日本公演40周年を迎える、ブロードウェイミュージカルピーターパンが2021年7月22日(木・祝)からめぐろパーシモンホール 大ホールで開幕する。2014年に読売演劇大賞で大賞・優秀演出家賞を受賞した、新進気鋭の森新太郎が演出を務め、今回が4度目となるピーターパン役を吉柳咲良、船長・ダーリング氏役を小西遼生が演じる。
 
初日までおよそ1ヶ月となった6月21日(月)、東京都内で制作発表が行われ、演出の森、出演する吉柳咲良、小西遼生美山加恋宮澤佐江、瀬戸カトリーヌらが出席。歌唱パフォーマンスを含め、公演への意気込みを語った。

吉柳咲良

吉柳咲良

この日は、作品の楽曲をメドレーにしたパフォーマンスが披露された。

青山メインランドグループファンタジースペシャルブロードウェイミュージカルピーターパン』製作発表歌唱動画 ダイジェストver.

ピーターウェンディが出会ったときに、ピーターが自身のことを歌う「えばってやるぞ」から、「ネバーランド」と続き、フック船長が海賊たちに、ピーターと子どもたちを倒すための計画を伝える「海賊マーチフックのタンゴ」、タイガーリリーはじめ全員がピーターを称える「クロスオーバーマーチ~えばってやるぞリプリーズ」、そして、最後には本作の代表曲ともいえる「飛んでる」の全5曲。『ピーターパン』の世界観をぎゅっと詰め込んだステージングだった。 

窮屈な思いをしている今だからこそ、ネバーランドへ

制作発表では、歌唱のパフォーマンスも

制作発表では、歌唱のパフォーマンスも

続いて、質疑応答が行われた。

ーーまずは一言ご挨拶をお願いします!
 
演出の森新太郎:珍しく明るい作品を演出します(笑)。私、今年で45歳なんですけども、何人かの友人から「昔、(榊原)郁恵さんの初代ピーターパンを観た。今度自分の子どもや姪っ子・甥っ子を連れて行くから」と、メールをもらうたびに感慨深いものがありまして。こういう形で、ミュージカルという長きに渡るバタンを受け継いでいるんだなと思っております。
 
脈々と続いてきたことこそが、ネバーランドそのものなんじゃないかなと最近思うようになってきました。子どもから子どもへ、永遠に引き継がれていって、いつまでも煌めくことを失わない、そんなネバーランド。想像力と好奇心の翼で、生きる喜びに満ちた場所なんです。今、窮屈な思いをされている今だからこそ、ピーターパンに誘われて、ネバーランドに遊びにきていただきたいなと思っています。

森新太郎

森新太郎

:大丈夫です、大人も子どももみんな行けます。なぜなら、本物のピーターパンがいるからです。
 
このお芝居の肝は、本当にピーターパンがいるんだなと思わせることかなと思っていまして。ピーターパンって、すごい男の子なんです。こんなに勝手気ままで、陽気で、無邪気で。こんな元気な男の子がいたら、誰だって嬉しくなっちゃうし、誰だってなんでもできるような気がするし、誰だって、鳥のように空を飛べるようになるんじゃないかなと思っています。今年は吉柳咲良というピーターパンが必ずやお客さんを空高く飛ばしてくれると思いますので、どうぞご期待ください。

ピーターパンとして舞台に立てるように

吉柳咲良

吉柳咲良

ーーもうすでにお稽古が始まっていますが、森さんから稽古の中で言われて、印象に残っている言葉などを教えてください。

ピーターパン役の吉柳咲良:10代目ピーターパンの吉柳咲良です。制作発表が始まる前に、森さんから「僕が先に話すから。そのときに吉柳にプレッシャーかけるから」と言われて、本当にプレッシャーをかけられました(笑)。
 
約2年ぶりにこの制作発表させていただけることが幸せだなと思います。昨年は、感染症拡大防止のために、全公演中止となってしまいましたが、その1年間でいろんなことを学ばせていただきました。実は森さんからいろんな課題をいただいていて。足を頭の方まであげられるようにとか、高音を綺麗に出せるようにとか。いろいろな課題を出していただいていたので、すごく充実した1年間を過ごして、また舞台に戻ってくることができました。幸せだなと思います。
 
稽古が始まっていて、毎日稽古をしているんですけども、本当に、毎日森さんから激励をいただきながら、「吉柳は本当に馬鹿だな」と笑顔で言われることが、ピーターパンとしては一番の褒め言葉なのかなと思っています(笑)。
 
今年は吉柳咲良としてのピーターパンではなく、ピーターパンとして舞台に立てるように、本番まで突っ走って行けるように、毎日毎日稽古頑張ります! ありがとうございます!

