「これはショックでしょうね」そんな風に私が同情していたのは月曜日、お昼に始まったユーロ大会用スペイン代表招集リスト発表の中継で、ルイス・エンリケ監督がセルヒオ・ラモスを呼ばないと知った時のことでした。いやあ、確かに1月にスペインスーパーカップ準決勝でヒザのケガをしてからの彼は散々で、手術などのせいもあって、今年になってからの出場はたったの5試合。3月のW杯予選でもあまりプレーしておらず、ようやくレアル・マドリーのベンチに戻った最終節もスタンドで応援しているだけだったんですけどね。

それを考えると、6月14日ユーログループリーグ1節のスウェーデン戦までに完調になれるか、ルイス・エンリケ監督が不安になるのもわからなくないんですが、ここまでW杯、ユーロに7大会連続出場。スペイン代表最多出場記録の180試合を更新して、エジプト代表のアハマド・ハサンが持つ世界記録の184試合に到達するのを楽しみにしていた当人にはまったく、想定外のことだったかと。

え、それより今回のリストにマドリーの選手が1人もいない方がビックリじゃないかって?そうですね、常連の右SBカルバハルも今季は負傷続きで、現在もリハビリ中。アセンシオ、イスコも落選し、ジダン監督の下で立派にラモス不在を補ったナチョもルイス・エンリケ監督のお眼鏡には叶わなかったんですが、そのラモスと同い年のヘスス・ナバス(セビージャ)も呼ばれず、お隣さんのマルコス・ジョレンテを右SB要員として、招集するのはちょっとムリがない?一方、ライバルバルサからはブスケツ、ジョルディ・アルバ、そして18才のペドリが招集されたんですが、このユーロでの最大派閥はロドリ、フェラン・トーレスエリックガルシア、最近、2重国籍を取得したフランス人ラポールの4人が招集されたマンチェスター・シティ

その彼らにはまだ今週土曜にCL決勝があって、久々に代表に戻ってきた左右のSBをこなすアスピリクエタのいるチェルシーと激突とか、その前の水曜にはEL決勝でジェラール・モレノとパウ・トーレスが代表入りしたビジャレアルとGKデ・ヘアのいるマンチェスター・ユナイテッドが対戦とか、いやもう、リーガが先週末に終わって、私もゆっくりできるかと思ったんですけどね。コロナ禍によるシーズンの中断があった昨季のせいで、9月に遅れて始まるなど、今季は特に押せ押せの過密日程が続いたんですが、どうやらまだまだ、ファンも休めないというか…いえ、ホント、実際に体を動かさないといけない選手たちにしてみたら、たまったもんじゃないと思うんですが…。

まあ、代表についてはまた後日、お話しするとして、今はシーズンの決着がついた土曜のリーガ最終節がどうだったか、お伝えしていくことにすると。順位の懸かったカードが行われる統一時間帯の午後6時、私はエスタディオアルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)にいたんですが、もちろん、この日も頼りはオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の2元中継。お昼のニュースでは、すでに大勢のアトレティコファンがバジャドリッド(マドリッドから北へ電車で1時間、車で3時間弱の町)のマジョール広場を闊歩している映像など届いていて、彼らはキックオフ前にはホセ・ソリージャに隣接した駐車場に移動して、外から応援をしていたんですけどね。何かこれ、去年、CL16強対決2ndレグでアトレティコファンが大挙した結果、コロナ感染が広がったとリバプール当局から告発された二の舞にならない?

ちなみにスコアの方も先に動いたのはホセ・ソリージャだったんですが、それは前半18分、CK攻撃をクリアされた流れからカウンターを喰らい、オスカル・プラノがバジャドリーの先制点を挙げたという、心臓が氷つくような知らせが届いたんですよ。でも大丈夫、その2分後には目の前でジェラール・モレノのアシストから、ジェレミー・ピノがゴールを決め、同様にマドリーもビジャレアルに1点リードされているって、どちらも勝たなきゃいけない気持ちが空回りしている?それでも前半の残り、マドリーはアセンシオやモドリッチベンゼマ、カセミロとシュートを撃っていたんですが、私を絶望的にしたのはアトレティコ番の実況。ええ、「選手たちは皆、神経質になっている」だの、「信じられないパスミスをしている」だの、典型的なダメダメ状態ばかりが伝わってきたため、いつマドリーがゴールを入れるか、胸をドキドキさせていたところ…。

