「経肛門腸呼吸(enteral ventilation
via anus)」――耳慣れぬ言葉だが、つまりはお尻から息を吸うということだ。
冗談のように聞こえるだろう。だが、この呼吸法が新型コロナが席巻し、人工呼吸器が不足している国の人々を救うかもしれない。
一部の魚類が腸内呼吸を行うことは以前から知られていた。しかし東京医科歯科大学をはじめとするグループによると、それと同じ能力がマウスやブタといった哺乳類にも備わっていることが確認されたそうだ。
肺炎や急性呼吸窮迫症候群といった、命に関わる重い呼吸器不全患者を助ける新しい治療法になるかもしれないとのことだ。
『Med』(5月14日付)に掲載された研究では、酸欠状態にある実験動物(マウス、ラット、ブタ)のお尻から気体あるいは液体の酸素を注入して、その影響が確かめられた。
たとえば酸素濃度9.5%の低酸素環境に置かれたマウスは、そのままの状態では11分で死んでしまう。しかし酸素を腸に注入した場合、4分の3が1時間近く生き延びることができた。
ただし気体の注入でこれを行うには、腸の内壁を研磨して酸素が血液に吸収されるようにしなければならない。このため人間の治療に利用するのはあまり現実ではないという。
そこで人体に安全なペルフルオロ化合物に酸素を混ぜ、液体として注入する方法が考案された。
するとマウスでは歩ける距離が延び、さらに心臓に届く酸素量も増加。ブタでは皮膚の血色が回復したり暖かくなったりと、酸素の状態が改善したそうだ。
人工呼吸器の代替手段として有望視
現在インドなどでは新型コロナ感染症が大流行しており、人工呼吸器が不足している。患者の呼吸を補助する代替的な手段があれば、呼吸器不全に対処する時間を稼ぎ、その命を助けることができるかもしれないとのことだ。
なおこの方法はあくまで実験段階のものだ。人体への副作用といった安全性は確認されていないので、自分で腸呼吸を試したりはするのは厳禁だ。
過去には、悪ふざけでお尻から空気を注入し、腸が破裂して死亡したという事故も起こっているくらい危険な行為だ。今回も液化した酸素が使用されているので、決してお尻から空気をいれたりしないようにしよう。
References:Mammals can breathe through anus in emergencies / 国立大学法人 東京医科歯科大学/ written by hiroching / edited by parumo
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