新型コロナの影響により、国内航空会社で増える旅客機の早期退役。この退役フェリーフライトにも変化が生じています。これまで極北アンカレッジ経由だったのが、ハワイホノルル経由になっているのです。

通関手続きのため寄港していたアンカレッジ

国内航空会社でその役割を終えた旅客機は、海外へフェリーフライト(回航)され、そこで駐機されることが一般的です。この退役にともなうフェリーフライトが、国内で2020年から増加の一途を辿っています。

理由は新型コロナウイルス感染拡大。当初の予定より早く退役させることで、機材計画の見直しを図り、固定費を削減するためです。

国内航空会社におけるコロナ禍での退役は、大型機に分類されるボーイング777などが多く見られるのが特徴です。そのなかには通常20年から25年使うことが多い旅客機の市場で、異例ともいえる機齢15年程度で役目を終えた機もありました。

そして、退役フェリーフライトの方法自体も、これまでの通例より大きく変わった点が見られます。

フェリーフライト後の機体の安置先で多いのは、「飛行機の墓場」とも呼ばれるアメリカのモハーヴェ空港やビクタービル空港(いずれもカリフォルニア州)です。これまで多くの機体は、通関手続きのため、アラスカのアンカレッジなどを経由して、”眠りの地”へ向かっていました。

この経由地に新たに出現したのが、ハワイホノルルです。保有機の早期退役を進めるANA(全日空)によると、「コスト面でもメリットがあり2021年3月より経由地に加えた」としています。ホノルル経由とすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

色々メリットある「ホノルル経由で眠りの地へ」

ANAによると、ホノルルとアンカレッジ、ふたつの経由地では、次のような違いがあるといいます。

「(2地点を比べると)燃料価格とグランドハンドリング(航空機の地上支援)費用の違いがあり、現時点ではいずれもホノルルの方が安価です。それに加えて冬場のアンカレッジは防除氷の対応などが必要となった場合には追加料金が発生します」(ANA)

そして、フェリーフライトでホノルルを使うメリットは、コストの面だけではありません。「アンカレッジの冬期運航を回避する目的」もあるとも。「降雪や積雪に伴う運航制限によりスムーズな空輸実施に影響を及ぼす可能性があることから、冬場のアンカレッジは避けたいと考えているため、可能であればホノルルを経由地としたいと考えています。ただし、機材条件により必ずしもホノルルを経由できるとは限らないため、状況に応じて最適な判断をしています」(ANA)

現地の様子は「2空港も通関業務などの点は大きな違いはありません」といいます。ただ「ホノルルは定期便が運航している『オンライン空港』いうこともあり、現地空港所の協力もあるため、対応しやすい」ともしています。

なお、2021年現在のANAでは、最終目的地で通関できない場合など経由が必要なケースでは、アンカレッジとホノルルの2空港を経由地としています。最終目的地にて通関が可能、かつ機体条件としても直行可能な場合は、経由せずに直行させることを最優先に検討するとのことです。

ちなみに2021年4月から5月にANAで実施された退役フェリーフライトは、ボーイング777-300ERの「JA731A」「JA777A」「JA781A」「JA778A」「JA736A」の5機がホノルル経由、ボーイング737-700の「JA04AN」「JA02AN」がアンカレッジ経由となっています。

ANAの777-300ER「JA736A」。ホノルル経由でモハーヴェ空港へ向かった(乗りものニュース編集部撮影)。