成田スカイアクセス線の「アクセス特急」用として登場した京成3100形電車が客を乗せて、現在は使われていない「昔の成田空港駅」へ到着、そして発車するという珍しい出来事がありました。芝山鉄道線にも初めて顔を出しています。

ジェットエンジン音が響く駅へ

2021年5月22日(土)、成田スカイアクセス線の「アクセス特急」用として2019年に登場した京成3100形電車が、通い慣れた空港第2ビル駅成田空港駅ではなく、芝山鉄道の芝山千代田駅(千葉県芝山町)へ到着。ジェットエンジンの音が響く成田空港脇の同駅で、多くの人が普段現れない3100形電車へ向け、シャッター音を鳴らしました。

これは、京成トラベルが開催したミステリーツアーのひとこま。約2.2倍の倍率で当選した170名の参加者が、3100形電車に乗って芝山千代田駅に到着しました。3100形電車が客を乗せて芝山鉄道線を走るのは、今回が初めてだそうです。

行き止まりの芝山千代田駅に到着した3100形電車と参加者はその後、東成田駅へひと駅戻り、いったん下車。そして同駅から再び3100形電車に乗ったのですが、かなりレアな状況になりました。「昔の成田空港駅」からの発車になったのです。

現在の成田空港駅空港第2ビル駅は30年前、1991(平成3)年3月19日に開業し、京成電鉄JR東日本が共用していますが、それ以前にも成田空港駅は存在していました。別の場所で。

「昭和」で時が止まったホーム

30年前まで、現在の東成田駅成田空港駅でした。

東成田駅は、いまから43年前の1978(昭和53)年5月21日成田空港駅として開業。京成だけの駅で、初代「スカイライナー」が京成上野駅とのあいだを結んでいましたが、成田空港のターミナルビルへは連絡バスなどを利用せねばならず、使い勝手に課題がありました。

そうしたなか1991(平成3)年3月19日、空港ターミナル直下に現在の成田空港駅空港第2ビル駅が開業。“初代”成田空港駅東成田駅に改名し、空港アクセスの舞台から事実上身を引いて、現在へ至ります。

この東成田駅には普段使われていないホームがあり、そのホームでは“引退”から30年を経たいまなお、駅名の表記が「成田空港」のままです。

ミステリーツアー3100形電車は、普段使っている東成田駅ホームへ到着して参加者を降ろしたあと、普段使っていない「成田空港」表記のホームへ移動。そこから参加者を乗せ、発車しました。

この「昔の成田空港駅」ホームへ列車が到着することは、イベントなどで過去にもあったそうですが、そこから客を乗せて列車が発車するのは、今回が初めてだそうです。なお京成電鉄によると、普段は使っておらず、特に変える必要もないことなどから、「成田空港」のままになっているとのこと。

また東成田駅では約1時間、通常は非公開であるこの「昔の成田空港駅」ホームやコンコースを見学することもできました。

始発駅?もレアだった 普通は入れないところ

今回のミステリーツアーは出発地もレアで、なんと京成の宗吾車両基地(千葉県酒々井町)から発車。そこから芝山千代田駅、東成田駅(旧成田空港駅)と来て、八千代台駅(千葉県八千代市)で終了というおよそ2時間半の旅でした。

代金は大人3800円で、記念品やプレゼント抽選企画、八千代台の商業施設で使える500円のクーポンがセット。京成トラベルの広報担当者は、今後も感染症対策に十分配慮しつつ、こうした鉄道の旅を楽しんでもらえればと話しています。

「昔の成田空港駅」で発車を待つ3100形電車(2021年5月22日、恵 知仁撮影)。