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カンボジアで多くの地雷発見に貢献したアフリカオニネズミが、5年間のキャリアを終えて今月に引退することが発表された。人間が金属探知機で探すよりも圧倒的に速く、かつ安全に捜索でき、これまでにテニスコート800面以上のエリアでチェックを行い、地元住民に安全な土地を提供してきた。昨年にはその功績を称え、慈善団体より小さな金メダルが贈られている。『TODAY』などが伝えた。

タンザニアを拠点に地雷探知動物のトレーニングを行う団体「アポポ(APOPO)」は今月3日、地雷捜索で5年のキャリアを持つアフリカオニネズミ(African giant pouched rat)の“マガワ(Magawa)”が今月で引退することを発表した。

2013年11月、マガワは「ソコイネ農業大学(Sokoine University of Agriculture)」で誕生した。アポポは同大学と協力して地雷を探知するネズミを育てており、アポポで活躍するネズミたちは全てここで生まれ、トレーニングを受けるという。

他のネズミと同様に地雷探知の訓練を受けたマガワは、2016年にカンボジアのシェムリアップに移動し、地雷探知ネズミとしてのキャリアを築き始めた。

カンボジア1970年代以降、400~600万個の地雷が埋設されたと言われており、約300万個は未だ発見に至っていないという。隠れるようにして残った地雷により、多くの犠牲者が出ている。

地雷は人の重さに反応して起動するが、マガワのようにネズミほどの軽い体重では起動することがないため、地雷の探知には適任という。マガワは地雷に用いられる特殊な薬品のニオイを検知すると、ハンドラーに合図をして地雷の存在を伝えるそうだ。

マガワは自身の能力を遺憾なく発揮すると、71個の地雷と38個の不発弾を検知し、失われていたかもしれない多くの人命を救ってきた。マガワがチェックしたエリアは22万5千平方メートルと公表されており、これはテニスコート約865面分の広さに相当する。

テニスコート1面分の広さを人間が金属探知機で捜索すると1~4日はかかってしまうが、マガワは同じ広さを約20分で完了すると言い、約200倍のスピードで行われる効率はけた違いである。

アポポでは「地元に住む人々が、地雷によって手足を失くすリスクに怯えることなく仕事や学校に行き、遊ぶことができるような環境をマガワは作り出したのです」と、その働きぶりを評している。

さらに「マガワは健康そのものですが、引退する年齢に達して動きが徐々に遅くなってきたので、その時が来たのです」と引退の理由について明かした。

マガワの功績には、イギリスにて低コストで動物医療を提供する慈善団体「PDSA(People’s Dispensary for Sick Animals)」も注目した。そして昨年9月、軍用でない一般の動物として多大な貢献を果たした動物に贈られる賞をマガワに贈呈した。

PDSAの77年にわたる動物たちへの表彰の歴史では犬や猫、馬、ハトなどが受賞してきたが、このような賞をネズミに贈るのは初めてのことだった。贈呈するメダルをマガワの首にかけられるよう、専用の小さな金メダルが用意されたという。

マガワのハンドラーであるマレンさん(Malen)は「マガワの働きは誰にも負けないほどで、一緒に働くことができて誇りに思います。とても小さいですが、多くの人の命を救い、コストをかけずに安全な土地を私たちに返してくれました。マガワが引退してしまったら、本当に寂しくなりますね」とコメントしている。

画像は『APOPO 2021年6月3日付「PDSA GOLD MEDALIST MAGAWA RETIRING」(APOPO)(Simon Guillemin)(PDSA)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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