放送禁止パイオニア”村西とおるを山田孝之が演じ、話題となったNetflixオリジナルシリーズ「全裸監督」。そのシーズン2が6月24日(木)に配信開始となる。今作では恒松祐里が新たなヒロイン・乃木真梨子役に抜てき。美容部員から“全裸監督”の世界に飛び込むという役柄のように、自身も体当たりの演技で挑んだ。

【写真を見る】緊張の面持ちで鏡の前に座る乃木真梨子(恒松祐里)

このほど恒松にインタビューを行い、シーズン1が社会現象になった作品にシーズン2から参加することへの思いや主演・山田の魅力、撮影を通じて見つけた新たな発見などについて語ってもらった。

――オファーをもらった際に「驚いたし悩んだ」とおっしゃっていましたが、かなり葛藤があったんでしょうか?

オファーを頂いたときは本当に悩んだんです。自分自身ではそんなに抵抗はなかったんですけど、何カ月も考えていく中で、もしいつか自分が結婚して子どもが産まれたりしたときにどういう影響を受けるんだろうって考えたりして。

考え過ぎかもしれないんですけど、いじめられるんじゃないかと思ったり…まだ起きてもいないことに対しても心を痛めていました。私の大切な人が傷ついたら嫌だなって思ったんです。でも、父と母に相談したら、もともと父はこの作品が好きで見ていたので「すごくいいチャンスだと思うよ」と賛成してくれました。

――そんな中、出演の決め手は何だったんでしょうか?

コロナ禍で、今何が起こるか分からない世界じゃないですか。その中でこういうチャンスを頂けて、台本を読んだらすごくすてきで。演じたいと思った役柄を捨ててしまうなんて、もったいないと思ったんです。とにかく演じたいし、チャレンジしようと思いました。

――シーズン1は社会現象になるほど反響がありましたね。

オファーを頂いた時に見たんですが、すごく面白い作品だなと思いました。皆さんが役を演じ切っていて、情熱を懸けているのが画面から伝わってきました。こんなにも全力だからこそ、多くの人に受け入れられて、社会現象になったんだなと納得しました。

皆さんのお芝居がすてきで、シーズン1の最終話のトシ(満島真之介)のシーンだとか、全部が本気で全力。人間の良い部分も悪い部分も、ド直球で画面から伝わってくるのがかっこいいなと思って、出演したい気持ちが強くなりました。

――とはいえ、出来上がっている高い熱量のチームに途中から参加するのは勇気が必要ですよね。

シーズン2からは、いろんなキャラクターが出てくるということでしたが、やはり怖さはありましたね。私が演じた役のモデルとなった乃木真梨子さんは、映像資料がほとんどなくて。わずかなインタビュー映像も拝見したんですけど、謎が多い方なんです。

実際の映像で見た話し方のテンポを感じ取りながらも、オリジナルキャラクターの役作りを自分でしていかなきゃいけなかったので、そこのバランスが難しかったですね。本作の乃木って、心の中では野望もあると思うんですが、それを出すシーンがないのでつかみどころがなくて。だからこそ、私の中では意識しようと思っていました。

――乃木真梨子を演じる上で、特に意識したことは?

最初の頃に意識していたのは、話し方ですね。あとは、女性の色っぽさはあるんですが、少女のようなあどけなさは監督と相談して作っていきました。本読みの段階ではもっとおしとやかだったんですが、監督からはもっと元気があってもいいよねと言われて、女性らしいかわいさが見えるような演出をつけていただきました。

――自分の中での新しい発見はありましたか?

