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大きなリアウイングが付かないタイプR

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
シビック・タイプRの見た目に問題でもあったのだろうか。ホンダは、手を加えるべきだと考えたようだ。それが、スポーツラインが英国へ投入された理由の1つになると思う。

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現在手に入るCセグメントのホットハッチとして、最高傑作と呼べるシビック・タイプR。基本的にはアグレッシブさを和らげる、デザインや装備が与えられたタイプRだといっていい。

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ホンダシビック・タイプR スポーツライン(英国仕様)

その美学に1番そぐわなかったのが、高くそびえるリアウイング。1.6km先からでもタイプRだとわかる存在感を放っていたが、小さな1枚モノに置き換えられた。

新しいウイングの下側には、効果的な気流を生み出すボルテックスジェネレーターの突起が並ぶ。ただ小さくなっただけではない。

ホイールも20インチから19インチへサイズダウン。それでも、メタルマトリックス・コンポジット材が用いられた350mmのブレーキディスクを組める余地はあるようだ。

19インチのホイールには、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sが組まれる。ちなみに英国仕様の通常のタイプRにはコンチネンタル・スポーツコンタクト6が、リミテッドエディションにはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2が組まれていた。

パイロットスポーツ4Sはサイドウォールがソフトでありつつ、高い精度とグリップ力を備えたタイヤ。筆者の経験では、公道用モデルのタイヤとしてベストに位置付けられる。

ブルドッグ級の威圧感は変わらない

ほかにも、通常のタイプRへあしらわれる赤いピンストライプがなくなり、形状は不変ながら、バケットシートのクロスが赤ではなくなった。軽量化のためにノーマルのシビックから外されていた防音材の一部が、スポーツラインへは取り付けられている。

今までのタイプRに防音材が追加されたとしても、車重は従来と同じ1380kg。トップクラスに軽い。

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ホンダシビック・タイプR スポーツライン(英国仕様)

その仕上がりだが、見た目は読者の判断にお任せしよう。通常の10代目シビックですら、かなりパンチの効いた好戦的なデザインが与えられている。タイプRは更に熱い。

たとえ大きなリアウイングがなくなり、ダックテール風のものになっても、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIに紛れるような見た目には落ち着いていない。スポーツラインでも、ブルドッグ級に威圧感がある。

リアには3本出しのセンターマフラーが残されたままだし、後付け感丸出しのフェンダーアーチも変わらない。ボンネットにはエアスクープが開けられ、メッシュの張られたエアインテークも大きい。タイプRしている。

スポーツラインを選びたいと思わせる一番の違いは、19インチホイールの獲得によるノイズや振動といった快適面での向上。これまで筆者は通常のタイプRに何時間も乗ってきたが、ここまで静かでしなやかなクルマに仕上がるとは。

バランスに優れしなやか、息を呑むほど速い

日常的な条件での走行マナーが、すこぶる良い。ショートストロークのシフトノブにレブマッチ機能が組み合わされ、6速MTでも混んだ市街地をうろつくことをまったくいとわない。

もちろんドライバーがその気になれば、完璧なドライビング体験を与えてくれる。本物のタイプRとして。

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ホンダシビック・タイプR スポーツライン(英国仕様)

確かに、19インチにホイールが小さくなったことで、ターンイン時の鮮明度は薄れている。それを除けば、英国郊外に広がるつづら折りの道を、見事に走破してくれる。これまでのタイプRと同様に。

バランスに優れしなやかで、息を呑むほどに速い。スポーツラインにもアルカンターラ巻のステアリングホイールと、アルミ削り出しのシフトノブが備わる。歓喜するような操作する喜びは、まったく変わらない。

多くのホットハッチが、ペダルの枚数を3枚から2枚に減らす中で、ホンダは3枚を守り続けている。思わずシフトチェンジへ夢中になるほど、ペダルレイアウトも素晴らしい。

そしてホンダシビックは、タイプRであっても、車内にゆとりがあるハッチバックでもある。インテリアは、人間工学に基づいて的を得たデザインが施されている。

長距離も走れるスポーツカーを長年生み出してきたメーカーらしく、着座位置の低いドライビングポジションは快適。シートもサポート性に優れている。

日常性と痛快な走りを両立

同じ内容でも、ガチガチに硬いサスペンションと組み合わされるかどうかで、結果は変わってくる。タイプR スポーツラインはここでも的確。タイトな乗り心地ではあるが、潜在的な性能を考えれば、路面を問わず充分に穏やかだといっていい。

目立つことをあまり好まないドライバーも、平日にも乗れる320psのホットハッチが欲しいドライバーにも、シビック・タイプR スポーツラインはピタリとハマる。

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ホンダシビック・タイプR スポーツライン(英国仕様)

タイプRの日常性はしっかり高めてある。それでいてフロントマスクの通り、痛快な走りも楽しめるままだ。

ホンダ・シビック・タイプR スポーツライン(英国仕様)のスペック

英国価格:3万5400ポンド(545万円)
全長:4557mm
全幅:1877mm
全高:1434mm
最高速度:271km/h
0-100km/h加速:5.8秒
燃費:13.0km/L
CO2排出量:176g/km
車両重量:1380kg
パワートレイン:直列4気筒1996ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:320ps/6500rpm
最大トルク:40.7kg-m/2500-4500rpm
ギアボックス:6速マニュアル


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