もう、両方負ければ、やっぱり勝ち点差2のままだから、それでもいいかと思い始めていた後半10分、恐れていた通り、オドリオソワのクロスベンゼマヘッド。これがゴールに入ったため、目の前が真っ暗になったものでしたが、え?なかなか審判がセンターを指さないって、VAR(ビデオ審判)判定待ちですか?スタンドの控え選手たちも総立ちで見守る中、2分ぐらい経過した頃でしょうか。いきなり、イヤホンから「Gooool!!!」の絶叫が響いてきたのは。そう、それはハーフタイムに反省会を開いたアトレティコで、敵に囲まれながら、エリア前から、コレアがつま先で蹴ったシュートゴールになったって、そんな奇跡がまた起きるとは凄い。

ええ、当人も「監督はいつもボクに言うんだ。Cuando esté dentro del área no me piense, que le pegue de puntera/クアンドー・エステ・デントロ・デル・アレア・ノー・メ・ピエンセ、ケ・レ・ペゲ・デ・プンテーラ(エリア内にいる時は考えるな。つま先で蹴ってやれ)って」と話していたように、シメオネ監督のアドバイスの賜物だったようですけどね。これで同点としたアトレティコは追撃の手を緩めなかったらしく、22分には再びゴールゲット。今度はセルジ・グアルディオラバックパスを奪ったルイス・スアレスが敵エリア内に駆け込み、勝ち越しの2点目を入れてくれたとなれば、もうアトレティコファンエースを贈ってくれたバルサに足を向けて眠れない?

その直後、情勢の変化にジダン監督も選手交代でチームを刷新。実はその前から、ビニシウス、アセンシオをロドリゴとイスコに代えていたんですが、第2陣ではカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のミゲール、オドリオソラ、カセミロをマルセロ、ナチョ、マリアーノにして、5人の枠を一気に消化、3CB制で得点を目指すことにしたところ、いえ、時間はかかったものの、実ったことは実ったんですよ。いよいよ終盤、42分にはロドリゴのクロスベンゼマヘッドで決めて同点にすると、ロスタイム3分にはモドリッチがvolea(ボレア/ボレーシュート)で2点目をゲット。2-1の逆転勝利に成功しているんですから、これぞまさしくマドリーの矜恃を示したと言っていいかと。

まあ、それにはEL出場圏順位を争っていたレアルソシエダがオサスナに、ベティスも逆転して、セルタに勝っていたため、結果に関わらず、コンフェレンスリーグ(来季から始まるUEFA第3の大会)出場の7位のままというビジャレアルが、目標を水曜のEL決勝で勝利して、CL出場権獲得する方に移してくれたおかげもあったみたいですけどね。ただ、同様なことはバジャドリーにも起こっていて、あと1席の1部残留を争っていたエルチェが後半28分にはアスレティックから、2点目を奪取゛。ウエスカもバレンシアとずっと0-0だったため、一番不利だった彼らはたとえ、アトレティコに勝っても降格というのが濃厚に。おかげでお隣さんより1分程早く、1-2の勝利を決めたシメオネ監督のチームはマドリー戦の終了を待つことなく、優勝祝いに突入です!

いやあ、これは7年ぶりだからでしょうかね。「Dentro de poco vamos a ver qué va a pasar/デントロ・デ・ポコ・バモス・ア・ベル・ケ・バ・ア・パサール(すぐに何が起きるかはわかる)。私についてだけでなく、クラブが来季に向けてどうするかはね」と、今季最後の記者会見ジダン監督が8個の質問、全てに含まれていた自身の進退問題への問いをはぐらかした後も、ホセ・ソリージャでのお祝いは止まらず。それどころか、ピッチで騒ぐのに飽きた選手たちが駐車場に飛び出し、応援に来ていたアトレティコファンたちに揉みくちゃにされていたのには正直、開いた口が塞がりませんでしたが、もういいですよ。チームの半数はもうコロナ感染済みですし、クルトワからサモラ(リーガで一番失点率の低いGKに与えられる賞)を取り戻し、通算5度目としたオブラク(スロベニア)はユーロがないんですから。

当局の警告を無視して、同時進行でどんどん人々がネプトゥーノ(アトレティコが優勝を祝う広場)近辺に集まっている中、丁度、私が家に着いた時にはGOL(ゴル/スポーツ専門オープン放送)がバジャドリッドから、マドリッドに戻るアトレティコバスを追走していましたが、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でも大勢のファンがお出迎え。当然、ここでもお祝いして選手たちは帰宅したんですが、いやあ、きっと何が何でも第1キャプテンになったら、やりたかったんでしょうね。ネプトゥーノにいつまでも残っていたファンたちもほとんど警官隊に追い帰された午前3時過ぎ、コケが海神像にゲリラ登頂。工事用の機械式足場で上がって、像の首にアトレティコのbufanda(ブファンダ/マフラー)とbandera(バンデラ/旗)を巻き付けて行ったって、いや、これ、冗談じゃなくて、本当ですって。

