現在放送中のABEMAオリジナル恋愛ドラマ『ブラックシンデレラ』に鈴木愛理が出演。本作は、自分に自信が持てないド平凡な女子高生が、外見主義に立ち向かいながら夢や恋に奮闘する“逆襲ラブストーリー”だ。

(参考:【撮り下ろし写真】鈴木愛理

 ソロアーティストとして、モデル、女優もこなしながら多忙な日々を送る鈴木は、『ブラックシンデレラ』で主人公が憧れるミスコングランプリのルイを演じた。歌手・女優・モデルとさまざまな立場で“憧れられる対象”になっている鈴木が、キラキラした世界を一歩飛び出し「自分らしく」生きるルイについて演じる上での心境を語ってくれた。

ーー2017年に°C-uteとしてのグループ活動を終え、2018年からソロでの活動になりましたが、改めて一人で活動してみていかがですか。

鈴木:今年の6月で4年目に入るのですが、思い返すとあっという間でした。ソロになってからは、音楽活動はもちろん今回みたいに女優のお仕事やモデルのお仕事もコンスタントにやらせてもらって、気づいたら27歳になっていました。

ーー今回『ブラックシンデレラ』に出演が決まったときの印象は?

鈴木:私はもともと、 ABEMAの作品をすごくたくさん観ていたので、ABEMAの世界の中に出演できることがまず嬉しかったです。しかも今年初めての仕事がこの『ブラックシンデレラ』のオーディションだったので、2021年の思い出としては濃い作品の一つになっているんじゃないかと思います。

ーーちなみにABEMAで観ていたのはどんな作品ですか?莉子さんが出演していた『月とオオカミちゃんには騙されない』もそうですよね。

鈴木:たくさん観ていますよ!『恋愛ドラマな恋がしたい』も観ていますし、『オオカミ』シリーズもほとんど観ています。『僕だけが17歳の世界で』や海外の恋愛リアリティーショーも観ていますね。あと『さよならプロポーズ』と、最近始まった『ドラ恋』も観ています!人の恋愛を見て、「キャー」って言っています(笑)。莉子ちゃんの出ていた『オオカミ』も、もちろん観ていましたよ!「ソタリコ尊い!」って、自分のTwitterにツイートしていたので共演を知った時はびっくりしちゃいました。そんな子の憧れの存在に配役されるなんて、ただただ嬉しかったです。

ーー莉子さんの出演した『月とオオカミちゃんには騙されない』は名作でしたよね。今回そんなABEMA作品でお芝居に挑戦してみた感触はいかがですか?ルイを演じてみて工夫したり、気にかけてお芝居した部分を教えてください。

鈴木:鈴木愛理自身とルイは、重なるところがすごくあるんです。なので役作りというよりかは自分のままで演じることができる役柄でした。ポジティブなところや、一度はキラキラした世界に出たけれども、疲れちゃって道を変えた背景とか。私はアイドルとしてグループ活動を解散したあと、水面下で活動しているときに「人に忘れられちゃうんじゃないか」というドキドキを味わった半年間があって。それを乗り越えて今があるという点では、ルイちゃんと似ているなと思います。それを経てルイちゃんは年下の子にアドバイスをするけれど、私もそれを経たことで自分の人間味を取り戻したという感覚がありました。弟がいるというところも同じで、そこもすごく共感できましたね。

ーールイは過去に辛い思いを経験した役だと思います。ちなみに鈴木さんはこれまでのキャリアで、同じように“大きいことを成し遂げてからその反響に苦しんだ事”はありますか。

鈴木:小学校2年生からこの世界にいて、最初は歌うことがただただ好きで芸能界に入りました。でも好きなことを仕事にしていて、いいこともあればそれが人に評価されて辛いと感じたことも。大好きな「歌」だからこそ嫌いになりたくなくて、辞めたいと思ったこともありましたね。そういう辛さはありましたが、私はそれを乗り越えたので。ルイちゃんも「嫌だなあ」という思いよりかは、たぶん輝き続けることの大変さに疲れちゃったんだと思います。高校生からずっと輝き続けるって大変なことだと思うので。私とは環境が違いますが、そういう独特な辛さというのは理解できました。あと、ネガティブを知っているからこそポジティブになれる気持ちも共感できたので、ルイちゃんとは共鳴する部分もありましたね。

ーー乗り越えた先にあるポジティブって、ただ明るいだけとはまた少し違いますもんね。

鈴木:その話もちょうど台本を読んでいる時に、話題に上がったところで。底抜けポジティブの人と、1回ネガティブを経験した人とでは“ポジティブ感”が違うという。私も感じていた部分なので、こういう役を頂けてすごく嬉しかったです。自分らしく演じられる場所になりました。

