いま京成が、成田空港アクセス特急スカイライナー」の車両を、別の目的で活用しています。その背景には、どんな理由があるのでしょうか。

青砥駅からワープ!

「この電車は特急『スカイライナー東急目黒線直通、西小山行きです。停車駅は空港第2ビル、青砥、青砥からワープして武蔵小杉、大岡山、終点の西小山です」

京成トラベルと京成電鉄が2021年5月29日(土)に開催した、「京成電車大集合!『宗吾車両基地見学ツアー』」での一場面です。

このツアーでは、東京都心と成田国際空港を結ぶ特急「スカイライナー」用のAE形電車を使った臨時団体列車に、京成上野駅から乗り込み、宗吾車両基地(千葉県酒々井町)へ直行。そこで3歳以上小学生以下の子どもを対象に、本物の「スカイライナー」車両の乗務員室に入って車内放送してみよう、というイベントが行われました。

そこで車内に響いたのが冒頭の、東京都品川区にある西小山駅行き特急「スカイライナー」の車内放送。現実には線路の幅が違うなど困難ですが、「ワープ」を駆使して、その子の最寄り駅であろう西小山駅まで行かせてしまう思いもよらぬ発想に、自分が“大人”になっていることを実感させられました。

この車内放送体験では、本物の「スカイライナー」車両で緊張したのか、上手く言えなかった小さな子も。空港アクセス特急の車内が、微笑ましい空間になっていました。

ちなみにこのツアーでは、「スカイライナー」車両で宗吾車両基地へ到着した際、洗車機を乗車したまま通過してから降車場所へ向かうというレア体験も用意されています。

いま「スカイライナー」車両が活用される理由

京成では2020年から、こうした「スカイライナー」車両を使ったイベントをしばしば開催。2021年4月には初めて千原線に乗り入れ、千葉県市原市内を客を乗せて走りました。

背景にはコロナ禍があります。

飛行機国際線に多数の欠航が出て、旅客も激減しているなか、成田空港アクセス特急である「スカイライナー」も、運転本数を半分近くまで減らさざるを得ない状況になってしまいました。

このため「スカイライナー」車両の運用に余裕が出ていることから、それを活用してイベントを開催。コロナ禍で厳しいなか少しでも収入を増やし、またファンサービスになればというわけです。

スカイライナー」車両は9編成ありますが、通常は20分間隔という高頻度で運転しており、車両をこうしたイベントで使う余裕はないとのこと。「スカイライナー」車両のイベントを楽しめるのは、コロナ禍だからできることでもあります。

なお、今回開催された「京成電車大集合!『宗吾車両基地見学ツアー』」は、特製ノベルティやビンゴ大会、京成上野駅までの帰りのきっぷなどがついて大人3500円、子ども2900円。多くのツアー申込みがあり、当選倍率およそ4.7倍の人気だったそうです。

京成トラベルと京成電鉄は「今後も多くのお客さまにお楽しみいただけるオリジナリティあふれる企画をご提供してまいります」としています。

宗吾車両基地に到着した「スカイライナー」車両(2021年5月29日、恵 知仁撮影)。