米軍は現在も世界各国に展開する最強の軍隊と言われているが、それを構成しているのは生身の兵士たちだ。いかに鍛えられていようと、人間であるからには健康上の不具合が生じる。時差ボケもその1つだ。
今、国防高等研究計画局(DARPA)は、科学の力で兵士たちの時差ボケを解消しようとしている。体内に埋め込まれたインプラントで、体内時計をコントロールしてしまうのだ。
このほど、DARPAがノースウェスタン大学と提携し、4年半のデバイス開発プロジェクトに3300万ドル(約37億円)を出資するというニュースが発表された。
そのデバイスの名を「NTRAIN(Normalizing Timing of Rhythms Across Internal Networks of Circadian Clocks)」という。
首尾よく完成すれば、世界中に派遣される兵士だけでなく、日勤と夜勤のために生活リズムが大きく変化する仕事に就いている人たちにとっても強力な味方になると期待されている。
現段階では、腕に装着する「外部ハブ」と体に移植する「インプラント」の2部構成の設計が想定されている。
睡眠ペプチドを生産する細胞をインプラントに組み込む
人間の眠りは、体内時計にしたがって睡眠ペプチドが放出されることで制御されている。そこで合成生物学と生体電子工学の技術を応用することで、インプラント内にそれと同じペプチドを生産できる細胞を組み込むのだ。外部ハブには好みの睡眠時間が入力され、その時間になると腕の中に移植されたインプラントへ合図を送る。
するとインプラント内部の細胞を光で刺激してペプチドの生産をうながし、血流の中に直接放出させる。これによって眠気がもたらされるという仕組みだ。
ノースウェスタン大学のジョナサン・リブネイ氏によれば、「チップに搭載されたインプラント可能な薬局のようなもの」であるという。
兵士が薬を持ち運ぶ必要もないし、注射をする必要もない。使用する期間にもよるが、デバイスにいちいち補充する必要もない。患者のために薬を調合してくれる薬局のように、インプラントが必要なペプチドを調合してくれるのだ。
別の物質を体内に放出できるようにすれば、眠りの管理だけでなく、痛みや病気の治療にも応用できるかもしれないとのことだ。
References:Implantable ‘living pharmacy’ could control body’s sleep/wake cycles - Northwestern Now/ written by hiroching / edited by parumo
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