週明け月曜の「スポーツ報知」の社会面には世論調査の結果が並んだ。

『五輪開催へ逆風強く』

『不支持最多 菅首相』

 どちらも共同通信の調査で、五輪中止するべきと答えた人は59.7%、菅首相の不支持率は47.3%。

 この2つをひっくり返すべく、菅首相はいま「ワクチン1本足打法」と呼ばれるほどワクチンに賭けている。逆転ホームランは放てるのだろうか。

なぜ? 高齢者ワクチン接種「7月末までに完了」と回答する自治体の多さ

 しかし菅首相がぶち上げた「7月末までに高齢者ワクチン接種完了」を追い続けていると危うさしか感じないのだ。

 その危うさとはワクチンが打てる・打てないの話ではなく、今までささやかれてきた政治家菅義偉の強権的な手法のことである。これがいまハッキリと可視化されているのである。

 まず、ご丁寧にも政府は12日に《「7月末までに完了できる」と回答した自治体は全体の85.6%》という調査結果を発表した。

 えらく高い数字だ。

 この「政府調査」について調べてみると強引な手法が明らかになってきた。共同通信の記事を参照する。

『「7月完了」政権ごり押し 高齢者ワクチン接種、市区町村86%「可能」』(中日新聞Web5月16日

 やはりと言うべきか、「86%」と回答した自治体の中には菅政権に「7月完了」を振りかざされ、やむなく応じた例が少なくないという。具体例が書かれている。

 関東地方の市長の元へは総務省の複数の職員から電話が来たり、県から「7月中に終えられないのか」とただされたり、しまいには地元選出の自民党国会議員からせかす電話が入った。

 議員は、

「首相は高齢者接種が終わらないと、選挙が打てないって言うんだよ」

 ワクチン打って選挙打つ。わかりやすい。

ショックだった」という言葉で威圧

 そんな大号令について、

《「やり口」が次々とあらわになる。与党からも「九割は無理筋だ」との声も上がる。》

 まさに「やり口」という表現がぴったりだ。コロナもこういう強引な「やり口」が官邸発であったのだろうとつい考えてしまう。

 そんななか菅首相は自治体の一部が7月末には間に合わないと回答したことについて、

《「ショックだった」と述べたうえで、一層の協力を呼びかけました。》(NHK5月13日

 このショックという言葉、自治体関係者は「あえて失望感を出すことで、威圧している」と思ったという。(中日新聞Web5月16日

 その結果として政権の意向に沿った回答が積みあがったのである。

今、コロナで可視化される忖度のシステム

 ではもっと、もっと、詳しくわかる地方側の記事を見てみよう。

 信濃毎日新聞は、

『「7月完了」自治体翻弄 高齢者ワクチン 目標達成を国催促』

 と14日の一面トップで書いた。

 長野県内では接種を担う医療関係者の確保が難しく、国の方針に振り回される反発も根強いと報じている。総務省の担当者は同紙の取材に、接種が遅れる自治体に直接問い合わせることがあると認めた。

 ある市町村の担当課長は「政策の見栄えのために翻弄されているようだ」。

 16日の記事(共同通信)では、政権の前倒しを迫るやり方に対し「高齢者不在の数字合わせをしている。喜ぶのは首相だけかもしれない」(ある市の関係者)の言葉もあった。

 いかがだろうか。

 首相が突然に放った言葉のために、周囲がその言葉にあわせるためにあたふたする。この数年間、異なる案件でも既視感があるではないか。それがいま「見えている」のである。忖度を生むシステムコロナのせいで可視化されている。私たちはやはりニュースを見たほうがいい。

「1日100万回接種」の根拠はどこに?

 では次。

「1日100万回接種」について。これが7月末に接種完了できる理由となっているのだが、その根拠を記事で探してみた。

 結論からいうと根拠はなかった。

 朝日と読売から抜粋しよう。

《官邸幹部によると、7日の首相会見の前に「100万回は根拠がない。発表すべきではない」と、首相の表明に反対する意見も出たという。》(朝日5月11日

 だが、首相はこれを押し切った。そもそも、なんで100万回という数字が出てきた?

《首相周辺は「7月末に接種を終えるには、1日100万回打つ必要がある」と説明。期限を逆算して、「100万回」をはじき出したとする。》

 つまり逆算だったのだ。あまりにも強引に見えるが、何か7月末に世界的なスポーツイベントでもあるのだろうか。

 同じ日の読売は『「1日100万回」接種の実現危ぶむ声、大規模会場2か所で計1・5万回どまり』と書き、

《1日100万回を達成できる「めどは全く立っていない」(政府関係者)》

 こんな状況なのだが電話攻勢やら周囲からの圧を受けて「7月末完了」を言わされる自治体の様子がここでも見えてくる。

政府は「予約が入らなければ完了」

 さて今回私が一番紹介したかったのはこちら。

 読売は同記事で7月末に高齢者接種が完了しなかった場合、「批判の矛先は首相に向かいかねない」と書いた (5月11日) 。

 その次だ。

《政府内では「高齢者から予約が入らなければ高齢者は完了ということだ」(政府高官)とする声も出ている。》

 え…?

 これってどういう意味だろう。高齢者から予約が入らなければ接種は完了…。

 予約したくてもできない高齢者がいても目標達成なのだろうか。この部分、何度も読み返してもザワザワが止まらない。

 となると次の記事を読んで欲しい。

ワクチン接種予約、電話つながらずネット使えず…戸惑う人たちを共助で救う』(東京新聞Web5月15日

 ネットに疎いお年寄りへの「共助」の動きを伝える記事だが、先ほどの政府高官の「高齢者から予約が入らなければ完了」を思い出すと記事の意味が違って見えてくる。

 浮かぶのは菅首相の「自助」という言葉だ。

 まさか、お年寄りも「自助」?

「自助」を利用しすぎではないだろうか。数字の目標達成への懸命さと同時に冷たさすら感じてしまう。

 今こそ「共助」「公助」だと思うのですが。

(プチ鹿島)

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