前回、「超低温保存」が必要なファイザー社製のmRNAワクチンについて、アクシデント事例とともに詳しく触れたところ、大きな反響をいただきました。

JBpressですべての写真や図表を見る

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65488


 そこで、前回にも少し触れた「ファイザー社以外のワクチン」の正体についても、踏み込んでみたいと思います。

 アストラゼネカ社製のワクチンは、血栓症を誘発しやすいと評判が悪いという話は出回るのですが、ファイザーと何が違うかという点については、どうも一般向けのマスコミでほとんど触れられていません。

 そこで今回は、アストラゼネカ・ワクチンの正体(チンパンジーのアデノウイルス・ベクターワクチン)を解説したいと思います。

 その前に今まで触れてきた「希釈」関連以外の「接種事故」に簡単に触れておきたいと思います。

顔のないワクチン注射:
「1日2回接種事故」のあり得なさ

 まず、以下の一覧を見てください。

5月13日 愛知県豊橋市 高齢者施設 80代女性:誤って1日2回接種

5月15日 新潟県妙高市 新井ふれあい会館 90代男性:誤って1日2回接種

5月16日 福岡県北九州市 門司体育館 高齢女性:誤って1日2回接種

5月21日 茨城県小美玉市 高齢者施設 75歳男性:ファイザーワクチンを1日2回接種

5月26日 神奈川県相模原市 北里大学病院 20歳 実習学生:誤って1日2回接種

 本稿を執筆する過程で、思わず「家畜の予防接種管理だって、もう少しきちんとしている!」と嘆息したところ、関連の問題に詳しい同僚から「いや、食肉の管理などは、それはそれは大変で・・・」とレクチャーされてしまいました。

 要するに、牛や豚の管理の方が、はるかにシステマティックだという、あり得ない2度接種事故の連発です。

 豊橋のケースでは、接種対象はたった10人しかいない高齢者施設で、開始途中から打ち方を変えて間違って2回打ったが、3日後の報道で「副反応などは見られない」。

 妙高のケースは、1度目の接種後、90代男性が誤って再び接種の列に並び、スタッフは予診票などのチェックを怠って2度目を打ってから、予診票にワクチン製造ナンバーのシールを貼ろうとして「!」2度目と気がついたというもの。「いまのところ健康に異常なし」。

 門司の高齢女性は、1度目の接種の後、本人が接種したことを忘れてしまったらしく、一度出た会場に再び入り、チェックシールをスタッフが見落として2度目の接種後気づく。「現状では健康に影響なし」。

 茨木のケースは高齢者施設での集団接種で、午前と午後、やはり忘れてしまったのか、2回接種会場を訪れてしまった。「健康被害は確認されていない」。

 奇々怪々なのは相模原北里大学病院で、実習中の女子学生・20歳のケースです。

 これ以外のケースは高齢者で、接種された本人の意識状態がやや怪しかったりする中での事故ですが、20歳でかつ実習中の学生が副反応の有無を見る1度目の接種から30分以内に2度目の接種を受けたという。

 そうであるなら、分からないまま2回注射を打たれたということは考えづらい。報道からはそれ以上の実態は読み取れませんでした。

 しかし、私がとても気になるのは茨城のケース以外、「ワクチン接種」と書いてあるばかりで、超低温保存が必要なファイザーの「mRNAワクチン」なのか、血栓ができると評判の悪いアストラゼネカのワクチンなのか、明記されていない点にあります。

 というのも、定められた量の2倍のワクチンを注射された場合、2つのワクチンで発生する反応には、違いがあると考えられるからです。

 米国では、ファイザー型と同様のモデルナ社製ワクチンを1日2回接種された91歳の男性が一時期危篤に陥ったという報道(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/03/12-525.php)がありました。

 アストラゼネカのワクチンは血栓症の副作用が報告されています。

 英国では延べ2390万人の接種者に対して309人が血栓症を発症、56人が亡くなっている。約50万分の1という確率ですが、絶対数として60人近くの犠牲者というのは、決して無視できる数字ではありません。

 これら2つのワクチンは何が違うのか?

 特に血栓ができやすい「アストラゼネカ」のワクチンとは、いったいどんなものなのでしょうか?

