1956年にアメリカで発表されて以来、世界中の人々に愛されているロバート・A・ハインラインのSF小説を基に、山崎賢人主演で実写映画化された「夏への扉-キミのいる未来へ-」が6月25日(金)から全国公開。同作では舞台を日本に変え、わなにはめられすべてを失った若き科学者・高倉宗一郎(山崎)が、1995年から2025年に時を超えて大切な人を救う物語が展開される。

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宗一郎にとって大切な存在である璃子役の清原果耶、未来で宗一郎とバディを組む人間そっくりのロボットを演じる藤木直人ら個性豊かなキャストが集結。映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(2016年)、映画「フォルトゥナの瞳」(2019年)などで知られる三木孝浩監督がメガホンを取っている。

WEBザテレビジョンでは、宗一郎のことを翻弄(ほんろう)する婚約者・白石鈴を演じる夏菜にインタビューを実施。今まで演じたことがないという“悪女キャラ”に挑戦した感想や劇中で着ている衣装、作品にちなんで「これからの30年」についても語ってもらった。

――最初に脚本を読んだ感想は?

「これは、面白いぞ!」と思いましたけど、どうやって映像化するのか気になりました。SFものって、見た時にうそっぽかったり、どこかハマっていないなと感じる作品があったりするんです。でも、完成したものを見たら面白くて。

自分が出ている作品はなかなか楽しむことができないんですけど、私が出ているところ以外は客観的に見てすごくよかったです。

――白石鈴は、なかなかの悪女キャラですよね。

台本読んだ時から、どうやって世間に嫌われようかなって(笑)。私が嫌われないと、他のキャラクターが引き立たないので、やりがいしか感じなかったです。

――演じる上で迷いはなかったんですか?

悪に振り切ったら結構楽なんです。どちらかというと、宗一郎に対して優しい鈴の時の方が難しかったです。

――「優しい鈴」と「悪女の鈴」を演じ分けるために工夫した点は?

そのギャップをどう表現すればいいのか。表情やしぐさ1つで全部意味合いが変わってくるんです。1人の人間としてナチュラルに成り立つようにしないといけないので、ここまでは優しくていいのかなとか、ここからは思いっきり悪女になった方が面白いかもって、ギリギリのラインを三木(孝浩)監督と探りながら作っていきました。三木監督には感謝の気持ちしかありません。

――役作りをする過程で、裏設定を考えたりしたことは?

鈴は金の亡者という感じの女性なんです。勝手に自分で作った裏設定としては、家庭環境が複雑だということ。お金にとても執着があって、宗一郎のことを手玉に取っているけど、実は彼の心も欲しかったのかなと。だからこそ、璃子(清原)ちゃんのことを大切にしている宗一郎に腹を立てていたのかもしれない。そんなことを考えながら演じていました。

――夏菜さんの中に、鈴のような“悪女”の部分はありますか?

そんなのないですよ(笑)。ただ、裏設定として考えた嫉妬心みたいなものは私にもちゃんとあります。そこだけは、ちょっとだけ夏菜の力も借りて演じました。

私はどちらかというと、真っすぐぶつかって砕け散っていくタイプ。性格的には璃子ちゃんに近いかもしれません。だからこそ、鈴を演じていて面白かったですし、見ている人が嫌悪感を抱くようなこの芝居がその後の展開に響いてくるのかなと計算しながら演じていくのが楽しかったです。

――劇中では、宗一郎役の山崎さん、松下和人役の眞島秀和さんとのシーンが多いですが、お二人の印象は?

山崎くんは、お芝居になると人が変わるタイプなのかなと。普段は普通の少年っぽいけど、精悍な青年にもなれるし、ピュアで幼い感じにもなれる。つかみどころがないイメージですね。

眞島さんは何度かご一緒していて、オンとオフがあまりない方という印象。私と同じタイプなのかなと思っています。

――鈴の衣装には、どこか懐かしさを覚えましたが…。

物語の舞台が1995年という設定だったので、その当時はやっていたアムロちゃん(安室奈美恵)を意識してスタイリストさんがいくつか準備してくださったんです。その中で最初に着たものがズバッとハマって。鈴が登場する時の衣装がそれです。

あの黄色い感じのジャケットもかわいかったんですけど、個人的には株主総会の時に着ていたスーツも好き。ちょっとフレアだったり、襟が大きかったりして。ミニスカートにロングブーツというスタイルも当時のファッションですよね。

――いろいろなタイプの服を着こなすためには、常に体形をキープすることが求められると思いますけど、普段から気を付けていることは?

コロナ禍の今は全然行っていませんけど、基本的にはジムで体を動かしています。この作品はまだ世界的にコロナがはやる前に撮影したので、週1~2回ぐらいのペースでパーソナルジムに通っていました。それ以外は、割と普通に食べたり、お酒を飲んだりしています。

――お酒は毎日?

女優のお仕事の前日は飲まないようにしています。だから、映画やドラマの撮影期間中はむくみが取れて、すごくいい感じに(笑)。自然とやせていくから勝手に体形維持できているのかもしれません。

あとは、ちょっと食べ過ぎたなと感じたら、大体3日ぐらいで調整するようにしています。いきなり、翌日食事を減らすというのは難しいじゃないですか。3日でプラスマイナスゼロにするような感覚がちょうどいいのかなと思っています。

――今回の作品は時空を超えた“冒険”が1つのテーマでもありますが、これまでの人生で“冒険”した思い出は?

ちょっと前のことなんですけど、友達と車で金沢に行ったんです。ナビに2つの道が表示された時に、こっちの方が早いかもしれないと選んだルートがものすごく運転しにくい道で。夜になったら周りは何も見えないぐらい真っ暗。結局8時間ぐらいかかったんです。あれは結構な冒険でした(笑)。

――もう1つ“30年”という年月もキーワードになっていますが、これからの30年について考えることはありますか?

私は今、31歳(取材時)なんですけど、30歳という年齢は節目だったなと思っています。10代、20代とは全然違う感覚でした。

「女性は30代からが楽しいよ」ってよく言われていたんですけど、本当にそうだなって。20代後半はまだ子ども扱いされているような感じがありましたけど、30歳を過ぎると社会的にも認められてきて、いろいろなことが楽になりました。うまく表現できないですけど、不思議な感覚ですね。

ここからの30年については…、ちょっと考えるのが恐ろしい(笑)。もう1回人生をやるような感じがします。30年って長いですよね。どんな世界になっているんだろう。いろいろなものが変わっているような気がします。

◆取材・文=月山武桜

※記事内、山崎賢人の「崎」はタツサキが正式表記

夏菜にインタビューを行った/ 撮影:永田正雄