時よりも高値を付けているケースが多いので、「当時遊んでいたデッキがそのまま残っている」という人は大切にするべきだろう。ただ、「オンスロート」発売直後に最強カードとして恐れられた《賛美されし天使》は、値を大きく下げている。

 2003年スタートした「ミラディンブロックでは、「電結親和」デッキを構成する各種カードが異様に強いことで物議を醸した。数年にわたり落ち込んでいたカードパワーが急激に高まり、ゲームバランスが再度崩壊したのである。この「ミラディンブロックに収録された《金属モックス》や《霊気の薬瓶》といったカードは、今でも高値で取引されている。

「神河物語」「ラヴニカ」ブロック(2004~2006年

 2004年に発売されたのが、日本風の異世界を舞台にした「神河物語」だ。続く「神河謀叛」に収録された超強力カードの《梅澤の十手》には、今でも高い価格が付く模様(最盛期ほどではないが)。また「神河」ブロックには意外と使えるカードが多く、何種類かは2000円以上で取引されている。

 次なる冒険の舞台は「ラヴニカ」(2005年)で、今度はうってかわって東ヨーロッパの雰囲気を演出した。巨大都市ラヴニカの覇権を10種のギルドが争うという設定がファンに受け入れられたため、以降もこの世界はたびたび再訪されている。

「ラヴニカ」の人気カードといえば、「ショックランド」と呼ばれる10種類の土地カードが真っ先に挙がる。強いカードではあるのだが、「オンスロート」のフェッチランドと比べると値段は控えめだ。以降2回にわたって再録されているのが理由だろう。

 この頃になるとウィザーズ社は「再録しやすいカード」を多数作るようになる。古いカードスタンダードで再度使えるようになるので、現役プレイヤーにとってはありがたい工夫だといえるが、そのぶんカードシングル価格は抑えられる傾向にある。

2006年以降の「マジック」は……

 過去の名場面にフィーチャーしたエキスパンション「時のらせん」が2006年リリースされると、にわかに「マジック」のリバイバルブームが起こった。「マジック」第1弾の誕生から13年後の話だが、今日から振り返るとそれも15年前ということになる。

 この頃に日本における「マジック」人気は持ち直し、世界的なシリーズ展開が今も続いている。もっとも日本のTCG市場が、1999年頃のような「マジック」一色になることはもうないだろう。小中学生が遊ぶのが「遊☆戯☆王」や「デュエル・マスターズ」などの国産TCGで、コアなカードゲーマーが遊ぶのが「マジック」……という棲み分けが成立し、現在も続いているように思える。

 リバイバル期に「マジック」に帰ってきたプレイヤーの場合、そうでなかった層と比べて、ゲームへの定着率が高いようだ。だから2006年より後の「マジック」を“懐古趣味”の対象とするにはすこし違和感がある。

 したがって「時のらせん」以降では、死蔵されているカードの割合もだいぶ少なくなりそうだ。そういった理由から、懐古を兼ねた人気カードの紹介は「ラヴニカ」ブロックまでで終わりとしたい

“マネーゲーム”としての「マジック

 今日では、「マジック」の古いカードがマネーゲームの材料になっている。過去10年の値上がりが堅調で、各種金融資産と比べても魅力的な投資対象だと考えられているからだ。実際に、投機的な動きで高騰しているとしか思えないカードも何種類か存在する。

 しかし「マジック」には特有のリスクがあることも忘れてはいけない。ゲームルールは基本的にウィザーズ社の専権事項であり、これまで強かったカード一気に弱くなる可能性が常にある。また「再録禁止リスト」に含まれるカードは再印刷されないことになっているが、もっと強いカードが新しく印刷されてしまえば、古いカードの価値は相対的に減じられる。これまで見てきたように、発売当時の最強カードが安値になり、軽んじられていたカードの値段が高騰する、といった例は枚挙にいとまがない。

 もしもマジック」のカードに投資して一攫千金を……と思うのなら、その前に学ぶべきことがたくさんある。ゲームルールや公式大会の結果はもちろんのこと、人気のイラストレーターは誰かとか、「マジック」のゲームクリエイターがどんなコラムを書いているかとか、あるいはプレイヤーが古いカードにどんな感情を抱いているかとか、そんなところまで理解する必要があるだろう。その上でなお、「マジック」の古いカードを買うのは賭けである。くれぐれも自己責任でお願いしたい。

秘蔵するか、それとも手放すか

マジック」が流行った頃といえば、強いカードをかき集めるのがとにかく楽しかった。我々ゲーム少年にとっての「マジック」とは、小遣いを全額はたいてもいいと思えるほどの趣味だったのだ。そういう思い出を大切にしたいオトナにとっては、現在の相場なんて情報は“知らぬが仏”のガッカリ箱かもしれない。

 だから、熱い思い出の宿る古いカードを、取っておくのも売り飛ばすのも個人の自由である。しかし、価値を知らないまま紙くずとして処理してしまうのはもったいないということだけは、この際断言しておきたい。

※本稿中の情報は2021年5月6日現在の取引相場であり、掲示した価格で売り買いできることを保証するものではありません。また算定にあたっては、平均的な状態で、なおかつFOIL(キラ)ではない日本語カードを想定しています。

画像=ジャンヤー宇都、公式HPより

ジャンヤー宇都)

懐かしのカードゲーム「マジック」。現在では“骨董化”が進み価格が高騰している