歴代で一番貧乏なフック船長かも!?

フック船長/ダーリング氏役の小西遼生:この作品は、子どもも大人も楽しめる作品だと思うんですけど、稽古の時点で、僕ら自身がすごく楽しんで作品を作っています。
 
森さんの稽古は本当に細かいところを言われるので、印象に残っていることを「これ」とは言いづらいんですけど、一番最初の衣裳合わせの時、僕の衣裳ははじめはすごく豪華で立派だったんですね。それを一つひとつ、装飾をはぎとられ、帽子をくたっとさせられ、羽が垂れていき、歴代で一番貧乏なフック船長をやることになると思っています(笑)。

森さんの演出は本当に信頼できるので、僕ら自身も楽しんで、完成まで、細かく一つひとつ作り上げていきたいなと思います。ぜひ楽しみにしていていください。

子どもたちを代表するウェンディに

ウェンディ役の美山加恋:40周年を迎えるピーターパンに私は初めて参加させていただくんですけど、光栄に思っています。
 
森さんに言われた印象的な言葉は、稽古の一番最初のダメだしが、「ウェンディトトロのメイちゃん。お前は、メイちゃんだ」と言われたんですね。それは、メイちゃんはトトロと出会った特別な女の子、ウェンディピーターと出会った特別な子なんだという意味。なるほど、確かにネバーランドに行けるとはすごいことだし、子どもの憧れだから、ウェンディは特別な子どもでなくてはいけないと実感して。

今、必死にウェンディらしさとはなにかを考えながら稽古をしているところです。ウエンディは劇場に来ている子どもたちを代表しているような気持ちで、ピーターと一緒に、夢の世界にいけたらなと思います。頑張ります。よろしくお願いします。

本役よりも気合いを入れている○○役(笑)

瀬戸カトリーヌ

瀬戸カトリーヌ

ダーリング夫人役の瀬戸カトリーヌ:ボンジュールでございます。私は18年前にウェンディ役をやらせていただき、10年前はダーリング夫人、そして、40周年にまたこの素晴らしい作品に携わることができて、すごく今、幸せを噛み締めております。気がつけば私も45歳になりました。舞台に出ること、すごく嬉しいです。
 
印象に残っていることは、ダーリング夫人の稽古の帰りに、森さんから「瀬戸さん、ダチョウの役をやりませんか」と言われたこと(笑)。ネバーランドで、ダチョウの役をやらせていただきます! ダチョウは時速70キロで、ウサイン・ボルト氏よりも速いらしくて。どうなるんでしょう。ネバーランドダチョウは50メートル走で10秒代だと思います。生々しいダチョウをその目で見てください。
 
いま、本役よりもダチョウの方に力を入れておりますけども(笑)、想像力を掻き立てる作品ですし、森さんが演出することで舞台だからこそできる表現があると思うので、たくさんの人に観ていただきたいなと思います。

全キャストがパワーアップしています!

タイガーリリー役の宮澤佐江:私は過去2回、『ピーターパン』にタイガーリリー役で出演させていただいたことがあり、今年で3度目になります。ですが、私が今まで演じてきたリリーだったり、私がお客さんとしてこの作品を観たリリーは凛々しくて、美しくて、格好いい女性のイメージがあったんですけど、私が森さんに言われているリリーは、無邪気で好奇心旺盛で、ピーターに並ぶぐらいのおばかさんな子どものリリーと言われています。
 
正直、稽古に入って、1ヶ月ぐらい経つんですが、つい最近まで自分が作っているリリーがこれであっているのかな、大丈夫かな、これで平気かなとやってきたんです。でも、1週間前ぐらいに、ふと、森さんが私に演じて欲しいと思っているリリーという像が降りてきた気がして。それ以降、より作品にリリーとして生きれる日々が楽しく感じております。

私だけではなく、全キャスト、新しくパワーアップしていますので、今年の夏はたくさんの方に新しく成長した『ピーターパン』をみていただけたらいいなと思います。

吉柳咲良と小西遼生(左から)。ノリノリでフォトセッションに応じてくれた。

吉柳咲良と小西遼生(左から)。ノリノリでフォトセッションに応じてくれた。

ーー明かせる範囲で、どのような演出になるのでしょうか?

