イスラエルパレスチナの「砲撃合戦」が連日、世界を揺るがせているが、中国がいつのまにか、「正義の味方」を演じ始めている。例えば、国連安保理は、毎月順番で議長国が交代するが、偶然にも今月の議長国は中国なのだ。

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米国がもたつく間に中国が和平の主導権を

 中国の王毅国務委員兼外相は5月16日にも、日曜日にもかかわらず安保理のオンライン会議を招集。「議長の特権」で、長々と演説した。

イスラエルパレスチナの衝突は不断にヒートアップしていて、女性や子供を含む大量の人々が死傷している。事態はとても危険、深刻で、暴力の火消しは容易ではない。国際社会は緊急行動を起こし、局面のさらなる悪化を全力で阻止し、地域の混乱を全力で防止し、現地の人々の生命の安全を全力で維持、保護しなければならない。

 パレスチナ問題は常に、中東問題の核心である。中東が不穏になれば、天下は安寧でいられない。全面的で公正、持続するパレスチナ問題の解決こそが、中東地域の真の永続的平和と普遍的安全を実現させるのだ。こうした緊張した局面で、中国は4点、主張したい。

 第一に、双方の暴力行為の即時停止を求める。第二に、切迫した人道援助の実施を求める。第三に、国際的な停戦への行動が義務だ。第四に、『二国家解決』(パレスチナ国の認定)が根本的な出口だ。1967年の国境をベースに、パレスチナを独立国家として承認し、アラブユダヤの民族和解を果たすべきだ・・・」

 ジョー・バイデン政権がモタモタしている間に、中国がどんどん主導権を取って、中東和平を進めようとしているのである。

「ウイグル族の人権保護訴える米国がパレスチナのイスラム教徒殺戮を批判しない欺瞞」

 もちろん、中国には中国の思惑があってのことだ。5月16日、中国を代表する国際紙『環球時報』は、「パレスチナイスラエルの衝突を緩和させよ、人権を軽視してはならない」と題する社説を出した。中国紙に「人権」という文字が踊ると、思わず目が向くが、その長い記事の核心部分を訳出する。

パレスチナ問題は、アメリカイスラムに対する態度を最も切実に映し出す鏡である。パレスチナイスラエルの衝突が発生したのは、西洋文明とイスラム文明の歴史が重なるホットスポットだ。イスラエルによる東エルサレムの侵略的占領は、多くのイスラム世界にとって受け入れがたいものだ。たとえイスラム国家が現実の政治として、一時的に態度を軟化しようと考えたとしても、また関係するイスラム世界の民間人たちを、引き続き抑え込んだとしてもだ。

 アメリカは、パレスチナイスラエル話し合いを進めているが、それは単に二つのうち一つを選択するという状況が起こっている。すなわち、永遠にイスラエルの側に立つということだ。イスラエルを目標にしたハマスなどの襲撃に対しては、ワシントンは一貫して譴責(けんせき)する。だがイスラエルによるパレスチナを目標とした大規模な爆撃は、死傷者の数が比較にならないというのに、ワシントンの批判は甚だ軽微なもので、虚偽に満ちている。

 アメリカが新疆ウイグル問題で、声高らかにイスラムの人権保護を謳っていることを考えてみてほしい。そのアメリカが、中東では自ら戦争を発動して多くのイスラムの民間人を殺戮しているのだ。

 また、イスラエルによるパレスチナイスラム教徒への殺害や圧力には、実際とても寛容なのだ。ワシントンのこの二枚舌の態度の背景を考えると、ワシントンの虚偽は、もはやさらに覆い隠せなくなってきている。

 アメリカは、真にイスラエルに影響を与えられる唯一の国だ。しかしアメリカイスラエルに対して取っている行為は、アメリカパレスチナにかけている圧力や蔑視に較べたら、遠く及ばないものだ。イスラエルパレスチナの基本的権利を剥奪することに対しても、アメリカは寛容で、支持しているのだ。

 現在の世界で、最も甚大に人権が破壊されている地域は、多くの部分で中東だ。かつこの地域の人権の悪化は、程度の差こそあれ、すべてアメリカの行為と関係しているのだ。ワシントンは声高らかに人権を叫ぶが、彼らこそが、世界の人権が悪化している状況に、最大の責任を負っているのだ>

 以上である。このように中国は、パレスチナイスラム教徒の人権侵害を黙認するアメリカに、新疆ウイグル自治区イスラム教徒への人権を主張する資格はないと、一刀両断したのだ。バイデン政権が進める「人権外交」の中国包囲網への痛烈な「反撃」である。

中国のSNSでも反米機運が盛り上がり

 中国では、外交部や官製メディアだけでなく、SNS上でも、一般市民がパレスチナ問題に盛り上がっている。例えば、こんな「意見」を見つけた。

「新疆ウイグルに住むイスラム教徒たちよ、このままウイグルにとどまりたいか、それともガザに行きたいか?」

バイデンが唱える『人権』とは何か? あの『爆破映像』を見て、世界の人々はようやく目が覚めたろう」

「最大の『人権保護』とは、人命を守ることではないか。中国は守っているが、アメリカは守っていない」

「ブリンケン(国務長官)もヘインズ(国家情報長官)もユダヤ人ではないか。アメリカに何ができる!」

 アメリカに対抗する中国は、パレスチナ贔屓と思えるが、実はイスラエルとも深い関係がある。人民解放軍レーダー戦闘機の技術などは、イスラエルから買っているからだ。

イスラエル・パレスチナ問題も米中新冷戦の枠組みの中でとらえる必要が

 中国が目指しているのは、「一帯一路」の地域、すなわち中国からヨーロッパへ至る地域を、「親米国」から「親中国」へと変えていくことだ。その意味では、パレスチナイスラエルも、ともに取り込みたいのである。

 そう言えば、かのヘンリー・キッシンジャー博士(97歳)は、最新のインタビューで、「近未来のヨーロッパが中国に取り込まれ、ユーラシア大陸全体が『中国圏』になっていく可能性がある」と予言している。

 ともあれ、中東で起こった今回の「爆撃合戦」は、「米中新冷戦」の大きな枠組みで見ていく必要がある。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  日本人が知らないイスラエル・パレスチナ紛争の「実相」

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