2013年から2015年にかけて、カザフスタン北部にあるふたつの村で、同じような奇妙な症状に苦しむ人々が続出した。これは「スリーピー・ホロー」現象として知られている。
村人たちは、まるで"死んだように"眠りに落ち、それが数日から数週間も続くこともあった。自宅でベッドに寝ているときはもちろんのこと、歩いている間に起こることもあった。
実は寝ているのに、まるで意識があるかのように歩き回り、いびきをかき始め、目覚めても、眠っていた間のことはなにひとつ覚えていないという。
【村人たちが死んだように眠り落ちる「スリーピー・ホロウ」現象】
突如眠りについたまま数週間も起きなくなることもある「スリーピー・ホロウ」現象。夢遊病のように寝ている間に歩き回る人もいるが、ほとんどの人は寝ている間の記憶を失っている。
だが、もっと深刻な例もある。発作に襲われたり、奇妙な幻覚を見たりすることもあった。翼をもつ馬を見たり、ヘビが自分のベッドの上を這いまわっていたり、蛆虫が手にたかっていたり、母親の目が8つになっているのを見たなどといった体験をした子どもたちもいる。
Sleepy Hollow, Kazakhstan: A mysterious sleeping disease plagues inhabitants of a small village
当初原因は不明のまま。猫にまで症状が
ずっとこの謎は解明されなかった。村はソ連崩壊後に閉鎖されたウラン鉱山の近くにあるため、それが原因ではないかと疑われたが、村人の家を調べたところ、危険なレベルの放射線は検出されなかった。
アルコールの影響や、集団ヒステリーではないかと考える者もいたが、それ以上詳しく調べられることはなかった。
この症状はあらゆる年代層に現れていて、何度も発症する人や、目覚めたときの記憶障害や激しい頭痛を訴える人もいた。マルキという名の猫にまで影響が出た。
「マルキは、やたらニャーニャー鳴きながら、まるで気がふれたように自ら壁やキャビネットに体当たりを繰り返しました」2015年、飼い主のエレーナ・ザフォロンカヴァは語った。猫をベランダに出すと、今度はそこにいた犬に突進し始めたという。
「マルキは午前中に突然眠りに落ちると、人間のようにいびきをかき始めました。エサをちらつかせても、なんの反応も示しません。目覚めても、まるで無気力で、椅子の上に飛びあがることすらできませんでした」
猫が集団ヒステリーを起こしたり、ウォッカ中毒になる話は聞いたことがない。
脳の酸素不足が原因であることが判明
結局、この奇妙な症状は、脳の酸素不足が原因だったことが判明した。原因はウラン鉱山だとされたが、放射能汚染によるものではないという。「ウラン鉱山は閉鎖されましたが、そこで一酸化炭素の濃縮が発生することがあります」2015年7月、副首相のBerdibek Saparbaevは語った。
「そのため、空気中の酸素量が減ってしまったことが、村の人々の睡眠障害の本当の原因でしょう」
一酸化炭素は、酸素よりもかなり効率的にヘモグロビンと結びついて、カルボキシヘモグロビンを形成し、これによって脳への酸素供給量が大幅に減少する。 問題の原因を特定した政府は、ただちに住民の避難を開始した。
原因がはっきり特定されるまでに、村人たちの4分の1がこの症状を発症していたという。
References:The Strange Sickness Of "Sleepy Hollow" That Struck Villagers In Kazakhstan | IFLScience/ written by konohazuku / edited by parumo
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