「もうこんなところにある!」そんな風に私が驚いていたのは月曜日、前夜の1部昇格プレーオフ決勝2ndレグの後のコメントを読もうと、ネットでマルカ(スポーツ紙)の2部セクションに行ったところ、何故か上部に並んでいる各クラブのアイコンからラージョが消失。同時にエスパニョールとマジョルカもなかったため、スタートページに戻ってみれば、1部チームのアイコンの列にすでに加わっていたのを見つけた時のことでした。いやあ、確かにリーガ1部の最終節があってから、ほぼ1カ月が経過。ユーロやコパ・アメリカのお勤めがない選手たちは十分、バケーションを満喫しきった頃じゃないかと思うんですけどね。

それと並行するように、マドリッド勢1部チームのプレシーズン開始時期の情報なども入ってきていて、休暇先のサルディーニャ島から、先週木曜に退団会見をしたセルヒオ・ラモスにお別れを言うことになったレアル・マドリーアンチェロッティ新監督は、ジタン監督が辞任前に決めた日程を1週間前倒しして、7月5日にバルデベバス(バラハス空港の近く)でスタートすることに。昨年同様、まだコロナ禍が続いているため、アメリカツアーなどはせず、ずっとマドリッドの灼熱の太陽の下、CL3連覇の影の立役者だったフィジカルコーチ、ピントゥス氏の指導で、昨季は負傷地獄だった選手たちの体質改善に励む予定ですが、遅れて参加する10人の各国代表の中でバランが戻って来るのかは微妙なところかと。

あと契約が1年しか残っていない彼が延長交渉を行っておらず、PSGマンチェスター・ユナイテッドなどからの引きもあるため、何せ、マドリーエムバペ(PSG)、もしくはハーランド(ドルトムント)といった前線のギャラクティコを獲得するための資金が必要ですからね。7000万ユーロ(約92億円)程の移籍金が期待できるバランを売れば、かなり助けになると見られているんですが、その辺は当人がスタメンCBを務めるフランス代表のユーロが終わってみないと何とも。ただ、CB、左SB、ボランチとマルチユーズなアラバ(バイエルンとの契約を満了)の入団は早々に決まったものの、一気にラモスバランの2人が抜けるとなると、ミリトン、ナチョに加え、あと一枚、CBができる選手は必要なのでは?

そして同じ5日にはミチェル新監督もコリセウム・アルフォンソ・ペレスのすぐ側にある練習場でプレシーズンを始めるんですが、こちらには昨季、RMカスティージャ(2部B)にレンタル移籍して、ラウール監督の下、修行していたカンテラーノ(ヘタフェBの選手)のウーゴ・ドゥーロも加わる予定。試合にはコンスタントに出て、ゴールもそこそこ挙げていたんですが、買付オプションを行使してもらえなかったそうで、丁度、ヘタフェはアンヘルが退団して、FW枠に空きがありますからね。ラ・マンガ(スペイン南東部)でのキャンプで成長した姿を見せれば、トップチームに昇格できるかもしれませんし、このプレシーズンが彼も頑張りどころかもしれません。

一方、栄えあるリーガ王者は7月7日にマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に集合するんですが、何せ、アトレティコバルサと共に大量13人を各国代表に派遣していますからね。初日から参加できるチームの半数ぐらいのメンバーは2日程、体力測定などに費やした後、恒例のLAキャンプに出発。そう、ロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)でたっぷり、プロフェ・オルテガに絞られるんですが、週末にはちょっと心配なニュースが海の向こうから到着。ブラジル代表でコパ・アメリカに参加中のフェリペが試合には出ていないのに、練習中に右ヒザの半月板を部分断裂したというから、何とも運が悪い。

かろうじて8月14日の週末からのラ・リーガ開幕には間に合いそうですけどね。ユーロでポルトガル代表に行っているジョアンフェリックスも筋肉痛だか何だかで、未だに大会デビューしていませんし、本当はハードな過密日程リーガを終えたばかりの選手たちにはあまり、代表戦で過剰労働してほしくないんですが、この夏、実は一番大変なのはプレーオフ枠で昇格したラージョかも。というのもここから規定の4週間、選手たちがバケーションを取った後、プレシーズンを始めることになるため、開幕までにあまり日数がないからですが…いや、まずはそのremontada(レモンターダ/逆転劇)を達成したジローナ戦2ndレグがどんなだったか、話していくことにしましょうか。

