現在放送中のTBS系連続ドラマ「着飾る恋には理由があって」(毎週火曜 後10:00)に出演している俳優・向井理さん。同ドラマは、着飾ることで自分の居場所を得ていた主人公・真柴くるみ川口春奈さん)が、ルームシェアの同居人・藤野駿(横浜流星さん)と一つ屋根の下で暮らしながら、恋をしたり、友情を深めたりする中で自分らしく生きていく姿を描いたストーリーです。

 同作で、真柴が勤めるインテリアメーカーの創業者・葉山祥吾を演じ、その振る舞いや存在感が反響を呼んでいる向井さん。これまでの活躍を振り返り、俳優としての特徴や魅力について、作家・芸能評論家の宝泉薫さんに聞きました。

自分を生かせる役柄を理解

 デビュー前にバーテンダーとして勤務していた向井さんは2006年に芸能界入りし、ドラマ「のだめカンタービレ」(フジテレビ系)や「バンビ~ノ!」(日本テレビ系)、「ハチミツとクローバー」(フジテレビ系)などに出演。2008年放送のドラマ「ママさんバレーでつかまえて」(NHK総合)では、黒木瞳さん演じる主人公の夫役を務めたことで注目を集めました。

 2009年放送の「傍聴マニア09~裁判長!ここは懲役4年でどうすか~」(日本テレビ系)で連ドラ初主演を飾り、翌年、出演した朝ドラゲゲゲの女房」(2010年前期)でヒロインの夫役を務め、作品のヒットとともに大ブレーク。以降も大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」(NHK総合)や「S -最後の警官-」(TBS系)、映画「パラダイス・キス」「劇場版 SPEC」などの話題作に出演し、俳優としてのキャリアを重ねていきました。

 最近では2019年放送のドラマ「わたし、定時で帰ります。」(TBS系)や、現在放送中の「着飾る恋には理由があって」のように、主人公の上司という役どころでの起用が続く向井さん。宝泉さんは「適任とも言えるような、いい役柄に巡り合うことができた」と話します。

「デビュー前に芸能以外の仕事経験があるからなのか、会社員役を演じる姿がとてもしっくりきます。特に『わたし、定時で帰ります。』での、上司と部下の板挟みになるような役どころの演技が非常にうまく、いい役柄に巡り合えて、一皮むけた印象です」(宝泉さん)

「『着飾る恋には理由があって』ではストーリー上、物語の序盤から中盤にかけて、向井さんの登場が少なかったのですが、終盤になり、再び登場したことで作品も盛り上がってきました。ある意味“特別出演”のような立ち位置ですが、向井さんが登場すると画面が華やぎますし、元社長という役柄も抜群に似合っています」

 向井さんについて、宝泉さんは自分の役割をしっかり認識できている俳優と評します。

「キャリアの浅い頃からそうでしたが、おどおどした感じが全くなく、振る舞いが堂々としていて、こだわりや自分の生き方をしっかりと持っている印象です。自分の役割や居場所をしっかり認識し、ブレーク以降も周りに流されることなく、自分自身のプランニングができているように感じます」

「『ゲゲゲの女房』がハマったのはこの点が大きく、一つのことにこだわって、自分を曲げない向井さんの姿がうまくマッチしたのではないでしょうか。カメレオン俳優と言われるような、どんな役柄も演じ分けるタイプではなく、自分を生かせる役柄を理解し、無理に変身しないことが向井さんの武器であり特徴です」

助演でこそ持ち味が発揮

 宝泉さんは、近年、助演での出演が増えている点についても言及しています。

「元々、主演にこだわるような俳優ではなく、むしろ、助演でこそ持ち味が発揮できるのではないでしょうか。前に出て欲張るようなタイプではないので、それよりも自分の役割や生かし方を一番に考えているはずです」

「持ち前のルックスと声、優しくて爽やかな雰囲気を持つ向井さんは主演でなくても、十分映える俳優です。それだけの力を持っているのに、エースや4番を目指すような考えではないという点も魅力の一つでしょう」

 宝泉さんは今後の向井さんについても期待を寄せています。

「主人公の上司という役どころがやはり、抜群に似合うので、しばらくはこのポジションでの活躍が続くのではないでしょうか。部下を優しく包み込むような上司役で、他の俳優で言えば、椎名桔平さんや藤木直人さんのようなイメージが近いのかもしれません」

「見てみたい役どころで言えば、堂々たる王様っぷりな振る舞いのポジションも期待しています。すでに出演経験がありますが、時代劇での武将役も似合いますし、持ち前のオーラや気品を前面に出した役柄も見てみたいものです」

オトナンサー編集部

向井理さん(2015年1月、時事)