役を演じる上では全部計算して、こういう表情でこういう話し方にしようと決めていました。こんなふうに決めて演じることってこれまであまりなかったんですよね。女性のしたたかさや野心を表現する役も初めてだったので、計算したらこういうものが出せるんだなと言うのが発見でしたね。衣装さんやメークさんから引き出してもらった部分も多かったなと思いますね。

――演じた乃木真梨子は、美容部員からこの世界に飛び込んでくる役柄。まさに体当たりの演技でしたね。

セクシーなシーンの撮影前はストレスを抱えていましたが、運動をして気分を変えていました。いざ撮影になると、すごく難しくて。体の向きや位置、顔の表情や声の出し方など、やることがたくさんあり過ぎてアクションシーンみたいでした。

ベッドシーンはアクションシーンだ」っていろんな方がおっしゃるみたいなんですが、いざ体験してみるとその通りで(笑)。撮影が終わった後に思ったのは、たくさんのボールを持ってジャグリングをして、落とさないように頑張り続けるって感じでしたね。頭もフル回転で、なおかつ体も動かすっていう、いっぱいいっぱいな状況でした。振りが決まっているけどアクションシーンとは違って稽古ができないんです。

デリケートなものなので、当日のリハーサルで実際に動きをつけて、すぐ本番の撮影をするので、頭がパンクしそうでした。すごく難しいし、練習が必要なものだなと思いました。こんな動きをしてほしいという監督からの要望もあったので、この手を動かしてからカメラの方を見て…っていうのが難しかったですね。でも山田さんがペースを作ってくれました。山田さんはずっと動いているので汗だくでしたし、かなり大変だったと思います。

――現場の雰囲気はいかがでしたか?

シーズン1から出演されている方は、現場の中で誰よりも役のことを分かっているので、役がこういう行動をするんじゃないかというのが分かるんですね。山田さんは台本以上に自分でセリフを付け加えてアドリブで話していて、山田さん演じる村西からしか出ない言葉がそこにはあったので、役を極めるってこういうことなんだなと思いました。

――やはり、山田さんのお芝居には圧倒されましたか?

村西が借金をして、みんなの前で開き直るシーンがあるんです。そのシーンの山田さんは鬼気迫るものがあって。セリフもあるんですが、ほぼアドリブでしゃべっているんですね。それが本当に村西から出る言葉のように感じられて。見ていただければ分かるんですが、ひとり語りの長いシーンなんです。

現場では段取りでお芝居を初めて照らし合わせるんですが、本当に圧巻でした。こんなお芝居するんだという私自身の感情と、もちろん乃木としての感情もあって。毎カット私たちに伝わるように何度も同じ熱量で伝えてくださったので、すごくパワーのある俳優さんだなと思いました。

――印象的なシーンはありますか?

最終話の村西さんとのシーンですね。お互いをだんだん知っていく感じがして、すてきだなって思いました。今までは監督と女優だった2人が、普通の男女として新しい人生を始める感じがして好きです。

――この作品、どんな部分を楽しんでほしいですか?

シーズン1を見ていただいた方は、村西さんの山あり谷ありの人生の、山部分だったと思うんです。うまくいき過ぎだろうと思った方もいらっしゃると思うんですが、今回は本当に谷の部分でどん底です(笑)。その中でも、私が演じる乃木真梨子は、別のアプローチで村西さんに寄り添っていきます。他の人とは違う関係性にも注目してみていただきたいです。シーズン1でも素晴らしかった黒木(森田望智)との女の戦いも見どころになっているので、楽しんでください。

――最後に、今後役者としてどんな未来を過ごしたいですか?

映画「タイトル、拒絶」(2020年)という作品でマヒルちゃんというコを演じたんですが、彼女は女性としての痛みを抱え込んでいる役柄だったんです。あの役を見て、心を揺さぶられたとか、自分の昔を見ているみたいっていうコメントを頂いて。

作品を見てくださった方が少しでも心を揺さぶられたり、一人じゃないんだと感じてもらえたりしたらいいなと思うんです。人の人生に影響を与えられるような役者さんでありたいなと思いますし、人の心を揺さぶる作品に出会っていきたいなと思います。

◆取材・文・撮影=横前さやか

恒松祐里にインタビューを行った/ ●撮影:宮川朋久