現在、大西洋や太平洋に幽霊船が出没しているという。なぜ幽霊船と呼ばれているかというと、人間が乗っている気配が一切ないからだ。
では船の舵を取っているのは幽霊なのか?
どうやらそうではなさそうだ。船を動かしているのは人工知能で、米国防総省と海軍が共同で実験を行っている自動航海する無人水上船だという。
幽霊船の正体は、アメリカ国防長官府「戦略的能力局(Strategic Capabilities Office)」が海軍と共同で実験している無人水上船「NOMAD」だ。
すでにメキシコ湾を出発して、パナマ運河経由で西海岸までの8200キロを航海することに成功。狭く危険な運河を除けば、航海の98%が完全に自動で行われたという。
実験は戦略能力局が実施する「ゴースト・フリート・オーバーロード計画」の一環として行われたもの。同計画は「無人水上船(USV/Unmaned Surface Vessel)」という海軍の新クラスについてのデータを収集し、技術的なリスクを低減することを目的とする。
The Future for Unmanned Surface Vessels in the U.S. Navy
現在、フェイズIIが進行中
USVが実際にどのように機能しているのか詳細は明かされていないが、海外メディアではAIと機械学習を利用しているのだろうと推測している。船を自動化するメリットはさまざまだ。たとえば、海難事故の原因で一番多いのは、人為的ミスだ。ゆえにAIに任せてしまえば、航海の安全性が高まると期待できる。また大勢の船員が乗る必要がなくなるので、船体の軽量化が可能になり、燃費・環境負荷・コストを改善することができる。
現在、計画はフェイズIIに進んでおり、USVの長距離航海は2度目となる。最初の長距離航海は2020年10月、「RANGER」によって行われた。
今回のNOMADによる航海実験は、耐久性や自動運転のチェック、政府の指揮・制御システム、通信システム、コンピューター、情報システムなどとの相互運用性能を確認するためのものであるとのこと。
今後NOMADはRANGERと合流して、無人システムの信頼性の実証や有人船との連携実験など、USVの熟成が図られることになる。フェイズIIは2022年初頭までを予定しており、終了後、2隻は海軍に引き渡される。また現在、新たに2隻の実験用USVが建造中であるとのことだ。
これまで自動運転といえば、ドローンや自動車の話だったが、これからは海にも広がっていくことだろう。近い将来、船といえば無人の幽霊船が常識になるのかもしれない。
Top image:photo by iStock /References:Ghost Fleet Overlord Unmanned Surface Vessel Program Completes Second Autonomous Transit to the Pacific > U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE > / written by hiroching / edited by parumo
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