生涯で2度は打てない
アデノウイルス・ベクターワクチン

 ファイザーワクチンは超低温での保存や安静な輸送が必要な「こわれもの」でした。

 その理由は、コロナウイルスの中に封じ込められている、切れやすい1本鎖の「mRNA」が油の膜の中に封じ込められているだけなので、下手に扱うとすぐに切れてしまい、せっかくのコロナが死んでしまうからです。

 これは前回(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65488)もご説明した通りです。

 これに対して、アストラゼネカのワクチンは、そんな超低温での保存や輸送の必要がない。

 どうしてかというと、分子レベルで、もっと強固な入れ物にコロナの遺伝子が封じ込められているからです。

 その「遺伝子の入れ物」が「ベクター」と呼ばれる分子で、私たちが風邪や結膜炎などの症状を起こす病原体「アデノウイルス」を無害化し、DNAの一部をコロナの遺伝子と組み替えて作った「アデノウイルス・ベクターワクチン」という構造をしています。

 アストラゼネカのワクチンは熱や衝撃に強く、超低温貯蔵などの必要がありません。

 しかし、ここで困ったことが2つあるのです。

 第1は、私たちは日常的に鼻風邪などを引き、その免疫を持っているので、ヒト・アデノウイルスをベクターとしてコロナの遺伝子を送り込もうとしても、抗体が中和してしまい、ワクチンのウイルスに感染できないのです。

 そうなってしまうと、せっかくワクチンを打っても、効果がありません。

 私たちの免疫系は、最初からアデノウイルス・ベクターワクチンをはじき出してしまうので、ワクチン接種の効果はなく、コロナに対する抵抗力も付けることができない。

 そこでアストラゼネカが考えたのは、多くの人が免疫をもっていない、新手の「アデノウイルス」を利用することです。

 選ばれたのはチンパンジーに風邪を引き起こすアデノウイルスでした。こんなものの免疫は、私たち人間の大半が持っていません。

 何かと評判の悪いアストラゼネカのワクチンは、実はチンパンジーのアデノウイルスを無害化し、その中にコロナの遺伝子を仕組んだものなのです。

 これを人間に注射しても、チンパンジーの風邪など、私たちはひいたことがないから、免疫系はそれをはじくことができません。

 私たちの細胞は「チンパンジーの風邪に罹った」つもりで、実はコロナウイルスの「ツノツノ」を含む遺伝子の侵入を、許してしまうのです。

 しかし、そうやって一度「チンパンジーの鼻風邪」に罹患してしまうと、私たちの体の免疫系は賢明で記憶力が高いですから、二度と同じ手は食らわなくなります。

 つまり「アストラゼネカのワクチン」には「2回打つことができない」という、これまた原罪的な特徴があるのです。

 アストラゼネカのワクチンを「2回接種」したとする統計的な数字が上がっていますが、基礎医学の観点から指摘されるこうした難点が、どのように超克されている、あるいはされていると解釈されているのか。

 初回と2回目と違うワクチンを打った際の副作用発生事例なども報告され始めており、これについては別稿を準備したいと思います。

 ここでは悪名高いアストラゼネカ「血栓症」について、発生メカニズムを検討しておきましょう。

ワクチンが血栓を作るメカニズム

 アストラゼネカ型のワクチンによってコロナの遺伝子が私たちの体内に取り込まれると、私たち自身の細胞によって、単体では肺炎などの害をなさないはずの「コロナのツノ」が作られます。

 それら「ツノツノ」などを、私たちの免疫系が「異物!」と認識、抗体を製造することで、本当にコロナに罹患したとき、免疫の準備をしておこうというのが、アストラゼネカ・ワクチンの防疫戦略になる。

 ところがもう一つ、この「アデノウイルス・ワクチン」には特徴があるのです。

 それは、このワクチン、ないし「アデノウイルス」に罹患した細胞を、私たちの免疫系は「ダメになったもの」と認識して攻撃、バラバラにしてしまうという特徴があるのです。

 もし、私たちに、アデノウイルス性の結膜炎にかかって腫れてしまった細胞があったら、私たちの免疫はそれを新陳代謝的に排除して、新しい健康で正常な細胞に置き換えねばなりません。