そして翌日曜の夕方には、市内のアトーチャ駅とカスティージャ広場の間の道をファンキャラバンとなって、アトレティコグッズを示しながら、車で走るというイベントがあった後、いよいよワンダメトロポリターノで上はユニフォーム、下は私服のパンツという選手たちへのトロフィー贈呈式が開催。うーん、この日もスタジアム周辺には沢山、ファンが来ていたんですけどね。これも残念ながら、一般開放はされず、セレソ会長やマドリッドの州知事、市長らのスピーチがあっただけで、前夜はトロフィーレプリカを持ち上げて、自宅で祝っていたコケに本物が授与。一応、紙吹雪などもあって、綺麗ではあったんですが、後はスタンドにいた選手、スタッフの家族、親族らがピッチに下りて、懇親会兼セルフィー大会状態になっているんですから、一体、どうしたらいい?

ホント、世が世なら、2014年リーガ優勝時のようにアトレティコオープンデッキバスで市内をパレード、プエルタ・デ・ソル(マドリッドの中心にある広場)の市庁舎バルコニーからファンに挨拶したり、ネプトゥーノの仮設ステージでシメオネ監督が再び、「Si se cree y se trabaja, se puede/シー・セ・クレエ・イ・セ・トラバハ、セ・プエデ(信じて努力すれば、達成できる)」といった名言を残せたはずでしたが、パンデミック中では望むべくもなし。ただ、もう私がメトロに乗った後、チーム全員がスタジアム外縁のテラスに姿を現し、集まっていたファントロフィーを披露していたなんてこともあったんですが、ああまで人が密集している映像を見ると、やっぱり早く帰って正解だったと思うのはコロナ脳のせい?

それから、チーム全員とその家族、クラブ関係者らはワンダにあるレストラン、El Gran Escenario(エル・グラン・エセナリオ)で夕食会を開いて、ようやく2日がかりのお祝いを終了。嬉しいことに、アトレティコはシメオネ監督を始め、TVのインタビューで「Sí, sí, sí, seguro/シー、セグロ(はい、はい、はい、もちろんだよ)」と言っていたスアレス、ようやく念願のビッグタイトルを獲得できたオブラクなど、お隣さんと違って、来季の残留がはっきりしているメンバーが多いですからね。バジャドリー戦の後、今季は無限のフィジカル力でプレーに、ゴールにと大貢献したジョレンテでさえ、「Estamos fundidos/エスタモス・フンディードス(ボクらはクタクタだ)。今季はとっても詰まったシーズンで、ハードな試合も多かったからね。何とか、最後の試合まで最高の状態で辿りつこうとしていたけど、体力的にはもうガタがきていた」と言っていたぐらいですから、どの選手も今はゆっくり休んでほしいです。

そして前節、1部残留を達成し、同様の身分のグラナダと日曜に対戦したヘタフェは、久保建英選手はフル出場したものの、スコアレスドローで終幕。それでも順位が16位から、15位に上がっていたのは儲かりもんですが、近いうちにボルダラス監督の将来について、ニュースがあるのではないかと。更に月曜には2部の統合時間帯開催41節があったため、いやあ、私の訪れたブタルケでは、全治3週間程の肉離れを負った柴崎岳選手がスタンドで観戦していたんですけどね。マラガ相手に得点できず、そのまま0-0で分けるかと思ったところ、何と後半43分にロベル・イバニェスのシュートが決まり、1-0で勝利したレガネスは昇格プレーオフ出場を確定できることに。

同じ時間にカステジョンと戦っていたラージョも0-2で勝ち、マドリッド勢2部仲間で、すでに残留が確定しているレガネスのお隣さん、フエンラブラダがスポルティング・ヒホンから、スコアレスドローを勝ち取る援護射撃も受けられたため、プレーオフ圏内の6位に上昇。こちらはまだ最終節で変わる可能性があるんですが、だんだん、マドリッド勢同士のガチンコプレーオフ対決が濃厚になってきたようです。一番心配なのは2部では古株のアルコルコンが降格圏まで勝ち点1と、まだ残留が決まっていないことですが、マドリッド2部4チーム体制が昇格で3チームになるのはともかく、降格で減ってしまうのはいやですよね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファンワイン生ハムチーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している
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