財産分与とは、婚姻生活中に夫婦が協力して得た財産(現金・預貯金、有価証券、保険、不動産、貴金属、車など)を、離婚時にそれぞれの貢献度に応じて分配することを言う。ちなみにその財産の名義が一方であっても、実質的に夫婦共有の財産とみられる場合は,財産分与の対象になり得る。

財産分与が話題となるのは富裕層の離婚が報じられたときである。直近ではビル・ゲイツさんと妻のメリンダさんがそうだった。ゲイツ夫妻の離婚について、中には相続税対策に財産分与を利用したという穿った見方まであった。そこで今回は財産分与の決め方や、額を多くしすぎることのリスクを富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に伺った。

■財産分与の決め方は3通り

まずは財産分与の決め方を聞いてみた。

「財産分与を決めるやり方はおおまかに3つあります。1つ目は裁判所を介さず当事者の話し合いのみで決めるやり方です。2つ目は当事者が家庭裁判所の調停手続を通じて話し合いをし、決まらない場合は家庭裁判所に審判してもらうやり方です。3つ目は離婚とともに財産分与を求める訴訟の中で裁判所に判断してもらうやり方です」(井上義之弁護士)

ちなみに2016年のデータではあるが協議離婚は87.2%、調停離婚10.0%、裁判離婚はわずかとなっている。

■お互いが納得していれば財産分与の額は自由に決められる

では財産分与の額を自由に決められるかどうか聞いてみた。

「財産分与の額は、当事者同士で納得する限りにおいては自由に決めることができます。当事者間で合意が成立しない場合、裁判所が実務上ある程度確立している基準(清算的財産分与については原則として折半、慰謝料的財産分与については有責性の有無・程度などを考慮、扶養的財産分与については扶養の必要性や扶養能力などを考慮)に従って決めることになりますが、当事者同士で決める場合はそうした基準に縛られません」(井上義之弁護士)

納得していさえすれば自由に決められるようだが、当然そこは極端な額になることは考えづらい。

■財産分与の額を多くしすぎることのリスクとは?

納得していれば財産分与は自由に決められるというが、そこを逆手にとって一方の額を多くした場合にどんなリスクがあるのだろうか。

「財産分与の額があまりに大きく、財産分与の名を借りた財産隠しとみるべき特段の事情がある場合、分与者の債権者を害する行為(詐害行為)として取り消される可能性があります」(井上義之弁護士)

多額の債務を負った人が、それから逃れるために離婚に伴う財産分与を利用して財産を移転させるというケースがこれに該当する。

「また、多額の財産分与については、税金面にも注意が必要です。まず、不動産を取得すると、名義変更のために登録免許税がかかります。その後は毎年固定資産税がかかります。加えて、財産分与を受けても贈与税や不動産取得税はかからないのが通常ですが、例外的にそれらの税金がかかる場合があります。例えば、婚姻期間が短く夫婦共有財産が少ないはずなのに不相当に多額の財産分与を受けるようなケースでは贈与税がかかり、また、夫婦の一方が親から相続した不動産を慰謝料的財産分与として他方が受け取るようなケースでは不動産取得税がかかると考えられます」(井上義之弁護士)

財産分与には贈与税がかからないというのは広く認知されているが、そうでないケースがあることも覚えておいたほうがいいだろう。

●専門家プロフィール:弁護士 井上 義之(第一東京弁護士会) 事務所HP ブログ

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記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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