1週間前のエスタディオ・バジェカスでは序盤にイシのゴールで先制しながら、終わってみれば、1-2と負けていたマドリッドの弟分は、モンテリビで相手のファン1500人がスタンドからジローナに声援を送る中、またしても立ち上がりから果敢に攻撃。その甲斐あって、前半6分にはCBベラスケスが自陣から送ったロングボールにアルバロ・ガルシアが抜け出し、GKファン・カルロスの頭を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)で先制点を奪います。早くも逆転まであと1点に迫っただけでなく、ハーフタイム直前にはアルバロが折り返したパスをキャプテンのトレホがゴール前からシュート。敵DFの脚に当たりながら、これがネットに入ってくれるんですから、有難いじゃないですか。

ただ後半、10分にはベラスケスが2枚目のイエローカードをもらって退場、残り時間を10人で戦うという試練が待っていたんですが、大丈夫。エースのストゥアーニも投入しながら、うーん、やっぱりジローナはこれまで昇格プレーオフ決勝で3度、それもホームで負けて1部行きの切符を逃しているというのが、乗り越えられないトラウマになっていたんですかね。無観客だった昨年のエルチェ戦とは違い、今回はサポーターの応援もあったものの、GKルカ・ジダンの活躍もあって、接触プレーによる転倒や選手交代などで必死に時間稼ぎしたイラオラ監督のチームから、最後までゴールを挙げることはできず。総合スコア3-2でラージョが3年ぶりの1部復帰を果たすことに。

いやあ、これも聞けば、クラブ史上8回目の昇格ということで、モンテリビのピッチロッカールームで目一杯、騒いだ後、飛行機で帰京したチームも兄貴分のアトレティコ同様、恒例のクラブ祝賀スポットであるスタジアム近くのアサンブレア噴水広場には行かなかったんですけどね。そんなことは知ったこっちゃないとばかりにラージョファンが集結、一晩中、無礼講でお祝いしまくっていたようですが、やっぱり嬉しいですよね。ええ、マドリッド勢5チーム体制だった2018-19シーズン、ラージョが最下位で最短2部Uターンとなり、翌シーズンにはレガネスも続いたため、昨季は3チームしかなかったのが、いよいよ4チームに。各節、マドリッドで見られるリーガ戦が2試合あるとなれば、来季はスタジアムに入れる観客数もだんだん増えていくでしょうし、日本からも観戦に来たファンも満喫できるかと。

え、リーガ開幕はまだまだ先だけど、今はスペイン代表が大変なことになっているんじゃないかって?いやあ、その通りで先週土曜にはユーロ・グループリーグ2試合目のポーランド戦があったんですけどね。スコアレルドロー発進となったスウェーデン戦を反省して、ルイス・エンリケ監督もモラタ(ユベントス)に加え、リーガのサラ(スペイン人の中での得点王)であるジェラール・モレノ(ビジャレアル)をスタメンに入れたところ、前半25分には後者のラストパスを前者がゴールにして先制点をゲット。幸いVAR(ビデオ審判)により、モラタもオフサイド症候群を発現せずに済んだんですが、今度は守備陣の不出来ぶりが露呈してしまったんですよ。

というのも42分、シフィデルスキ(PAOK)のシュートがゴールポストに当たった後、こぼれ球を拾ったレバンドフスキ(バイエルン)の一撃はGKウナイ・シモン(アスレティック)がキャッチしてくれたんですが、やはりブンデスリーガ41得点のストライカーは只者ではなし。後半9分にはヨズヴィアク(ダービー・カウンティ)が右から上げたクロスをラポール(マンチェスター・シティ)に競り勝って、頭で決められてしまったとなれば、うーん、彼とはよく、マドリーバイエルンと対戦した際にラモスがガチンコの争いをしていましたからね。そのシーンを見る限り、CL決勝でベンチだったフランス人のラポールに超特急でスペイン国籍を取ってもらうより、せめてコロナ陽性発生に備え、バケーションを中断してラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設にヘルプ要員として1週間通勤。その日も先発だったパウ・トーレス(ビジャレアル)をリードして、堂々たるEL王者となったアルビオルの方が、DFの要の位置にはふさわしかったのではないかと思うのは私だけ?

いえ、そんなことも同点になった直後、モデル(レフ・ポズナン)にエリア内で左足を踏まれ、VARにより、ペナルティをもらったジェラール・モレノがPKを決めていれば、頭に浮かびもしなかったんですけどね。ところがEL決勝でマンチェスター・ユナイテッドと総勢22人が蹴り合うことになった悪夢のようなPK戦を始め、ここ13回連続PKを成功させていた彼が、この日は大殺界だったか、まだ足が痛かったのか、シュートをボールポストに当ててしまったんですよ。以前、ヘタフェのマタなども25回連続成功した後、EL2年連続出場を決めるはずだったPKを止められてしまったりと、ここはという時にミスがあるのは人間だから、仕方ないとはいえ、その跳ね返りをフリーで、しかも利き足の右でゴール前から蹴って、どうしてモラタは天高く打ち上げてしまうんでしょう。

