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カラスは0の概念を理解できる
 「羽をもった霊長類」と呼ばれるほど高度な知能を持ったカラスは、道具を使いこなし、それを使って仲間と遊ぶことを楽しみ、感情を共有しそれを伝えることができる。そんなカラスの新た知能が明らかとなった。

 なんとカラスは「0(ゼロ)の概念」を理解できるというのだ。0を数として理解しているのはこれまで、人間はもちろん、一部の限られた動物のみだったが、そこにカラスが加わったのだ。

【ゼロの概念とは?】

 数字の世界で使われるゼロの概念が人間社会で発展したのは、5世紀ごろと言われているが、それよりも数世紀早かった可能性がある。

 それまでは、8に0を掛ける、あるいは10に0を足すという概念はなかった。"なにもない"、"量がない"という概念は、もっと早くからあったようだが、ゼロを明確な量として扱うのとは違う。

 当たり前のことだが、ゼロが数値とし考えられてから、数学の世界は劇的に変化した。

 「ほとんどの数学者にとって、ゼロの発見は心躍ることだったでしょう」ドイツチュービンゲン大学、神経生物学研究所、動物生理学教授のアンドレアス・ニーダー氏は言う。「ゼロが特殊なのは、整数と違って、実際にそこにあるリアルな物体を数えるのには使えないということです」

 つまり、カゴの中にある3つのリンゴを1、2、3と数えることはできるが、カゴが空の場合、数えることはできない。

 ゼロは物がそこにないことを表わし、リンゴがない状態というのは、非常に抽象的な概念で、経験に基づく現実とはかけ離れた考え方なのだ。
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photo by Pixabay

カラスの脳の研究でゼロを符号化していることが明らかに

 ニーダー氏たちが、カラスの脳をよく調べてみたところ、その神経細胞(ニューロン)が、ほかの数字と同じようにゼロを符号化しているということがわかった。

 つまり、カラスの脳の活動パターンが、カラスの考える数の並びの概念において、ゼロが1の前に位置することをちゃんと裏づけているというのだ。

 6月2日に『The Journal of Neuroscience』誌に発表された新たな研究では、2羽のオスのハシボソガラスを使って、実験が行われた。

 カラスを木の止まり木にとまらせて、目の前にコンピュータースクリーンを見せる。スクリーンには、0個から4個の黒いドットが見える灰色の円が現われ、そのサンプル画像の後に、同じ数か、異なる数のドットが見える試験画像が示される。

 カラスは、出てきたふたつの円のドット数が一致すればスクリーンを突つき、異なればなにもしないよう訓練されている。
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image credit: Andreas Nieder

 2015年米国科学アカデミー紀要に発表された、同じ道具を用いた以前の実験結果では、広範なトレーニングを受けたカラスは、およそ75%の確率で、数が一致する画像と、一致しない画像のペアを識別することができたという。

 以前のこの実験では、ゼロを示すなにもない画像は含まれていなかったが、例えば、3個のドットが入った画像と5個のドットの画像を見分けることはできることが実証された。

 ふたつのセットドット数の差が大きいほど、カラスの正答率はあがったという。2と3といったより近い数字は混同したが、1と4といった離れた数字は正答した。これは、「数的距離効果」という現象で、サルやヒトでも観察される。

 もっと最近の研究では、なにもないブランクの画面を含めてみて、訓練を受けたカラスは、ゼロとほかの数えることのできる数字を区別することができることがわかったという。

 しかし、注目すべてきは、カラスブランクの画面を使った実験でも、数的距離効果を示したことだ。

 つまり、カラスは2や3や4のドットが出てくる画面よりも、ゼロの画面と1のドットの画面を混同することが多かった。

これは、カラスがゼロの画面のセットを"なにもない"か"なにかある"の違いだけではなく、実際に数量としてとらえていることを示しています。

0個のドットドットがない)状態を1個のドットに近接していると認識しているためです(アンドレアス・ニーダー氏)


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photo by Pixabay

カラスの脳に何が起きているのか?

