コピーライターで世界ゆるスポーツ協会代表理事・澤田智洋氏が6月16日オンラインで配信されたP&G Equality(イクオリティ) & Inclusion(インクルージョン) オンライン・シンポジウムに登壇。P&Gの人事統括部シニアディレクター・市川薫氏らと、マイノリティとマジョリティの意識の差から、多様性を重んじる社会について語り合った。

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幼少期をパリ、シカゴロンドンで過ごし、ボディシェアリングロボット等、福祉領域におけるビジネスを推進する澤田氏は「インクルーシブという言葉があるということは、エクスクルーシブな立場に置かれている人が多いということですよね。障害者と飲んだり仕事したりするとそう感じている人が多いので、それを変えていきたい」とコメント

障害者雇用について「グラフ見ると改善してる感じするけど、実際はそんなことはなく、半分以下しか働けていないです。また、法定雇用率(従業員45名以上の会社は2-3人に1人)の数合わせのために、“何も働かせない”雇用が多発しています」と現状を紹介。

「“D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)”や“E(イクオリティ)&I”というのは、多様なフルーツを同じ色にする“ミックスジュース”型じゃなく、フルーツや白玉がそのままの形で互いに引き立たせ合う“フルーツポンチ”型を目指すもの。目が見えない人は、見えている僕の気づかないことに気づく、つまり見えてない世界が見えているので、違いを認め合うと新しい視点が増えて“ソーシャル視力”がよくなる。そこからスタートすればいいのかな」とコメントした。

イノリティーとマジョリティーの間に蔓延する「アンコンシャス・バイアス」について、自身の息子が視覚障害者である澤田氏は「視覚障害者にもグレードがあって、ほとんどの人がロービジョンなので、全盲の息子はマイノリティ・オブ・マイノリティなんです」と紹介。「自分が持ってないことには敏感だけど、持ってることには鈍感になる」というジャーナリストの治部れんげ氏の発言を受けて次のように同調した。

「僕も息子が生まれるまで、忙しく生きるのが精いっぱいで、視覚障害者のことは自分と違う人だと思ってたから、気づかなかった世界がいっぱいありました。僕は特に障害のない男性で、一見マジョリティ・オブ・マジョリティだけど、僕にもスポーツが極端に苦手とか、左利きとかいうマイノリティー要素がある。逆に息子にもマジョリティーの要素があるので、僕も息子もマイノリティとマジョリティミックスなんですよね。それで、スポーツイノリティーでも優勝できる“ゆるスポーツ”に辿り着いたんです」

さらに、「こうしてさまざまな“マイノリティー”要素をあぶり出して主張することは、“もっともっと苦しんでる真のマイノリティを周縁化して、彼らが後回しにされたり軽視されたしてしまうのでやめてほしい”という批判もありますが、その人のマイノリティー要素を可視化することで、自分も彼らと地続きであると気づける、そこから全てが始まると思っています」とつけ加え、多様性を重んじない人へのアプローチとしても、その人のマイノリティー要素を発見して同調することが有効だと提案した。

ダイバーシティ(多様性)」と「インクルージョン(多様性の活用)」の違いや、それぞれが陥りやすい「分化(違うものとして完全に棲み分けてしまう)」や「同化(仲間に入れる代わりに同じになることを強いる」について説明した澤田氏は、最後に提言として「ポケットにE&Iを」と提案。

「もちろんビジネスの戦略としてインクルージョンの概念はすごく役に立ちますが、そんな大げさなことじゃなく、ハンカチみたいにそっと忍ばせる感じでいいんじゃないかと。一人称で、多様な友達を持って、優しくしようよ! それが結果的にビジネスになる感じが理想」と語り、「多様性どころか、最近の僕は“多忙性”で。多忙だと視野が狭くなるから、今日はたくさんの発見がありました。いかに多忙性から脱却するか! 仕事のための仕事や会議のための会議をしてないか、心が燃える仕事できてるか、常に考えていきたいです」と締めくくっていた。

ほか、P&Gの人事統括部シニアディレクター・市川氏からは「LGBTQをサポートするチームを作ったことで、LGBTQの方だけじゃなくマイノリティ全体に意識が向くようになって、行動のクセがつきました。「自分が鈍感になってないかと考えることで、人間としてのスキルが上がっていく」「自分は女性でアジア人でマイノリティだと思ってたけど、今や年上で、営業部で、いろいろ持ってるマジョリティ側になって、マイノリティのときには気づけてたことに気づいてさえいないことがあることに気づきました。マイノリティが変わるのでそれを支援するのではなく、マジョリティが変わらなきゃいけない。無意識の偏見ってあるんだなって意識していかないと『この人には言っても分からない』と思われる年寄りになっちゃう」というコメントも。

「インクルーシブは人徳や性質じゃなく、ちょっとした意識の差で学べばできるスキル。3つのH“ヘッド(思考)、ハート(共感)、ハンド(行動)”で、インクルージョンを推進する文化や制度やスキル(研修)を変えていく。企業でやってる立場上、どう浸透させるか考えちゃうけど、ビジネスだけじゃなくて帰って娘のことを理解しようと踏み出すことも同じだと学んだので、そうしようかな」とまとめていた。

◆取材・文=坂戸希和美

世界ゆるスポーツ協会代表理事・澤田智洋氏/※提供写真