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1日平均7件、もはや"日常"の動物処理

JR北海道は2021年6月16日(水)、2020年度に発生した列車とシカやクマとの衝突案件が計2500件近くにもおよび、JR発足後最多となったことを発表しました。

2020年度はシカとの衝突件数が2414件、クマとの衝突件数が41件発生。シカでは直近5年の平均の140%に達しています。

路線別に見ると、シカ衝突は宗谷本線が最多で457件、次いで花咲線根室本線 釧路~根室)が372件、根室本線(上落合信号場~釧路)が285件、釧網本線279件となっています。クマ発見・衝突は旭川支社内(宗谷本線石北本線)が突出して多く35件でした。

シカやクマと衝突した場合の処理は、基本的に列車無線等で保線所の作業員を軽トラック等で呼び出し、搬出することになりますが、夜間や車両に巻き込んだり、死骸にスズメバチが群がってる場合などは最大1日を超えることもあるそうです。

また、クマの場合、周囲に親グマがいる可能性などを考慮してハンターを手配することも。JR北海道の広報部によると、ハンターが必要になった場合、各自治体を通じて猟友会のハンターを要請するそうです。

「秘密兵器」を続々導入 ほかにも意外な動物が事故に?

クマの処理には時間を要するため、列車の運行に支障をきたさないよう、保線用のモーターカーなどに搭載された「クマキャッチャー」を使用することも。宗谷本線の美深駅、幌延駅、天塩中川駅石勝線新夕張駅に配備されているこの「クマキャッチャー」、クレーンゲームのアームのような形状の器具でクマの死骸などを吊り上げる装置で、1tもの巨大ヒグマにも対処可能とのことです。

衝突対策としてJR北海道では、千歳線など輸送影響の大きい区間を中心に「鹿止柵」の設置を進めています。また過去には、ライオンの糞を散布したり、シカの嫌がる音を発する装置を車両に組み込むなどの取り組みも行われました。

シカとの遭遇による急ブレーキが多い道東では、線路との摩擦による車輪の傷みへ対応するため、2017年に「在姿車輪旋盤」と呼ばれる機器を導入。車輪を車両から外すことなく削正することができるようになり、作業が大幅に効率化したそうです。

ちなみに、シカやクマ以外でも衝突事故は発生しており、2020年度はキツネタヌキなどの小動物が18件、トンビなど鳥類は29件発生したとのこと。俊敏な動きでエサを捕らえるトンビでも、線路に佇んでいて逃げ遅れたりすることがあるようです。

JR北海道のキハ40系ディーゼルカー(2017年10月、草町義和撮影)。