Revival Tour "Spring Spring Spring" 2021.5.20 東京ガーデンシアター

5月20日東京ガーデンシアターで幕を閉じたUNISON SQUARE GARDENのツアー『Revival Tour "Spring Spring Spring”』。このツアーは2012年4月に行われたツアー『Spring Spring Spring』を再現するというコンセプトで行われたものだった。MCによると、「やれることをとにかくやれるだけやる」というバンドの基本姿勢と会場に行くことが難しい人も多くいる現状を鑑みた結果、思いついた「ちょうどいい面白いところ」としてのアイデアがリバイバルツアーだったとのこと。なお、今年8月にはリバイバルツアー第2弾が控えている。

さて、2012年4月といえば、3rdアルバム『Populus Populus』がリリースされてから6thシングル「流星のスコール」がリリースされるまでの時期だ。セットリストに入っている曲は必然的に当時存在していた曲のみ(一部リリース前の新曲も)。その中には今でもライブで親しまれている曲や、逆にすっかりご無沙汰な曲があるが、ハンバーグ!カレー!オムライス!といった具合にメイン料理を並べたような、こってりしたセットリストからは確かに若さを感じる。また、メドレーはこのツアーを最後に披露されていないこと、2012年当時は今の彼らだったらまずやらないであろう演出があったことから分かるように、おそらくライブのやり方、その土台となるバンドのセオリーが定まる前の時期だったのだろう。そんななか、今の彼らは9年前の自分たちがやろうとしたことをどう受け止め、どう調理するのか。演奏曲だけではなく曲順も固定されているということは、バンドからするとかなり制約が多いと思うが、はたしてどうなるのか。それがこのツアーならではの見どころだった。

活動初期から変わらないSE=イズミカワソラ「絵の具」をバックに斎藤宏介(Vo/Gt)、田淵智也(Ba)、鈴木貴雄(Dr)が登場。斎藤がスキャット的にイェーイと声を張り、田淵&鈴木がツアータイトルをコーラスする「overtureSpring Spring Spring~」は、『Spring Spring Spring』限定のオープニングナンバーだ。斎藤がロングトーンすると、バンドサウンド全体が勢いを増し、最高潮に達したところでストップ。そこから「おまたせっ!」(斎藤)と「フルカラープログラム」が始まっていく。「フルカラープログラム」はインディーズ期からある曲だけに、今では意味が伴い特別な存在になりつつある。景気づけのアッパーチューン的な立ち位置で演奏されるのは久々な気がするし、2曲目でいきなりというのはなかなか贅沢だ。赤い照明がスリルを引き立てる「プロトラクト・カウントダウン」では、間奏にあるドラムとベースそれぞれの見せ場、そのあとのギターソロで以って個々のパワーアップぶりを颯爽と見せる。軽快なギターリフから「23:25」に入ると、躍動的なビート、激しく動くベースラインを前に観客がその場で飛び跳ねた。

ベースソロ、からのギターソロギターソロの裏でも引き続きぐいぐいと攻めまくるベースライン。ギュイーンと鳴くギター。手数を増やして応戦するドラム……。ツアーコンセプトの影響か、バンドサウンドは多少の粗さも良しとしている感じがあり、まるでライブハウスで観ているかのようにバンドの熱が直線的に客席の方へ飛んでくる。それぞれから溢れるものを制御せず、ある種好き勝手にやっていようとも、三角形がなぜだか成立してしまうところが今のユニゾンの強みだろう。一方、「空の飛び方」のように、冒頭からコードをドーンと響かせる曲のでっかさ、説得力にも9年という年月は明確に表れている。

斎藤作の人気曲「スカースデイル」。2012年当時には新曲と紹介されていたが、その後10周年記念アルバムに収録されるなどユニゾンを象徴する曲として成長していった「誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと」。MC前ラストの「マスターボリューム」を終え、3人が締めの音をジャーンと鳴らすと、客席から万雷の拍手が。その間も鈴木は叩く手を止めず、斎藤もガシガシとギターを鳴らし、田淵も大きくアクションをしていた。

ツアーファイナルだったこの日。MCでは初めに斎藤が「静かに待っていてくれてありがとうございます」「自分で言うのもなんだけど、お客さんがとってもよかったです」と、“声を出しての鑑賞は禁止”をはじめとしたガイドラインを守った全9公演の来場者に感謝を伝えた。さらに斎藤は、「9年後に“リバイバルリバイバル”をやろうかなってくらい楽しいです」と充実感を言い表したほか、あと数年はやらないであろう曲ばかりということで「曲が終わるたびに空に還すような気持ちでやってます(笑)」とも。その後、9年前と同じく「ついてこれる人はついてきてちょうだい!」と告げてから件のメドレーが始まった。

計8曲+ドラムソロを一繋ぎにしたメドレーは、各曲の演奏箇所や曲間の繋ぎ方も2012年と一緒。「ライドオンタイム」を終えると「等身大の地球」のベースのスラップへ、「MR. アンディ」ラストのキメがいつの間にか「CAPACITY超える」イントロのキメに変わっている、「コーヒーカップシンドローム」終了後に鈴木が聞き覚えのあるリズムを叩いていると思いきや斎藤が「センチメンタルピリオド!」とタイトルコールするなど、このメドレーは基本的に曲間0秒で次に行く構成。それを今のユニゾンが演奏したらどうなるか。結論、超カッコいい。中だるみを一切許さない、ストイックゆえに超楽しい、ノンストップのダンスタイムが出来上がる。

テンポを揺らしたり展開に緩急をつけたりしながら魅せるドラムソロのあとのメドレーラスト曲=「ガリレオのショーケース」はライブ定番曲だが、鈴木がタイトルを叫んでも田淵がステージにおらず、2人しかいないのに始まっちゃったぞと思いきや上手から田淵がめちゃ走ってくるし、変拍子の間奏を弾きながら斎藤と田淵は全力で追いかけっこしているし、鈴木もスティックを回しながら大振りで叩いているし……と、あまりに自由。メドレーが終わってもMCや小休止は挟まず、後に4thアルバムに収録される「シャンデリア・ワルツ」の幸福感へと繋げた。ここで「クローバー」が演奏され、12曲目にしてバラード初登場。続く「シュプレヒコール~世界が終わる前に~」では、大きく呼吸してからの斎藤の歌い出しに思わず息を呑んだ。

その後、「オリオンをなぞる」、「場違いハミングバード」で本編を終えるも、アンコールに「アイラブニージュー」、「サンポサキマイライフ」、「kid,I like quartet」が待ち受けているこのセットリストはやはりどう考えてもハイカロリーだ。斎藤が「疲れた(笑)」とこぼすのもよく分かるが、とはいえ最後までバンドが息切れする瞬間はなし。むしろ新しい遊びを楽しむぐらいのテンションで最高潮を更新し続けていく姿に頼もしさを感じた。

それと同時に、曲の中で唄われていることやライブにおいて目指していた姿など、芯にあるもの自体は実は大きく変わっていないんじゃないかとも実感させられる。例えば「kid,I like quartet」のラスサビ、客席含む会場全体が明転になった時。<四つの感情が行き交って 次々に色を成して/この街が幸せになって そんぐらいのコントラストを奏でているんだよ>のフレーズと目に映る光景が重なった瞬間にそんなことを思った。リバイバルツアーという特殊なライブから読み取れたのは、9年前からうかがわせていた片鱗とその後の進化。人に歴史あり、バンドに歴史あり。ロックバンドという生き物の愛おしさを改めて噛み締めた日だった。


取材・文=蜂須賀ちなみ  撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)

UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)