いきなりステーキ」の社内報に、一瀬邦夫社長がステーキ肉のカット方法を解説した記事が掲載されたところ、客の希望よりも大きめに切ることを推奨しているようにも読めるとしてネットで話題になっている。

問題になっているのは、5月21日付のペッパーフード社内報(第289号)に掲載された「令和3年 社長のステーキ肉カットのノウハウ」という記事で、一瀬社長自ら、正確なグラム数を切り分けるためのコツを解説したものだ。社内報ではあるが、ネットでも読める。

このうち、客が希望する肉量を切り分ける「オーダーカット」の説明では、グラム調整のために肉を切り落とすとロスが生まれると指摘。次のように説明している。

ナイフを置いてから、お客様の目を見て『この位でいかがでしょうか?』とお伺いします。お客様から『どの位の重さになりますか?』と聞かれたら、『およそ300gです』と答えられますよね。お客様から『それでお願いします』と言われたら、カットマンは、『多少前後する事がございますが、よろしいでしょうか』と言いますと、お客様は了承して下さいます」

「カットして肉が、350gになってしまっても、従来のように限りなく300gになる様に切りおとさないでください。お客様のご希望の肉の上にナイフを置いたわけですから、お客様もご納得されていると思いたいです。この場合、従来ですと『すみません』と言って300g近くまで切り落としてお客様のご納得をしていただいていました。しかし、計量して350gになってしまったら、先ずはお客様の目を見て、間を取ります。次に『レアがオススメですが、焼き方をお伺いします』と言います」

「もし、お客様がもう少し減らして下さいと言った場合だけ、少し減らして差し上げます」

50gの切り間違いを例示し、客からの申し出がない限り切り落とさないように指導していることになる。この場合、客が払う料金は300g分ではなく350g分だ。

ネットでは「5gなら分かるが50gはわざとでは」「サービスじゃないのか」「客が言い出せない可能性に賭けているのか」といった趣旨のコメントもついている。

●会社側「肉には個体差があるので…」と困惑気味

取材に対して、いきなりステーキを運営するペッパーフードサービスは次のように回答した。

「肉には個体差があり、従業員の熟練度にもよるので、グラム数が多くなることはあります。当社としても課題だと感じていたため、より正確なグラム数に近づけるため、切り方のノウハウを掲載しました。

当然、わざと多めに切っているということはありません。ご飯をよそうとき、グラムで言われてもイメージしづらいように、見た目でお客様が食べたいと思われた量を提供するという趣旨のサービスです。都度都度、お客様の意思を確認し、納得いただける場面をつくるようにしています」

なお、法的な面では、藤吉修崇弁護士によると、「客がグラムによって金額が変わることを認識していれば、契約は成立する」とのこと。オーダーカットでは、重量を測った際に金額が表示されるため、問題ないと考えられそうだ。

●実際に「300g」を注文したら一発で「302g」

肉屋や総菜屋の量り売りでも、グラム数が多くなることは珍しくない。客側が細かく要求すれば、店の不利益や対応コスト増にもなりかねず、ほどほどのところで落ち着いているのが実際だろう。

ただ、店と客の信頼関係で成り立っている部分もあるだけに、「マニュアル」がネットにアップされたことで、不信感が生まれたということなのかもしれない。

なお、弁護士ドットコムニュースも、実際に店舗で「300g」を注文してみたが、一発で「302g」というほぼピッタリの肉が提供された。

いきステ社長直伝の肉カット術が物議「300gが350gになっても切り落とさないで」