梅雨の時季、葉っぱの上に姿を見せる「カタツムリ」は童謡にも歌われるほどの人気者ですが、殻がないこと以外はカタツムリに似ていると思えるのに、なぜか嫌われ者なのが「ナメクジ」です。カタツムリナメクジは、殻の有無以外に何が違うのでしょうか。またなぜ、好き嫌いが分かれるのでしょうか。東邦大学理学部講師で「カタツムリナメクジの愛し方 日本の陸貝図鑑」(ベレ出版)の著者でもある脇司(わき・つかさ)さんに聞きました。

ともに「陸貝」、共通祖先から進化

Q.殻の有無以外のカタツムリナメクジ違いを教えてください

脇さん「海にいる貝の仲間が陸上に進出した生き物を『陸貝(りくがい)』といいます。カタツムリナメクジはともに陸貝の仲間で、元々は殻を持っていた、ナメクジと現代のカタツムリの共通祖先から、殻をなくす方向に進化したのがナメクジ、殻を持ったまま進化したのがカタツムリです。一部のナメクジには、背中に殻の名残が付いています。

ナメクジは殻がないので乾燥に弱いのですが、その分、小さな隙間に隠れることができます。また、殻に閉じこもって外敵から身を守ることはできませんが、その代わり、つつかれると、べとべとの粘液を出して抵抗します。一方、カタツムリは殻がある分、殻よりも狭い所には入ることができません。しかし、殻に閉じこもって、外敵や乾燥から身を守ることができます。

どちらも体の基本構造は同じで、肺・消化管・生殖器といった内臓を持っています。カタツムリは殻があるので、そこに内臓を入れているのですが、ナメクジには殻がないので、体に内臓を収納しているという違いがあります。そのほか、カタツムリは殻を持つので、カルシウムを積極的に取る必要がありますが、ナメクジは殻がないので、その必要はありません。陸上でカルシウムを得るのは大変なので、その点でナメクジは有利といえると思います」

Q.カタツムリが人気者の一方で、なぜ、ナメクジは嫌われるのでしょうか。

脇さん「これはまだ、私の中で結論が出ていないのですが、人間は細くてぬめっとしたもの、例えば、ヘビやミミズ、イモムシのような生き物が全体的に嫌いです。ナメクジは先ほど述べたように、外敵に抵抗する際などに粘液を出しますので、ナメクジもそのカテゴリーに入ってしまっているのかなあと思います」

Q.粘液が嫌われる理由だとしたら、カタツムリは粘液を出さないということでしょうか。

脇さん「カタツムリも粘液を出します。やはり、体の表面を保護するためのようです。一方、ナメクジは、カタツムリのように殻にこもって乾燥に耐えることをしないので、カタツムリの粘液よりもべとべとの粘度の高い粘液を出しており、より乾きにくくなっているのではないかと考えています。

ナメクジの粘液に慣れてしまうと、カタツムリの粘液はさらさらしていて、まるで、水かと思うほどです。カタツムリにも、刺激すると粘液を出して抵抗するものがいますが、ナメクジほどべとべと・ぶよぶよではありません」

Q.ナメクジは塩を掛けると小さくなりますが、死んでしまうのでしょうか。また、カタツムリに塩を掛けるとどうなるのでしょうか。

脇さん「ナメクジに塩を掛けると、塩が体表の粘液に溶け出して高浸透圧になるため、体の水分が取られていきます。それが継続するとナメクジは死ぬように思われますが、実際にはそうはなりません。というのも、少し塩を掛けたくらいなら、ナメクジは粘液を多量に出して、脱皮するようにして、粘液の部分を捨てて逃げるからです。カタツムリも同じで、ちょっと塩を掛けたくらいでは死なないと思います」

Q.脇先生はカタツムリナメクジを研究しているとのことですが、魅力はどういう点なのでしょうか。

脇さん「カタツムリは見た目が似ているものが多いのですが、種類を判別できるようになると、その微妙な違いが美しく見えます。日本の種は茶色ばかりですが、海外だと、緑や赤黄色などの大変美しいカタツムリがいます。

殻は保存できるので、そのコレクション性の高さも魅力の一つだと思います。例えば、キセルガイは細長いカタツムリの仲間ですが、海の貝みたいでかわいいですよ。他にも、オオケマイマイという殻に毛が生えたカタツムリもいます。ベッコウマイマイの仲間はつやつや・キラキラと輝く殻を持ちます。いろいろな仲間がいるので、全く興味は尽きません。

ナメクジの魅力は、カタツムリには劣るのですが、同じ仲間なので興味が湧きますし、海外には美麗種もいます。私の専門は寄生虫の研究ですが、カタツムリナメクジには実にいろいろな寄生虫(そのほとんどは、人への感染報告がないもの)が付いており、寄生虫と宿主の関係や寄生虫の種多様性を研究する上でも、興味深い動物なのです」

Q.カタツムリを採集したり、飼ったりする際の主な注意点を教えてください。

脇さん「東京都内でも、自然公園に行けば、意外と多くのカタツムリが活動しています。郊外の雑木林もおすすめです。うっそうとした森よりも多少、人の手が加わった場所の方がたくさんいるようです。

雨の日もよいですが、湿度の高い曇りの日であれば、昼間でも大きめのカタツムリを見つけられると思います。朝方の涼しい時間帯もよいですが、日が昇り始めて気温が上がるとどこかに隠れてしまいますね。キセルガイの仲間は落ち葉層の下や朽ち木の下にいつもいるので、その辺りもおすすめのポイントです。

梅雨の時季の印象が強いかと思いますが、4月から10月ごろまで活動しています。冬は落ち葉の下や地中で冬眠するので探す難易度は上がりますが、まとまって冬眠するので、もし、冬眠の場所を一カ所でも見つければ、たくさん捕れます。なお、公園によっては昆虫などの採集が禁止されていたり、制限があったりしますので注意してください。

飼う際には、カタツムリはきれい好きなので、飼育ケースを清潔にしておくことが大切です。野菜だけではなく、紙もよく食べます。カタツムリが幼貝の場合、殻を成長させる必要があるので、卵の殻やイカの甲羅など、カルシウムの供給源を与える必要があります。カタツムリはヤスリのような歯を持っているので、餌を食べるときには『ジャリジャリ』と案外大きな音が鳴りますよ。触った後は手をよく洗いましょう」

オトナンサー編集部

カタツムリは人気者なのに…