TwitterやInstagramで自然×建築をテーマに作品を投稿するイラストレーターの埜々原さん。彼が描く作品は、大自然の中にぽつりとたたずむ建物や小さな町の一角を切り取ったような情景が多く、色鮮やかで柔らかいタッチが魅力。「萌え建築」と題し発信する作品はどんなものに影響を受け、どういう世界観で絵を描き続けているのか、作者の埜々原さんの頭の中を覗いてみた!

【写真】隅々まで凝視してしまう繊細な建築絵にファン急増!

■ものづくりを突き詰め、機械系エンジニアからイラストレーターに転身

工業系の高等専門学校を卒業し自動車会社に就職した埜々原さん。働いているなかで、自身の手を使ったものづくりがしたいと思い、趣味で風景画を描き始めたのだそう。その後、夜間の専門学校に通ってグラフィックデザインを学び、いくつかのゲーム会社で背景イラストレーターやアートディレクター、コンセプトアーティストとして技術を磨いていったという。

2019年から萌え建築を描き始めた埜々原さん。そのきっかけは「仕事絵の脇にざっくり描いた説明図のタッチが気に入り、この絵柄で自分の好きなように絵を描いたら楽しいのでは?と思って手癖に任せて建物を描いてみたんです」とのこと。

■様々な場所からインスピレーションを受けて作品を構想

自然と建築をテーマに描く作品は、実在の建築物や風景をモデルにしていたり、はたまたその場所の地形だけを参考にしたり、埜々原さんの頭のなかでゼロから生まれたものなど、そのどれもが魅力的で個性的な建物ばかり。

ドイツイギリスフランスなどのハーフティンバーという建築が好きで、とても影響を受けています。また、私が自然豊かな長野県で育ったということもあり、自然とともに共存している建築物になじみがあって、それも作品に表出していると思います」

もともとゲームの設定画や映画のアート集が好きだったという埜々原さんは作品の「風車小屋 峡谷の街」「峡谷のピッツェリア」のように、立体的に入り組んだ建築構造や、不思議な立地など、想像を掻き立てられるものに魅力を感じていたという。

SNS上で作品に添えられる「#萌え建築」というキーワードについても聞いてみると

「土地柄、気候、立地、周辺環境、道具、文化、生活習慣など、その建築に住むキャラクターがどういう生活を送っているんだろう…と想像がふくらむきっかけの要素にグッときます。例えば、井戸があればそこで水を汲んでいるんだろうな、とか、割った薪があればそれで煮炊きしているんだろうな、とか。その作品から感じられる生活感に惹きつけられるんです」という。

埜々原さん自身の好奇心や探究心、想像力のなかで生まれる”グッとくるポイント”を“萌え”というワードに置き換えているようだ。

また、その生活感をより想像できる、キャラクター入りの作品も多く描いている。

埜々原さんの作品は、その町や建物に住んでいる人々の生活情景がイメージできるようなストーリー性が、たった1枚の絵から感じられる。今後はSNSでの投稿のほか、連作で楽しめるような作品や自身の経験を活かしたゲーム制作も予定しているという。また、いつかは萌え建築で暮らす動物たちの絵本も描きたいと構想しているそう。これから発信される、新しい作品も待ち遠しい。

取材・文=鳥本明衣(glass)

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