北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)で、安全員(警察官)が殺害される事件が起きた。

現地のデイリーNK内部情報筋の伝えたところによると、事件が起きたのは咸鏡北道の明川(ミョンチョン)郡でのこと。万戸里(マノリ)担当の40代のハン安全員が先月23日午後7時ごろ、首と胸など複数箇所を凶器で刺され、倒れていたところを住民により発見された。出血多量で既に事切れており、遺体のそばには刃渡り20センチの包丁が放置されていた。

通報を受け、明川郡安全部(警察署)が現場に急行、鑑識を行い、血の付いた包丁を証拠として確保したものの、それ以外の容疑者につながる遺留物などは発見できなかった。

動機は、怨恨の可能性が高いと考えられている。安全員は取り締まりの権限を振りかざし、庶民からワイロを搾り取り、要求に応じなければ様々な言いがかりをつけて逮捕し、刑務所送りにすることもある。また、同様のやり方で濡れ衣を着せた女性に性行為を強要することもあり、悪徳安全員に対する庶民の恨みは深い。そんな安全員が報復で殺される事件は以前から起きている。

韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)によると、2018年には1年間で、全国の保安員(警察官)に対する報復と見られる殺人事件が70件超も起きた。

また安全員は、国が徴税対策の一環として進める市場や露天商への締め付けを末端で担うことから、以前にもまして恨みを買っている。住民の間では「日本の植民地時代の巡査よりひどい」(情報筋)と噂されるほどだった。

安全部の捜査課は引き続き捜査を行っているものの、事件解決の糸口は掴めていないとのことだ。安全員が殺害される事件に、安全部は必ずや犯人をあげると息巻いているようだが、情報筋は「血の付いた包丁一つで犯人を捕まえられるか、見ものだ」と述べていることから、あまり期待はできないようだ。

情報筋も内心では、嫌われ者の安全員に天誅が下されたと喜んでいるのかもしれない。

2018年9月20日、韓国の文在寅大統領らと白頭山を訪れた金正恩氏(平壌写真共同取材団)