抗議FAX(写真提供:伊根町)

厚生労働省は1日から、米ファイザー製のワクチンの接種が可能な年齢を12歳以上に拡大。12~15歳も無料で接種が受けられるようになった。これを受けて京都府伊根町が一部開始したことに対して、抗議電話が殺到。しらべぇ取材班は、町から詳しく話を聞いた。


■理解促進活動中

人口2,000人余りの伊根町では65歳以上のおよそ8割と基礎疾患がある人が1回目の接種を終えた。また、2回目の接種や追加のワクチンの接種のめども立ったことから、64歳以下の一般接種も本格的に開始。

伊根町は、厚生労働省の指針を受けて、現在12〜15歳の町民に対して新型コロナワクチンのメリット、デメリットについて小中学校の校医などから、情報発信を積極的に行っており、理解促進を図っている。


関連記事:埼玉の町長や職員100人ワクチン優先接種で物議 厚生労働省に見解を聞いた

■保護者は「早く打たせてほしい」

そんな中、町には医療従事者などの詳しい医学知識を持った保護者から「厚労省から年齢拡大の指示があったのだから、早く打たせてほしい」と強い意向が寄せられた。

そのため、6日にその子供たちにのみ接種を開始。このことが一部メディアで一斉に集団接種が始まったかのように報じられてしまった。


■抗議が計214件

すると町には7日朝から抗議が殺到し、ワクチン接種の予約や問い合わせのために設けたコールセンターを30分で閉鎖する事態となった。また、これ以降「殺すぞ」「殺人に加担するのですか」などの電話やメール、FAXが8日現在計214件寄せられた。

伊根町役場(写真提供:伊根町)

町の担当者は、「あくまで接種するのは希望者のみで、保護者の同意を得ずして接種することなどあり得ない」と憤る。強迫行為を受けた職員が疲弊してしまっている様子も伺えるという。「抗議には断固として屈しない」と担当者は語った。

■抗議に屈してはいけない

SNS上には、この抗議の首謀者の一人とみられる人物が「抗議の電話をFacebookの仲間でしてまして、3回線の電話がパンクしたようです。私も朝一でしてます」などと投稿し、後に削除。

これに対しては、「自治体はこれらの抗議に屈してはいけない。屈すればますます勢いづく」といった声があがっている。


■町は被害届を検討中

刑法には「威力を用いて人の業務を妨害したものも、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」とある。威力とは被害者の自由意思を制圧するような行為を指し、迷惑電話や脅迫的なメール、SNSでの投稿も「威力」にあたり得る。

町は京都府警にこの件の相談を行っており、被害届を出すことも検討中。吉本秀樹町長は「業務の妨害になる抗議の電話などはやめてほしい」と強く訴えている。

・合わせて読みたい→高須院長、コロナワクチン打ち手不足の解消に特例法求める 「獣医でも消防士でも鍼灸師でも」

(取材・文/しらべぇ編集部・おのっち

小中学生にワクチン接種の町に「殺人に加担するのか」など抗議214件 町は「断固屈しない」