15日のW杯アジア2次予選のキルギス戦は、日本代表が順当に5-1の勝利を収めた。そして代表初ゴールを含めハットトリックを達成したオナイウ阿道クローズアップされたのは当然だろう。

今シーズンのJ1リーグでも、特に右サイドからのクロスに対し、最初はニアに走り込んでマーカーの注意を引きつけつつ、回り込むようにマーカーの裏をとってファーに流れてフリーになり、右クロスを決めるシーンを何度か目撃した。キルギス戦の31分の2点目がこのパターンだ。

そして3点目、バイタルエリアで簡単にボールを処理するとペナルティーエリア左へと侵入する。原口が左サイドの小川に展開すると、すーっと右サイドに流れた。これはボール保持者の小川、敵GKとDFの3者を同一視野に入れる「アザーサイド」と呼ばれるポジショニングで、南アW杯得点王のディエゴ・フォルランやJ1得点王の大久保嘉人が得意とするプレーである。

そして小川のクロスにフリーで落下点に走り込み、余裕を持ってヘディングシュートを決めた。

今シーズンのオナイウは、ストライカーとして“基本的な動き"を繰り返している。ついボールにつられて飛び出したい気持ちを押さえ、マーカーとの駆け引きや基本的な動きを入れることで有利な状況を作り出している。

これまでオールラウンドなストライカーとして大迫の後継者はなかなかいなかった。浅野、伊東、古橋に加え田川や前田など、スピード系の選手は多いものの、オールラウンダーとなると上田くらいしか候補はいなかった。

そこに名乗り出たのがキルギス戦のオナイウだった。今シーズンのリーグ戦でどこまでゴールを伸ばすのか楽しみでもある。

そしてオナイウと同じくアピールに成功したのが右MFの坂元だろう。今年3月に初めて代表に招集されたがケガで途中離脱したため、今回が代表デビューになる。

「代表は世代別の代表にも手が届く選手ではなかった。プロになれるかどうかもわからなかったのに、代表に選ばれたのはうれしい。いま燻っている選手に夢を与えられたのではないかと思う」と正直な感想を述べていた。

レフティーならではのカットインはもちろん、タテに抜け出しての右足のクロスも精度は高い。A代表では伊東とのポジション争いになるが、ストライカータイプの伊東とは違うスタイルだけに、起用法によっては試合のリズムを変えられる選手として面白い存在になるかもしれない。

今シーズン、浦和に加入した小泉とはFC東京U-15むさしでチームメイトだった。そして2人ともユースチームに進めず前橋育英高に進学。今シーズン、FC東京に加入した渡辺凌磨も前橋育英高のチームメイトで、高校3年生の時は高校選手権で準優勝を果たした。

しかし3人とも大学を経由して加入したのはJ2チーム。しかし坂元は昨シーズンから、小泉と渡辺凌も今シーズンからJ1に活躍の舞台を移した。そんな経緯を話しつつ、坂元は「みんな高校の時からライバルとして切磋琢磨して、お互いに抜いたり抜かれたりした。いま代表だからとリードしていると思わない。自分も負けられないと思うし、一緒にプロとしてやれていることは大きいと思う」とライバルの存在の重要性を口にした。

オナイウの活躍に、当然横浜FMのチームメイトである前田は刺激を受けたことだろう。そして坂元の代表でのプレーに小泉も闘志を燃やしているかもしれない(渡辺凌は負傷治療中)。19日に再開されるJリーグでは、U-24日本の代表候補を含めて彼らのプレーに注目してみるのもいいだろう。22日には東京五輪の代表18名が発表されるため、19、20日は最後のアピールの場になる。


【文・六川亨】


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