「父親は元妻から逃げるために引っ越してきた」加害父と元妻の“本当の関係”と“壮絶な夫婦喧嘩”《九州3児遺体》 から続く

 2月26日福岡県飯塚市の職業不詳、田中涼二容疑者(41)が、自宅から南に約230キロ離れた鹿児島県・桜島の麓にある観光ホテルで、実子である蓮翔(れんと)ちゃん(当時3)と姫奈(ひな)ちゃん(当時2)の首を絞めて窒息死させたとされる事件。自宅では病死とみられる養子の大翔(ひろと)くん(当時9)の遺体も発見されている。

 田中容疑者は、なぜ実子のみならず元妻の連れ子を養子にし3人の幼子を1人で育てていたのか、なぜ大翔くんは病死してしまったのか、そしてなぜ実子2人を殺害してしまったのだろうか。(全3回の2回目/#1#2を読む)

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 近隣住民によると田中容疑者は「入れ墨を彫っていて見た目は怖いけど、話すと気が弱そうな印象。入れ墨は虚勢を張っているだけなんじゃないか」という印象だったようだ。一方、元妻で子供たちの母親である女性については「恰幅がよくて田中容疑者よりも大きい」「ほとんど見かけず、話したことはない。子供と遊んでいるのも見たことがない」という声が聞かれた。

 田中容疑者は元妻と警察が出動するような激しい夫婦喧嘩を日常的に繰り返し、ついには元妻が包丁を持ち出し“刃傷沙汰”に発展したこともあった。警察官とともに仲裁した近隣に住む高齢男性はこう証言する。

離婚後、誰かを恐れていた田中容疑者

「玄関扉の外には大量の血痕が散らばっていて、部屋のなかに入ると足の踏み場もないほどの血の海ができていた。壁も真っ赤だった。駆けつけた警察官が夫妻に『このままだとどっちかがどっちかを殺すことになる。離婚したほうがいい』と諭し、その場にいた大翔くんと蓮翔くんに『お父さんとお母さんが別れたらどっちについていきたい?』と聞いたら、2人は声を揃えて『お父さん』とはっきり答えました」

 この壮絶な夫婦喧嘩の直後、2020年12月に田中容疑者は元妻と離婚。子供たちは希望通り、父親である田中容疑者と暮らすことになった。新しい生活のスタートを切った父子4人だったが、1月頃から田中容疑者は不審な行動をとるようになったという。その行動は「誰か」を恐れているかのようだった。

田中容疑者から電話「家に誰か来ていませんか」

「年が明けた2021年1月初旬頃から、田中さんは3人の子供とともに自宅に戻らない日が増えてね、近隣の方から『夜も帰ってこないから気味が悪い』と相談を受けたんです。私のところには田中さんから『雪で帰れません』『家に誰か来ていませんか』『私の家の周辺に不審な車はありませんか』といった電話が自宅に数回かかってきました。大翔くんは学校に行っていた日もあるようでしたが、一家は団地にいないことが多かったんじゃないか」(同前)

 それでも時折、田中容疑者が自宅へ帰ってくることはあった。1月下旬には近隣に住む高齢女性に金の無心をしている。

田中さんが『お金を貸して』と家に来たんです。生活費がないんだって。そこでかき集めた5千円を渡すと、30日には生活保護のお金ですぐに返してくれました」

 しかし前出の大手紙社会部記者によると、2月10日を最後に大翔くんは小学校に登校していないという。前出の高齢女性は田中容疑者らを気にかけ、2月13日に自宅を訪れてもいる。

「翌日がバレンタインデーだったから子供たちにチョコレートを渡そうと思ってね。その日、田中さん親子は家にいて、蓮翔ちゃんと姫奈ちゃんには直接渡したんです。2人は『ありがとう』と嬉しそうにしていた。大翔くんは出てこなかったので、2人に『お兄ちゃんの分ね』と渡しました。2人とも変な反応はしなかったから、その時はまだ大翔くんは生きていたんじゃないかなと思います。

 田中さんは『なんで(チョコレートをくれるの)?』と不思議がっていました。人付き合いが少なそうだから、きっと物をもらったりしたことがないんでしょうね。『バレンタインよ』というと『あっそうか。気をつけてね』と声をかけてくれた」

「大翔くんは外で亡くなったんじゃないか」

 この直後、田中容疑者は子供たちとともに家を離れている。2月14~15日頃には、前出の高齢男性宅に田中容疑者からまた電話が入った。

「『団地の敷地内にあるポールをとってほしい。あのポールがなければ家の前まで車をつけられるから』と言っていたから、荷物でも運ぶのかなと思って、ポールを外してあげたんです。そのことを伝えると田中さんは『ありがとうございます』と言っていた」

 このエピソードについて、前出の大手紙社会部記者はこう推測した。

「大翔くんの遺体は、発見された2月25日の時点で死後10日ほどが経過した状態でした。2月15日前後に亡くなったと考えると、外で亡くなった大翔くんの遺体を、人にばれないように家の中に運ぶために、車を家の前に付ける必要があったのかもしれません」

近隣住民が田中容疑者を擁護するワケ

 大翔くんの死は司法解剖で病死であることが判明したが、田中容疑者によるものではないかという憶測は根強くある。「この頃、周囲をキョロキョロと見回し、不審な様子で車に乗り込む田中容疑者の姿を見ました」と声を潜めて語る近隣住民もいた。

 懐疑的な見方の住民がいる一方、バレンタインデーの前日に田中容疑者宅を訪れた高齢女性は「病死だと信じている」と話す。

「いつだったか、『子供が熱を出したので体温計を貸してくれませんか』と田中さんが訪ねてきたことがあったんです。田中さんはよくお金に困っていたし、体温計を買うお金もないんだなと思った記憶があります。大翔くんの体調が悪くなったのに、薬が買えずに亡くなってしまったんじゃないでしょうか。部屋で遺体が見つかったら疑われると思って、早まったことをしてしまったんじゃないかって思うんですよ。気の弱い人だったから……」(同前)

 大翔くんの詳細な死因は不明だが、「警察は病死と事件の関連性を慎重に調べている」(前出・大手紙社会部記者)。田中容疑者は桜島への最後の家族旅行をした理由について「最後に子供たちをフェリーに乗せてあげたかった」と話しているという。田中容疑者は取り調べに対し、いま何を語っているのだろうか。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

田中容疑者 ©共同通信