ーー『ブラックシンデレラ』ではルッキズムに関するメッセージも描かれています。アイドルとしてのキャリアの中で、おそらく容姿と向き合うということは切っても切り離せなかったのではないかと思いますが、ご自身のキャリアの中で感じたことがあれば教えてください。

鈴木:私が所属していたハロプロハロー!プロジェクト)は、私の時代は中学生以上の子は自分でメイクする、というルールがありました。高校生を過ぎたあたりからMVなどの作品では「自分はこういう風にありたい」という表現ができるようになったんです。メイクを変えたら、「最近すごい可愛くなったよね」と言ってくださるファンの方もいて、反響が手に取るようにわかったり、逆に髪型を変えたら「前の方が良かった」と言われることもありました。気にはしますけど、それを気にすることでいいこともあると思うんです。自分のことを客観視してくれている人たちの意見をちゃんと聞けるようになるというのはすごくいいことだと思うので、私的には感謝していますね。

 でも気にしすぎて悩んでしまう子もいるので、そこのバランスは自分と要相談かなと思います。最近やっと私も、ビューティー誌やファッション誌で自分じゃない人にメイクしてもらった時の顔に慣れてきました。アイドル時代は自分のことを自己プロデュースしてパッケージ化していたんですよ。最初は色々言われるのが怖くてなかなか変えられませんでしたが、自分を更新していくことや自分らしくいることも心の健康だと思えたので、今は“やりたいことをやっている自分”をやっと認められるようになりました。この歳になってやっとそういう解除キーが1個外せたくらい、自分と向き合うことは難しいですよね。見た目のコンプレックスとの戦いはいくつになってもついてくるものですが、メイクやファッションはいい意味で自己満足だと思っています。自分がこれでいいと感じた姿で生きていくのが、一番心が健康で幸福なんじゃないかな。人が何と言おうと、自分が自分を一番わかってあげるのがいいと思っています。

ーー素敵なメッセージをありがとうございます。鈴木さんがどんどん変化していることには気付いていたのですが、まさか自分発信で変えていっているとは思いもよらず、とても驚きました。

鈴木:逆に、それが今は役作りに対して使える素材になっていて。今回の『ブラックシンデレラ』も高校生の役を演じる時は、私が高校生のアイドルをやっていた時の雰囲気に戻したんですよ。髪を暗くして、前髪をかなり重くして。大人の役の時は前髪を変えて雰囲気を変化させました。髪型ひとつとっても、「役作りで使えるじゃん」というポジティブマインドに切り替えられるようになりましたね。

ーーもし愛波(『ブラックシンデレラ』で莉子が演じる主人公)が実際に後輩として側にいたら、どんなふうに声をかけてあげたいですか。お話を聞いていて、鈴木さんにしかできない手の差し伸べ方があるんじゃないかと感じました。

鈴木:私は傷ついている時に「頑張って」っていう言葉をかけられるのが一番きついんですよ。「もう頑張ってるよ」と思ってしまって。そういうポジティブの捉え違いみたいなことはしないであげたいです。変に心配したり、応援したりで傷つけてしまわないように、その子のありのままの状態を愛してあげることがすごい大事かなと思いますね。考えすぎずに中身を見てあげることが大切なのかなと。例えば顔の傷のことも、相談されたら向き合いますが、いちいち「大丈夫?」「頑張ってね」と伝えることって「今日むくんでない?」「ちょっと太った?」と同じくらいデリカシーのないことだと思うんですよね。私なら「今日も楽しくやっていこうぜ」みたいな接し方で手を差し伸べます。莉子ちゃんとも仲良くなったので、ドラマを通して、年下の相談を聞くのもいいなと感じました。

ーー『ブラックシンデレラ』を通して視聴者の方にどんなことを伝えていきたいですか。

鈴木:『ブラックシンデレラ』は一見、キュンキュンしてドキドキするラブストーリーと思う人が多いんじゃないでしょうか。それはもちろん感じて欲しいのですが、ずっと観ているとその奥の奥の奥にある「自分らしさって何だろう」とか、「この人がキラキラしている理由ってなんだろう」というところに着地するようなドラマなんです。このドラマを通して「自分らしくいなきゃね」という自信を持たせてくれるところにたどり着いてくれる若者が増えたらいいなと思います。若いうちはどうしても集団の中にいて、周りに比べる子がたくさんいるので、気になることは大人より多いはずです。「比べなくていいんだな」と気づける人が一人でも増えることを願っています。(Nana Numoto)

写真=池村隆司