神奈川県警の留置施設で勾留されていた男性が、弁護士とやりとりする「ノート」に書いた記述の一部を警察官に黒塗りさせられていた――。

県弁護士会の弁護士が、こうした警察官の行為が、接見交通権と秘密交通権の侵害にあたるとして、県を相手取り、国家賠償法にもとづく損害賠償をもとめる訴訟を横浜地裁に起こした。提訴は6月22日付。

ボールペンで黒塗りさせられた

訴状によると、原告の弁護士は今年5月中旬、窃盗の疑いで逮捕・勾留された男性の国選弁護人に選任された。接見の際、日弁連が作成したノートを差し入れた。「被疑者ノート」と言い、容疑者が取り調べの状況をメモし、後日返却を受けた弁護士が弁護活動に役立てるものだ。

ところが、留置施設の警察官が5月下旬、男性に対して「被疑者ノートは、取調べだけの記録を書くものであり、それ以外のことは書いてはいけないので、書いてあることを消してください」ともとめた。

男性が拒否したところ、警察官は「お願いではなく、決まり事だから」と述べて、(1)ページを破って、警察官にその破棄を頼むか、(2)自分でボールペンで塗り潰すか、(3)警察がノートをあずかってマスキング処理した上で返却するか――を選べと迫ったという。

留置場の決まりに反することはできないと考えた男性は、ボールペンで黒塗りした。

●不当な扱いを受けたと思ったことが書かれていた

はたして、黒塗りを"命じられた箇所"には、どのようなことが書かれていたのか。訴状によると、男性が警察官から不当な扱いを受けたと思った出来事だ。

具体的には、面会者がきた際、男性が着替えたいと申し出たところ、警察官が「わがままでありできない」と面会中止にしたことや、母親との面会で、時間は残っているのにかかわらず、強制的に終了させられたことだった。

原告の弁護士は、警察官がノートを勝手に閲覧したうえ、容疑者に対して、その記述の削除を指示する行為は、接見交通権と秘密交通権の侵害にあたると主張。精神的苦痛を負ったとして、慰謝料を含む損害賠償350万円をもとめている。

神奈川県警が「被疑者ノート」の黒塗り指示か、弁護士が「接見交通権の侵害」で国賠提訴