日本弁護士連合会は、5月14〜15日に実施した電話相談「新型コロナウイルスワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン」で、208人から人権侵害やハラスメント被害に関する相談が寄せられたことを今月9日、公表した。

 相談内容には、ワクチン接種を強制されたり、ワクチン接種を拒否した際に「打たなければクビにする」など不利益を被るような扱いを受けたというものや、同調圧力や差別を受けたといったものがあったという。

 政府はワクチン接種を推奨しているが、強制ではなく、あくまでも自己判断に委ねるものとした上で、接種を受けていない人に対しては差別的な扱いをしないようにとも呼びかけている。

 こうした政府の呼びかけがあるのはもちろん、ハラスメントについての認識が浸透しているにもかかわらず、なぜワクチンハラスメントは生じてしまったのだろうか。

 ワクチンハラスメントの背景にあるものとして、まずメディアの報道による影響は大きいだろう。

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 例えば、より多くの人が接種することで集団免疫の獲得が期待できるとされている中、既に高いワクチン接種率を実現している国の映像や国内での接種率が繰り返し報道される。これによって、接種率が高くなるほど良いという印象が強くなる一方で、接種していない人に悪いイメージを持ってしまいやすい。

 テレビニュース番組やワイドショーでは、視聴者に報道の内容をアピールしつつ、大筋を瞬間的に把握できるようにするために、簡潔かつインパクトを与えるように構成されている。インターネットニュース見出しなども同様で、こうした特性が、時に誤解を生んでしまう場合もある。また、司会者やコメンテーターの個人的な見解が与える影響も大きい。

 あるいは、報道の内容に対して複雑な理解が必要な場合でも、より効率的な情報処理のために受け手の中で誤った簡略化が行われたり、自分の考えを正当化するために偏った受け取り方になってしまうケースもある。例えば、「ワクチンには感染後の発症や重症化を防ぐ効果だけでなく、感染そのものを防ぐ効果も期待されている」という内容について、「期待されている」という文言が持つ曖昧な不確定性を無視し、「ワクチンを打つと発症・重症化・感染を防げる」と誤った解釈をしてしまうことなどがそうだ。

 これらはいずれも、メディアが故意的に印象操作を行っているわけではなく、ただ事実を伝えている中で起こった事故的な現象と言わざるを得ない。こうした誤解が生じないように報道側の十分な配慮が求められるが、それと同じように、受け取り手にも注意が必要と言える。

 その他、メディアの報道による影響以外にも、コロナ禍の慢性的なストレス状態が与える感情の抑制機能の影響や、感染への恐怖からくる自尊心の防衛反応などがハラスメント行為につながっている可能性もある。

 では、ワクチン非接種者に対する偏見や差別を軽減するためには、どうすればよいだろうか。

 まず、メディアからの情報については、できるだけ正確な情報収集をし、取捨選択ができるよう備えたい。例えば、一つの事柄について複数の情報源から総合的に分析したり、報道内容の信頼性を検討するなど、十分な情報の精査を行うことで、より正確な情報収集が実現しやすくなる。

 また、ワクチンを接種しない人に対する理解も欠かせない。ワクチンを打たない理由は人によってさまざまあり、その人にとって重要な意味を持つ。そもそも、自分と違う考え方だからといってむやみに否定したり、勝手に優劣をつけるという行為は、ワクチンに関してだけでなく、あらゆるハラスメントにつながる危険性をはらんでいるため、注意が必要だ。

 そして、こうした偏見や差別のメカニズムについて知ること自体にも、メタ認知能力を向上させ、偏見や差別感情を生じにくくする効果が期待できる。

文:心理カウンセラー  吉田明日香

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