その後にもモラタにはエリア内でシュートを狙うチャンスが2度程あったんですが、敵DFに囲まれて最後はひっくり返っている始末で、うーん、この日はルイス・エンリケ監督やチームメートの援護射撃のおかげもあり、カルトゥーハのスタンドからはpito(ピト/ブーイング)ではなく、熱い応援を受けていたんですけどね。フェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)、サラビア(PSG)、ファビアン・ルイス(ナポリ)、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)とフレッシュな選手を送り込んでも2点目のゴールは奪えず、結局、試合は1-1のまま終了。「Las sensaciones no son las mejores, evidentemente/ラス・センサシオネス・ノー・ソン・ラス・メホーレス・、エビデンエメンテ(最高の感触ではない、明らかに)」という気分になったのは、おそらくルイス・エンリケ監督だけではなかったかと。

更に試合後にはまた、モラタが「Que digan lo que quieran. Opinar es gratis/ケ・ディガン・ロ・ケ・キエラン。オピナル・エス・グラティス(皆、好きなことを言うがいいや。意見するのはタダなんだから)」と拗ねたようなことを言っていたため、これはもう、雰囲気最悪なんじゃないかと、思わず、日曜の午後には私も1年半以上ぶりにラス・ロサスまで練習を見に行ってしまったんですけどね。15分間のマスコミ公開中は特に変わったこともなく、ポーランド戦前日に自宅隔離期間が明け、コロナ陰性となって合宿に帰還。その試合こそ、スタンド観戦になったものの、ようやくブスケツ(バルサ)もロンド(輪の中にいる選手がボールを奪うゲーム)に混じっていたため、水曜午後6時(日本時間午前1時)からのスロバキア戦には出場できそうなんですが、いやあ。

何と日曜夜にはAS(スポーツ紙)から、ルイス・エンリケ監督の進退が問われているというショッキングなニュースが流れたから、ビックリしたの何のって。彼がカルトゥーハの芝の状態に文句を言ったことについて、有観客試合を保証できなかったビルバオ(スペイン北部)のサン・マメス(アスレティックのホーム)でのユーロ開催権をUEFAに取り上げられた後、せっかく引き受けてくれたセビージャ(スペイン南部)のあるアンダルシア州当局への面目が立たないと協会幹部が気分を害しているだけでなく、采配にも不満があるというんですが、月曜のマルカでは真逆、協会はルイス・エンリケ監督に絶対的信頼を置いていると書いてあったから、もう、私も混乱するばかり。

どちらにしろ、グループ最終節で負けるとスペインは敗退が決定するとあって、その場合はいくら、契約が2022年W杯まであるとはいえ、続投はない気がしますけどね。彼らがこのユーロで生き残るにはスロバキアに勝ってグループ1位か2位で突破、もしくはポーランドスウェーデンに勝たないことを祈りながら、引分けて、成績上位の3位で突破するしかないんですが、さて。月曜も月曜でブスケツが戻った今がチャンスとばかり、呑気にオフィシャルスーツやユニフォーム姿の全員集合写真を撮ったりしていた彼らですが、その日の記者会見に出て来た、CL王者のキャプテンでありながら、まだ出番のないアスピリクエタ(チェルシー)も「Si ganamos estaremos en octavos y será un partido de cara y cruz/シー・ガナモス・エントラレモス・エン・オクタボス・イ・セラ・ウン・パルティードー・デ・カラ・イ・クルス(勝てばボクらは16強対決に進める。表か裏かの試合になるだろう)」というのが本当のところ。

実際、2016年のW杯ブラジル大会や2004年ユーロ・ポルトガル大会ではグループリーグ敗退も見ている私なので、結構、不安もあったりするんですが、こればっかりはねえ。ちなみに気になるスロバキア戦のスタメンについては、ロドリ(マンチェスター・シティ)の代わりにブスケツが入るのは当然ながら、世間からは何でアトレティコの中盤でプレーして18得点も挙げたのに、本職でない右SBで使うんだとルイス・エンリケ監督に非難が集中。その当事者のマルコス・ジョレンテは、月曜のインタビューで「そのポジションで招集されたし、3月もそれでプレーしたから、他に回る方が驚きさ。No creo que ningún lateral se meta por dentro y rompa al espacio como yo/ノー・クレオ・ケ・ニングン・ラテラル・セ・メタ・ポル・デントロ・イ・ロンパ・アル・エスパシオ・コモ・ジョ(自分程、中に入って行ったり、スペースを突いたりするSBがいるとは思わない)」と自信ありげだったため、多分、また右SBリピートとなるんでしょうが…せめて参加24チーム中、16チームが進む決勝トーナメントに出るぐらいの力は今のスペインにもあることを、ファンに示してほしいです。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

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