ゴールデンウィーク明けに新型コロナウィルス緊急事態宣言が延長、適用エリアも拡大されました。注目を集めているテレワークですが、実際のところ実施率は頭打ちのようですね。

たしかに、テレワークのできない業務も存在するわけですから、問題は“テレワークはやる気になればできるけど・・・しない企業"なのかもしれません。個人的には日本のテレワークは積極派と消極派に二極化している気もします。

さて、今回は積極派のなかで起きているテレワーク「隠れ残業」問題です。

データから見るテレワーク「隠れ残業」

テレワーク「隠れ残業」に関するデータは、昨年(2020年)のものですが、労働組合の中央組織「連合」がおこなったものがあります。この調査は昨年6月5日~9日におこなわれたインターネット調査で、4月以降にテレワークを行った全国18歳~65歳の男女1,000人の有効サンプルを集計したものです。

その調査結果によると、

「通常の勤務より長時間労働になることがあった」と答えた人は51.5%。
「残業代を申告しないことがあった」という回答は65.1%。

※ 母数は「テレワークで時間外や休日労働をした」と回答した381

残業代を申告しない理由としては、「時間管理がされていない」「申告しづらい雰囲気がある」という回答が65.1%。「勤務先に残業代を認められないことがあった」とした人も56.4%と半数を超えていました。

従業員の規模が小さい企業ほど残業代が認められない傾向が強く、勤怠管理がされていない割合も高いという傾向もありました。

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海外でもテレワーク「隠れ残業」はある

この調査は昨年6月時点のものですから、現在と比べて“ムリやりテレワークを実施した企業"もかなり含まれていると思います。そのような企業がテレワークから離脱したと考えると、調査結果は改善されているとも思えますが、テレワーク「隠れ残業」が存在するのは確かだと思います。

実はこのテレワーク「隠れ残業」は日本だけではなく、世界的にも、その傾向があるようです。今年4月28日に米ADPリサーチ・インスティテュートが発表したデータがあります。この調査は世界17カ国の生産年齢の成人約3万2000人を対象に、パンデミックに直面した従業員の意識調査を実施したものです。

主な調査結果としては、週に20時間超無給で働いていると答えた従業員は全体の1割。この割合はコロナ禍前の2倍となります。サービス残業の時間自体も長くなっており、1年前には週平均7.3時間だったのが今回は9.2時間となっていました。

ADPでは、サービス残業の内容は失職もしくは退職した同僚がしていた仕事の埋め合わせか、純粋にパンデミック中に増えた仕事への対応のどちらかだと分析しています。

地域別に見て、サービス残業がこの1年に最も増えたのは北米で、週平均9時間近くと1年前から125%の増加。サービス残業時間が最も長いのはアジア太平洋で、週平均約10時間。

ただし、今回調査した従業員のうち68%が過去1年に昇給もしくは賞与があったと回答しています。北米では男性の63%、女性51%が該当します。この辺は日本と少し事情が違うようですね。

「つながらない権利」とは?

もうひとつ興味深いデータを紹介します。今年4月23日NTTグループが「働き方改革2021 with コロナ」という調査結果を発表しています(調査期間:3月6日~9日)。

この調査は、「NTTコムリサーチ」登録モニターを対象に「働き方改革」の取り組み状況を、2015年から毎年実施しているものです。今回発表された調査結果のなかに「つながらない権利の侵害が進展」という項目があります。

「つながらない権利」とは、就業時間外においての緊急性のない電話やメールへの対応を指しています。

これらの上司からの通話や返信に週1回以上対応している人は、前回調査と比べて7.6ポイント(14.9%→22.5%)の増加。同僚からの通話や返信では、11.5ポイント(13.5%→ 25.0%)の増加。

「できれば対応したくないが、対応するのはやむを得ない」と考えている人も、微増で46.7%を示していました。同僚という気軽さから就業時間外に連絡してしまうが、対応する側は「できれば対応したくない」と考えていると分析しています。

この調査対象はテレワーカー限定のものではありませんが、やはりテレワークサービス残業の大きな原因と言えると思います。

この調査企画のメインテーマは「働き方改革」ですが、働き方改革に取り組む企業は過去最多の56.0%。従業員数1,000人以上の規模の企業では、77.1%。ただし、この働き方改革の進展により、「つながらない権利」の侵害が進んでいる可能性もあると分析しています。

仕事の仕方を根本的に変えないとムリ

最後は個人的な感想などです。働き方改革の進展と「つながらない権利侵害」の同時進行を、どう読み取るかは微妙ですよね。

かつて筆者が働きだした頃(バブル末期)には、当然、「つながらない権利」なんていう概念は影も形も存在しませんでした。そういう意味では歴史は進歩している。問題点を顕在化させているわけですから。

ただ、どうしてもテレワークは、仕事と“仕事以外"の境界線が曖昧になってしまう。これはテレワーク経験者の方なら、どなたでも、そう思うのではないでしょうか。

昨年、半年程度、大手企業のプロジェクトに参加していたのですが、そこでは就業時間以外の業務が、かなり厳しく規制されていました(逆に言えば残業代の抑制ですね)。

そうすると何が起きるかというと、自分を含めて何人かのスタッフは、時には退社連絡をした後に集中しないとできない業務にとりかかる。もう、客先からのメールも公然とガン無視できますからね。

これは、多分、“仕事中毒患者"の多い日本でしか起こらない現象だと思います。言い訳をすれば、半年程度の在籍で問題点等を言い出すと、さらに余計な工数がかかってしまうし。

ただ、ひとつ感じたことはあります。巷では、テレワークに関して「部下の管理がムズカしい」「テレワーク環境の報連相」などが取り沙汰されていますが、多分、その問題の立て方が間違っている。

「その報告って必要なの?」「それを報告書にする?」「そういう管理体制ってムダでは?」等の根本的なスキームから立て直さないとムリがある。どうも、そんな感じが、ちょっとしましたね。

参考資料