 こうした行動の裏にある脳活動を詳しく理解するために、カラスの脳にガラスでコーティングされた小さなワイヤを埋め込んで、このテストを繰り返す間の脳の電気活動を記録してみた。

 調べたのは、カラスの後頭部にある脳の灰白質の外套(大脳皮質および髄質を合せてた領域)で、高度な認知機能をつかさどる場所だ。

 鳥の脳外套は、終脳と呼ばれる脳の広い領域にある。人間にも終脳があり、脳の外側のしわのよった層である大脳皮質はその一部だ。外套と皮質はともに終脳にあり、このふたつの構造の間には多くの共通点がある。

 大脳皮質には、6つのはっきりした脳組織の層があり、十文字に結ばれているが、鳥類の外套には層はなく、ニューロンが核の房のように整列しているという。

 2015年の研究で、脳外套からの信号の記録を集め、とくに重要なニドパリウム帯(NCL)として知られる領域に注目した。

 NCLは、目などの知覚情報を受け取り、そのデータを処理して、運動機能に関連する部位に送り、身体的な行動を調整する(霊長類は、前頭前皮質が同じ働きをしている)。

 NCLでは、画面に特定の数のドットが現われると、特定のニューロンの集団が活発になることがわかった。2つのドットに反応して、急激に活動し始めるものもあれば、4つのドットに反応するものもある。

 こうしたニューロンは、どうやら、特定の数に特化して同調するようになっているようだ。おもしろいことに、目指す数字と、画面上のドットの数との隔たりが大きくなるほど、これらニューロンの活動は低下した。

 このような脳活動のパターンは、カラスがどのように数値を認識しているのかのヒントになる、とニーダー氏は言う。「これらは本来、数のもつ規則性という側面、つまり1の次は2、2の次は3といった数字の並びにそった順序を示しています」

 新たな研究では、ゼロのドット画面を加えてこの実験を繰り返した。その結果、500個以上のニューロンから、一方のカラス233個、もう一方のカラス268個がニューロン活動をしているという記録を得た。

 これまでと同様、NCLニューロンの集団は、それぞれ異なる数のドットに反応するようになっていたが、さらに、ドットがゼロのブランク画面にも反応するべつのニューロン集団があることもわかった。

 このニューロンの活動は、画面にドットが現われれば現われるほど、つまり数がゼロから離れれば離れるほど低下した。

 観察された行動や、脳活動パターンを総合すると、カラスは確かにゼロの概念を理解しているといえると、研究者は断言している。
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photo by Pixabay

動物にゼロの概念は必要なのか?

 このことが、カラスにとってなにに役立つかはわからない。果物がひとつなのかふたつなのかを区別できることは、生存に役立つかもしれないが、なにもないことを数量として理解することが、すぐにメリットとなるとは思えない。

 ほかの行動研究で、アカゲザルやミツバチもゼロを理解していることが証明されている。ゼロに関連する脳活動に関して、カラスと同様に、サルにもゼロという数字に特化したニューロン群があることが複数の研究からわかっている。

 さらに最近、ニーダー氏らは、人間も同じであることを実証し、2018年に学術誌『Newron』で報告している。

 これまで考えられていたよりも、多くの動物がゼロの概念を理解していることを示す証拠が次々出てきている。

 それでも、両生類爬虫類などは、哺乳類や鳥類ほどは学習能力がないため、ゼロの理解に必要な数学的計算ができたとしたら、それは驚くべきことだとニーダー氏は言う。

 しかし、鳥類や哺乳類は、恐竜が絶滅するずっと前に、共通の祖先から枝分かれしたため、認知能力が重複している事実は注目に値するという。

Top image:photo by Pixabay /References:Crows understand the 'concept of zero' (despite their bird brains) | Live Science/ written by konohazuku / edited by parumo

 
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