新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、過去最高の赤字計上を余儀なくされたJAL。その株主総会では株主と、赤坂社長をはじめとするJAL役員とのさまざまな問答が繰り広げられています。

赤坂社長「事業構造の改革を進める」

JAL日本航空)が2021年6月17日(木)、第72期定時株主総会を開催しました。新型コロナウイルス拡大下によって「業界全体が事業面・財務面で甚大なダメージを受けており、今後のマーケットでは、航空需要の構造や消費者行動に大きな変化が生じています」と話すのは、同社の赤坂祐二代表取締役社長です。

赤坂社長は「ウェブ会議の浸透などでビジネス需要が元には戻らない一方で、人の移動がなくてはならない観光・訪問需要は今後も着実に成長していくものと考えられております。こうした想定のもと、当社は今後、事業構造の改革を行ってまいります」と話します。コロナ禍によって岐路に立たされたJALに、株主からはさまざまな質問や意見が飛び出しました。以下は一部問答の要約です。

――生産人口が減っているなか、航空機整備に携わる人材は確保できるのでしょうか。自動化はどのような方向で進めているのでしょうか。

「航空整備に携わっていた立場からすると、従来の旅客機は壊れてから整備していました。ところが、最近の新鋭機は、データ解析を利用して故障する予兆をとらえ、事前に手を打つ方法が主流になってきています」(JAL赤坂社長)

テクノロジーは進化しており、ITを使ってデータを収集し、関係者に共有する仕組みも進んでいます。ただ、航空機整備がやりたいと思う人材は重要ですので、今後も整備の魅力を広める取り組みを続けたいです」(JAL田村 亮整備本部長

持株会社制や超音速旅客機導入の質問 JALの答えは?

――日本航空持株会社制にして、航空や運輸ではない分野の企業を立ち上げ、多角経営化し、収益性を高めるといったことは検討しないのでしょうか。

持株会社制ではありませんが、JALの社内体制は、今後の事業計画で新たに構築し、動き出しているところです。私たちも日頃から、業務の多様化や人材のマルチスキル化はしなければならないと考えており、いまの体制のまま構造改革で事業の多様化を進めています」(JAL植田英嗣総務本部長

――アメリカのユナイテッド航空が、ブーム社の超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を発注しました。JALは発注はしないのでしょうか。

「ブームさんへは出資をし、旅客機の安全性確保や客室仕様をどうしたらいいかの情報を共有しています。いまのところ、超音速旅客機の発注については何も決めていません。ただ、オーバーチュアは2029年の商用飛行を目指すとのことですので、引き続き株主として応援していきたいと考えています」(JAL西畑智博デジタルイノベーション本部長

※ ※ ※

コロナ禍によって、2021年の最終的な損益が2866億円と、過去最大の赤字となってしまったJAL。赤坂社長は株主から質問に対し「厳しい状況にあるが経営破綻は二度と起こしてはならないという決意のもと動いている」と強調します。

「2021年3月末時点での手元流動性は、現預金約4000億円に加えて、未使用のコミットメントライン3000億円、合計7000億円を超える十分な水準を確保しています。また固定費について、2020年度は、2019年度対比で約1割、600億円削減しました。なお、全費用における、この実質固定費の比率は現在4割、今後は4割弱となり、エアラインの固定費比率としては極めて低い水準となっています」(赤坂社長)

今回の株主総会の出席者は399人。通期配当は、大幅な損失を計上したことから無配に。赤坂祐二社長は「誠に申し訳ない」と陳謝したうえ、「2023年度までのできるだけ早い時期の復配、そして、2024年度以降の安定的な配当を目指してまいります。引き続きのご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます」としています。

コロナ禍で駐機状態のまま並ぶJALの飛行機(2021年、乗りものニュース編集部撮影)。