 毀された部品は「膿」などの形をとる場合もあるでしょう。

 アデノウイルス・ベクターワクチンに感染した細胞は、一方で、アストラゼネカの戦略に沿って、コロナのツノツノを作り出そうと頑張ります。

 他方、私たちの免疫系は、その細胞自体がすでにアウトだと認識して、攻撃を始める。

 そうすると、感染細胞が作り出した「コロナのツノツノ」が細胞の表面に生えて、それを免疫系が認識して・・・という、本来のウイルス戦略シナリオが成立する前に、コロナのツノツノを構成するたんぱく質が、細胞膜表面に定着することができず、バラバラのまま血管中に放出されてしまうリスクが出てくる。

 ドイツの研究グループがまとめたアストラゼネカ「ワクチン血栓症」発生メカニズムの仮説は、このようなシナリオを説きます。

 つまり、ワクチンを接種した結果、私たちの体内で作り出された「コロナのツノツノ」タンパク質は、細胞表面に安定して抗体を作り出す本来の働きをする以上に、ヒト体細胞表面への移植に成功しない。

 いわば田植えされるはずの苗の状態のまま、コロナのツノツノたんぱく質が血管中に流れ出し、それが血栓を作り出す血中の異物タンパク質の核となって、深刻な血管病を引き超すのではないか、というのです。

 いまだ完全に確証が取れているわけではないようですが、アストラゼネカのワクチンが「チンパンジー・アデノウイルス」ベクターワクチンとして作られており、ベクターワクチンの不可避的な特徴によって感染細胞が私たちの免疫によって壊され、異物タンパク質が血管中で血栓を作り出すらしい。

 これがおおまかなメカニズムであるのは、まず間違いがなさそうです。

 こうなると心配なのは、いまだチンパンジーのアデノウイルスに免疫を持っていない状態で、もし1日に2回アストラゼネカのワクチンを誤って大量注射されてしまった人が、高コレステロールの症状など、血管障害を引き起こしやすい状態であった場合のリスクです。

 ただでさえ、血管の中は悪玉コレステロールで「血液ドロドロ」の状態になっている。そこに、通常量の2倍、チンパンジーのアデノウイルス・ベクターワクチンが注入され、必然的にコロナの「ツノツノたんぱく質」のかけらなどが、血管内に放出されてしまうなら・・・。

 悪玉コレステロールのアブラと、コロナのツノツノたんぱく質、壊れた細胞のかけらその他もろもろをまぜこぜにした「3兄弟」が、ドロドロ血液の中で「だんご」を作れば、脳血栓でも心筋梗塞でも狭心症でも、どのような血管の目詰まりが起きても、何ら不思議ではありません。

「ワクチン」は「らくちん」ではない

 報道は「オリンピック・アスリートにもワクチン接種」あるいは「皇族にも後続」といった情報を伝えます。

 しかし、一括りに「コロナ・ワクチン」といっても、タイプが様々にあり、各々の特徴によって忌避すべき基礎疾患などにも違いがあります。

 また、成長期の子供や、妊婦への影響なども、いまだ全く未知数のままです。

 ワクチン接種を、コロナウイルス撃退の最終兵器と断じる根拠は、まだ一切ありませんし、「ワクチン、らくちん」といったイメージPRで、1日あたりの接種数や県ごとの接種率上昇を競うような「顔のない防疫」は、非常に危険な治験状況を引き起こしかねません。

 希釈事故では「ワクチンのバイアル瓶に顔がない」程度でしたが、2重接種事故は、それを注射される本来は保護されてしかるべき「人間に顔がなかった」という、接種体制の本質的欠陥を露呈させている。

 威勢の良い掛け声だけでは、このような疾病を克服することはできません。

 接種スピードを上げるというのであれば、改めて全面的に、ワクチン接種のシステムを見返す、安全性の総点検、事故再発防止の本質的な対策が必須不可欠と言わねばならないでしょう。

(つづく)

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  各地で事故多発、ファイザー製ワクチンの正体

[関連記事]

こうすれば激減する、ワクチン接種事故予防法

日本中で続発する「生理食塩水」接種のモラルハザード

アストラゼネカのワクチンは、チンパンジーのアデノウイルス・ベクターワクチン