救急隊員・救命士・救急車(Mihajlo Maricic/istock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

イギリスウェールズで、このたび発生した1件の交通事故。駆けつけた男性救急隊員を襲った悲劇、そして彼が見せた強いプロ意識が大きな話題になっていることを、イギリスの『METRO』やオーストラリアの『7 NEWS.com.au』が報じている。


■運び出された遺体に驚愕

13日、ウェールズにある消防署に、車3台がからむ多重事故の緊急出動要請がかかった。隊員のエイドリアン・スミスさん(47)は、いつも通り準備を整え救急車に乗り込んだという。

しかし、事故現場に到着した彼の表情は凍りついた。事故車両から1人の女性の遺体が運び出されており、それはエイドリアンさんの娘エラさん(21)だったのだ。


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■救助に徹した隊員

エラさんはその日、友人たちと南西部のペンブルックシャー・ブロードヘブンのビーチを訪れており、自宅に帰る途中に事故に見舞われた。車はエラさんが座っていた助手席部分が大きくつぶれており、即死だったという。

他の友人や別の車両に乗っていた人たちは、重傷を負ったものの命に別状はなく、この事故による死者はエラさんのみだった。自分の愛する娘が遺体となって発見されたなかでも、エイドリアンさんは黙々と負傷者の手当や救助にあたった。

■「素晴らしいプロ意識」

ショックを押し殺しながら、懸命に人命救助を続けるエイドリアンさんの姿に、他の救急隊員は胸が押しつぶされそうだったという。市民からは今、「素晴らしいプロ意識、救急隊員の最高のお手本だ」「さぞかし、つらかっただろうに…」といった声があがっている。

この痛ましい事故から数時間後、エイドリアンさんはFacebookに幼い頃のエラさんの写真を投稿。「娘は誰からも愛される心の優しい子だった」と添え、愛娘の死を悼んだ。

警察は現在、ドライブレコーダーの映像や目撃証言を確認しながら、事故の原因について詳しく調べている。


■人を助ける仕事の苦悩

人の命を助ける仕事というと、救急隊員の他に消防隊員、警察官、医者、自衛隊などもある。危険を伴ううえに、残酷な現場に向かうことも度々だが、助けられない命があったときの悔しさは、言葉にできないという。

エイドリアンさんは今後も、多くの人の命を救うことに努力し続けることだろう。そんな日々のなかで、近くにいながら愛する娘を救えなかった無念を、1日も早く乗り越えてほしい。

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(文/しらべぇ編集部・桜田 ルイ

事故現場で救急隊員が目にしたのは即死の娘 役目を果たしたプロ意識に称賛の声