全国約400軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は東京都足立区の「ひばり」です。

関西駄菓子屋フード「たこせん」を出す東京の店

大阪では定番の駄菓子屋フード、「たこせん」。ソースを塗ったえびせんべい(またはたこせんべい)でたこ焼きを挟んだものですが、基本的には関西ローカルで、関東ではあまり馴染みがありません。そんな「たこせん」を出してくれる昔ながらの駄菓子屋東京都足立区にあるということで、訪ねてみることにしました。

東武伊勢崎線竹ノ塚駅東口から南東方向に1.2kmほど。旧日光街道(都道103号線)沿いに、大きく「ひばり」と書かれ、ひと目でそれとわかる建物がありました。正面から見るとちょうど半分のところで左右に区切られていて、右側が小窓のある調理場、左側が駄菓子屋の入り口になっています。

複数の問屋で仕入れる豊富な品揃え

駄菓子は壁側の棚に敷き詰められ、品数がとても豊富。「選びがいがあったほうが楽しいでしょ?」と、1軒の問屋さんだけでは揃わないので、複数を回って仕入れているそうです。さて、件のたこせん、駄菓子選びもそこそこに早速注文すると、目の前で素晴らしい手際で作り上げてくれました。カウンターで作るのは通常の所作だそうなのですが、なんだかそういうパフォーマンスを見せていただいたような気分。ソースが濃くて味も良く、関東でこれを食せる喜びも相まって、感無量です!

ひばりは、元々は店主の父親が70年ほど前に創業した軽食店だったそうです。売り物は時期によってさまざまで、ラーメンやかき氷たい焼き等を販売していたとのこと。「たこせん」が誕生したのは、店主が引き継いだ昭和62年1987年)頃。関西から引っ越してきたという息子さんの友人が、「向こうの駄菓子屋ではこんなのを売ってたよ」と教えてくれたそうで、元々えびせんべいたこ焼きも販売していたことから、聞いたその日のうちに誕生。以降、看板メニューとして長きに渡り売れ続けているそうです。

三代にわたって引き継がれていく名前

「『ひばり』という店名は、『おてもやん』ていう民謡から来てるんですよ。ピーチクパーチクひばりの子、っていう歌詞なんだけど。私は3姉妹でみんなにぎやかだったので、父親が『ピーチクパーチクひばりの子はいつもうるせえなあ』って(笑)。それで、お店を始めるときに、人がたくさん集まってうるさいくらいの店になったらいいな、ということでひばりにしたと聞いてます。昔と比べると、最近は駄菓子の種類が減っちゃって揃えるのが大変。たくさん並べたいんですよ、自分が駄菓子が好きだから(笑)。減るだけじゃなくて、新しいのが出てきてくれるとありがたいね」

額に入って壁に飾られている、とても印象的な「レーシングチームひばり」のサインボード駄菓子屋でレーシングチームってどういうことだろう?と思い尋ねると、息子さんが作ったバイクチームのもので、「名前を同じにすれば店の宣伝になるだろ!」と提案してくれたんだそうです。引き継がれていく名前には家族の絆が、たませんの誕生には文化伝播の面白さが。ひばりはどこを切り取っても濃厚なエピソードがある、売り物以外でも惹きつけられてしまうお店でした。

ひばり
住所東京都足立区六月1-36-11
営業時間:10:00~18:00
定休日:月曜日

[All photos by Atsushi Miyanaga]

いながきの駄菓子屋探訪47東京都足立区ひばり7たこせん