ネバーランドが月の向こうにはあるかもしれないし、ここにあるかもしれない。美術の堀尾(幸男)さんに相談して、子ども部屋とネバーランドとの境目がない装置を作っています。現実世界と幻想が入り混じっていて、あとは役者の芝居で、寝室にもなるし、ネバーランドになるような。
 
ネバーランドの装飾は大抵、たくさん木が生えたりしているんですけど、(今回は)限りなく減らして、俳優たちに「あなたたちが見せなさいよ」と言っています(笑)。役者がそこがジャングルだと思えば、ジャングルになるし、森だと思えば、森にあるから。それは、お客さんにも想像力でネバーランドを見て欲しいという願いが込められています。
 
それから僕はよくやるんですけど、人形がよく出てきます。役者の人たちは、人形をたくさんやっています。次から次へとフル稼働でやっています。
 
あと、僕、舞台で映像を使うのがあまり好きじゃなくて。あえて全部排して、かなり素朴な子供の遊び、実際のペイントとか影絵とか、そういうもので、子どもの世界を再現できないかなと思っています。あとは観てのお楽しみです。

吉柳咲良、小西遼生、宮澤佐江(左から)

吉柳咲良、小西遼生宮澤佐江(左から)

ーーこの作品が、40年も愛されている理由はなんだと思いますか?
 
吉柳:私は『ピーターパン』をやる前に、ミュージカルを観たことがなかったんですけど、歌や音楽を含めて、こんなにも世界観が間近に伝わってくるのは、すごいなと小学6年生の時に思ったんです。それから自分がピーターパンをやってきて、4度目をやらせていただくことになったときに、本当に成長しない永遠の子どもを、どうしても体は成長してしまう私たちが演じる。それがファンタジーと現実の間のように感じて、フワフワした気持ちになったというか。
 
ピーターパンって、唯一無二の存在。たくさんの先輩方が今まで演じてきて、いろんなピーターパーンがいたんだろうなと思うし、小さい子たちが成長して、また小さい子が新しく観にきてという繰り返しで、永遠の世界・ネバーランドが続いている。愛されないわけがないと思いました。また、今年も、みなさんに愛され続ける作品を自分はやっていかなければいけないという責任を感じています。

瀬戸カトリーヌ、美山加恋、吉柳咲良(左から)

瀬戸カトリーヌ、美山加恋、吉柳咲良(左から)

ーー2017年に初めて出演した時と、今ではどのように変化があると思いますか?
 
吉柳:中学校の3年間は、具体的に私がピーターパンをこう見せたいという思いがすごくあって。格好良く見て欲しいとか、細かく考えていたんですけど、だんだんやっていくうちに、ピーターパンって結局どういうものなんだろう、と。一言では表せないし、具体的にどう伝えていいかわからないんですけど、それでいいのかなとも思っていて。
 
私が見せたいピーターを決めるのではなくて、どう伝わってもいいから、私が舞台に立つ時はピーターパンでいよう。ただ、ピーターパンとして舞台に立てばいいんじゃないかなと今は思っています。
 
ーー最後に観客の皆さんにメッセージをお願いします!
 
吉柳:今年、またピーターパンとして舞台に立てることを幸せに思います。ウェンディに共感する人もいれば、タイガーリリーに共感する人もいるだろうし、ピーターをもしかしたら嫌いと言う人もいるかもしれない。それだけいろいろなことを考えさせられる作品です。

私はピーターを演じていて、嫌いになりそうになるときがあるけども、やっぱり嫌いになれない存在がピーターだなと思っていて。ずっと愛される存在を、舞台でやらせていただけること自体が幸せだなと思っています。
 
本当に毎日稽古も体当たりで、ぶつかっていくしかないと思ってやっていますが、必ずみなさんをネバーランドに連れて行けるように、ピーターパンとして舞台に立ちたいと思っていますので、ぜひたくさんの方々が観にきてくださったらいいなと思います。

取材・文・撮影=五月女菜穂

瀬戸カトリーヌ、美山加恋、吉柳咲良、小西遼生、宮澤佐江(左から)