デビュー間もなく頭角を表す
ラリードライバーはどんどん若返っている。考えてみてほしい。1983年にハンヌ・ミッコラが41歳で世界ラリー選手権(WRC)のタイトルを獲得したが、これはラリー史上最高齢の世界チャンピオンである。
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ディディエ・オリオールは1994年に36歳で、マーカス・グロンホルムは2000年に32歳で優勝した。セバスチャン・ローブの王位継承者として知られるセバスチャン・オジェでさえ、2013年にデビュータイトルを獲得したのは30歳の誕生日からわずか2か月後のことだった。彼の次に「新しい」チャンピオンになったのは、2019年のオィット・タナックで、彼もまた30歳を超えていた。
しかし最近では、ドライバーはもっと若い年齢でトップを目指すようになっている。問題は、コリン・マクレーが1995年に記録した27歳での最年少チャンピオンの記録を誰が破るかということだ。
昨年12月、スウェーデン出身のオリバー・ソルベルグは、ヒュンダイと2年間の契約を結び、i20 R5でWRCの1つ下のランクであるWRC2カテゴリーに参戦することを発表した。
それからわずか2か月後、19歳の彼は第2戦のアークティック・ラリー・フィンランドで、第一級のWRカーでのデビューを果たした。好タイムを連発し、総合7位(惜しくも6位には届かなかった)でフィニッシュした。
レースは理想的な状況とはとても言えなかった。レースへの参加要請が遅れた上に、コ・ドライバーであるアーロン・ジョンストンが、レッキ(本番前の試走)開始予定日の前日に新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たため、欠場することになってしまったのだ。
「ちょっと慌ただしかったですね!」と、オリバーは控えめに語る。
「でも、あのクルマに乗れて本当に嬉しかったし、ラリーの結果にも満足しています。もっとうまくできたとは思いますけど」
驚くべきは、オリバーがこれまでに経験したラリーはわずか42回に過ぎないということだ。駆け出しの若手というイメージがあるが、トップレベルでの経験はまだ浅いのだ。
自身の才能に気づいているオリバー
そうした経歴もあって、1歳年上でトヨタWRCのファクトリードライバーであり、有名な父親を持つカッレ・ロバンペラとよく比較されるが、それは妥当ではないとオリバーは考えている。
「いまのところ、僕らはお互いに競い合っているわけではありません」
そうは言うものの、「アークティック・ラリーのいくつかのステージでは、彼よりも速かったけどね」と付け加えずにはいられないオリバー。
謙虚さからくる否定なのかもしれないが、2003年に世界チャンピオンになった父ペターの血を受け継ぐオリバーにとって、ロバンペラは生来のライバルと言えるだろう。公平を期すために、オリバーはこうも言っている。
「アークティック・ラリーは、誰にとっても初めてのラリーでした。場所が違えば話も変わるかもしれませんが」
オリバーは5月20~23日にかけて行われる、ヒュンダイi20 R5でWRC2の名誉をかけて戦うことになる。彼はWRC2に戻ったことに気を落としているわけではない。
「R5がWRカーと同じではないのは事実です。だけど、どんなラリーカーでも運転するのは楽しいものです。WRカーから降りたドライバーもいて、WRC2での競争は本当にすごいものがあります」
ノルウェー人のアンドレアス・ミケルセンとマッズ・オストベルグがその好例で、元ファクトリードライバーとして新しいステージで戦っている。しかし、オリバーはファクトリードライバーでもある。ヒュンダイとの契約は、彼をファクトリーチームのトップレベルに引き上げることに重点を置いているのだ。早ければ来年にも。
「もちろん、それは希望であり、夢でもあります。でも、僕は現実的です。学ぶべきことがたくさんあることはわかっています。それもいますぐに」
パンドラの箱が大きく開いてしまった今、オリバーの中の何かが確実に変わった。以前の彼は、自分がWRカーをすぐに運転できるのではないかと考えていた。今はその答えがはっきりしたので、これまで以上に急いでいる。
ライバルは21歳のフィンランド人
トヨタに育てられたロバンペラは、今年のラリー・モンテカルロを終えた時点で選手権をリードするまでになっていた。ヒュンダイも自分たちのロバンペラを育てようとしているのである。
ロバンペラは静かで内向的な性格で、典型的なフィンランド人だ。一方、オリバーは父親の派手さを受け継いでいる。父親は、走行中のスバルの屋根に飛び乗って、ファンに手を振っていた。
「カッレ(・ロバンペラ)にとっても僕にとっても、父親の影響は非常に大きいと思います」
オリバーはそう認めているが、2人は距離を置いている。
「ラリーでは会って話をしますが、その合間には話すことはあまりありません。僕は自分の道を進むことだけに集中しているんです」
その道のりには、多くの学ぶべきことやテスト、そして厳しい自己評価が必要だ。
「ラリーが終わった後、学んだことをすべて書き出すのが好きです。イベントはすべて学ぶチャンスです。僕はより速く、より少ないミスで走らなければいけません」
オリバーの年齢では、ペターはまだ古いボルボを運転してノルウェーのクラブイベントに参加していた。それに比べてオリバーは、世界中でさまざまな最新式のマシンを運転する機会に恵まれている。そして、6月初旬に行われたラリー・イタリア・サルディニアでは、ヒュンダイのWRカーでの2回目の出場を果たしたばかりだ。
「すべてがあっという間でしたが、適応力を身につけることができました。次にハイブリッド・ラリーカーが導入されれば、誰にとっても新しいものになるので、そこにも自分のアドバンテージを見出すことができるかもしれません」
ラリーは長い間、若い精密技術者ではなく、経験豊富な剣闘士のような旧来の名人たちが支配するスポーツだった。しかし、今は違う。最新世代のマシンはまだ登場していないが、新世代のドライバーはすでにステージに上がっている。
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